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日本人の物語00947【南北朝初期】塩冶判官讒死 横恋慕

太平記に従って書いているので、太平記が長々と詳しく書いているエピソードは同じく長々と詳しくやることになってしまいます。この塩冶判官の話はまさにそれです。

 師直が
「その方は今どこにいらっしゃるのか。お歳はおいくつか」
と尋ねると、侍従局は
「お歳は盛りを過ぎただろうと思っていましたが、先日お会いしたところ、今もなお美しくいらっしゃいました。本来ならば天下人の妻にでもなるべきところを、なぜか塩冶判官という田舎者の妻になってしまわれました。もったいないことです」
と答えました。
 師直は侍従局に褒美をやった上で、
「その女房をなんとしても私に紹介していただきたい」
と頼み込みました。
 高師直はなんと既婚女性、それも御家人の妻に手を出そうとしています。当時は家来が主君に対して妻を貢ぎ物のように差し出すということはよく行われていたようですが、目上の者から目下の者に対して所望するのは非常識とされていました。師直はこの後も様々な傍若無人な振る舞いで悪名高い武将となって行くのですが、このエピソードがその始まりといってよいでしょう。
 侍従局は
「これは思いも寄らぬこと。顔世御前には夫がいらっしゃるのに、そのようなことができようか」
と案じながらも、断れば命を取られるかもしれないと恐怖を感じ、
「とりあえず話はしてみましょう」
と言って帰宅しました。その後、2、3日思い悩んでいると、師直から酒肴などが送られてきて、早くせよと矢の催促です。
 侍従局はこっそりと顔世御前のもとへ行って、
「一度だけ、師直殿に会ってはいただけないでしょうか。ほんの一度なら、ご主人に気づかれることもありますまい」
と口説いてみますが、顔世御前は
「とんでもない。お断りです」
と断固として拒絶します。
 侍従局は師直を訪ねて
「話してはみたものの、乗って来ません」
と答えますが、その程度で諦める師直ではありません。

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