【ワーナー買収】をタイタニックでたとえて解説する
ワーナー・ブラザースの買収をめぐるネットフリックスとパラマウントの戦いを見ていて、私が思い出す映画があった。
それは『タイタニック』である。
WB買収騒動の現状を風刺画にするなら、以下のように説明できる。
1)Netflixというポッと出の成金男が現れて、
2)それが由緒あるワーナーの令嬢と結婚しようとしたら、
3)周りにいる保守的な人達(映画業界・トランプ・イーロンなど)が「おいワーナー考え直せ!由緒あるパラマウント君にしろ」「ネトフリ君はダメだ!」「パラマウント君、応援してるよ」みたいになった。

…うん、タイタニックと合わせると非常にわかりやすい。
以下では、もう少し詳しく解説する。
▼ワーナー・ブラザースの買収レース:
前提として一度整理しておこう。
(*前提をよく知ってる自信がある読者は次章までスキップ推奨*)
日本経済新聞はこうまとめている。
Netflix4億人の野望、世界征服を現実に ハリウッド「大惨事になる」
動画配信の雄ネットフリックスによる巨額買収は、「5大メジャー」と呼ばれるハリウッドの老舗スタジオを中心とする映画業界をテクノロジー企業が侵食しつつあることを示している。

ここに待ったをかけたのがパラマウントだった。
米ワーナー買収劇に急展開 パラマウントが敵対的買収提案

そもそもワーナーが買収に乗り出した時点で、最初に熱烈なラブコールを送っていたのはパラマウントだった。しかしそんなパラマウントを無視してワーナーはNetflixに売ることを決めた。
つまりこういうことだ。
ワーナー「結婚願望ありでーす」
パラマウント「僕が!」
ワーナー「なんかちがーう」
ユニバーサルコムキャスト「僕が!」
ワーナー「なんかちがーう」
ネトフリ「僕が!」
ワーナー「おけー」
ネトフリ「わーい大事にするよ」
パラマウント「ムキー!こうなったら力ずくで!」
これは日経新聞が解説したような、「映画業界がテック企業に食われそうだ」という単純な話ではない。
政治が絡んでいる。
なんと、トランプ大統領がパラマウントを支持する動きを見せたのだ。

トランプはネットフリックス勝利への懸念を明言した。
ドナルド・トランプは、NetflixがWarner Bros.を買収すべきかどうかの決定に関与すると述べています。
「Netflixは非常に大きな市場シェアを持っていて、彼らがWBを手に入れたら、そのシェアは大幅に増えます。私はそれがどうなるかは経済学者が言うことだと思いますが、その決定にも関与します」

この動きを正しく理解するためには、政治的背景の知識が必要である。
▼ワーナー買収に関する政治的背景:
実はワーナーはCNNの親会社でもある。
ワーナーが持っているテレビ局CNNは民主党(オバマ・バイデン・ハリス)と距離が違いが、パラマウントのテレビ局CBSは共和党(トランプ)と距離が近い。
ここで重要なのは、ネットフリックスが民主党と距離が近いことである。
民主党はリベラルで、共和党は保守である。

https://www.nikkei.com/telling/DGXZTS00011190R00C24A7000000/
リベラルが目指すのが《自由と革新》で、保守が目指すのが《伝統》である。
例えば、リベラルなバイデン大統領と、保守なトランプ大統領の、それぞれのSNSでクリスマスに公開した動画を見ると違いがわかりやすい。
Biden's Christmas vs Trump's Christmas pic.twitter.com/Mjr7glXyqq
— End Wokeness (@EndWokeness) December 1, 2025
バイデンの映像では多彩でカラフルな衣装に身を包んだ黒人やドラァグクイーンのような同性愛者を匂わせるパフォーマー(要するにマイノリティな人々)が狂ったように騒がしくコンテンポラリーダンスを踊る。一方でトランプの映像では彩度が抑えられた渋めの色調で、古き良きシックで伝統的な装飾の部屋を、白人夫婦が静かに歩いてキリスト教の祝日(サイレントナイト・ホーリーナイト=静かな夜・聖なる夜)に祈りを捧げる。

これはあくまで私の個人的な感想だが、私はトランプの映像の方が心が安らぐので好きである。
バイデンの映像はなんだか2024年のパリ五輪の開会式のようなゲテモノ感があって不快な気分になる。パリ五輪もリベラル色が強いアーティストが演出を務めたことで、あの究極に下劣で醜悪なシロモノになってしまったが、まさにバイデンのクリスマス映像でも同様のことが(多少はマシだが)起きている。

さて、閑話休題、そんなリベラル色が強いのがCNNである。
CNNといえば世界で最も影響力があるメディアの一つだが、これまでテレビの力を使ってとにかく共和党トランプのネガキャンを繰り返し、民主党オバマ・バイデンを猛プッシュしてきた。これは日本のNHKや地上波テレビそして新聞の全国紙が海外のニュースを報道する際はほぼCNNの受け売りなので、つい数年前までほとんどの日本人が知らなかった対立構造である。
トランプとしては、ワーナーがパラマウントに売り渡ればリベラル色の強いCNNの報道内容を中立的に寄せること(醜悪なネガキャンを止める)が可能になる。
逆にハリスとしては、ワーナーがネットフリックスに売り渡ることで、CNNに従来と変わらない報道姿勢(とにかくトランプを攻撃する)を期待できる。

パラマウントとNetflixのワーナー買収劇、完全に政治マターで草。リベラルと保守のメディア争奪戦なのか。
https://x.com/ZanEngineer/status/1998411949890322469
デビッド・エリソンは、トランプ政権の当局者に、もしワーナー・ブラザースを買収すれば、CNNに彼らのために大きな変更を加えると保証したとされる。
https://x.com/DiscussingFilm/status/1998226878554107913
しかし考えてみると、テレビで簡単に世論誘導できたのはせいぜい2015年頃までで、インターネットリテラシーが高まった現在では民主党のメディア戦略に気付いている一般市民が増えつつある。
実際に2024年のアメリカ大統領選挙はそれがちゃんと機能したから共和党トランプが大差で勝利した。もうアメリカ国民は簡単に騙されないのだ。
実際にパラマウントの敵対的買収が成功するのかは不透明だが、少なくともこうして大々的に報道されるだけでトランプ陣営としてはある程度の目的は達成できたと言えるのかもしれない。
補足)
ちなみに日本のNHKや民放各局が海外のニュースを報道する時には、CNNの情報を横流しで放送してるだけなので、日本でテレビ(と新聞)だけ見ていると非常に民主党(リベラル)に偏ってしまう(もはや洗脳に近い)ので注意が必要である。流行語大賞にもなったオールドメディアは時代遅れというのは、こういう文脈も持っている。
ネットフリックスには今、ものすごい逆風が吹いている。
果たして、パラマウントの”略奪愛”は成功するのか?
▼政治的保守の立場から語るタイタニック:
さて、ここでようやく本題に入れる。
先日に別記事でも解説したが…
映画『タイタニック』の物語は、常識で考えれば《ある裕福なお嬢様が一時の気の迷いでご先祖様の遺産を全部つぶして貧民になる物語》と言える。
たまたまローズ(ケイト・ウィンスレット)は強運でアメリカンドリームを引き当てたから金銭的にも結果オーライになったが、彼女の一連の選択は人生設計としてリスクが高すぎる。あんなのは宝くじに当たったのとほぼ等しい。アメリカには劇中のローズと同じように、どこまでも自己責任でリベラルを志して、結果的に貧困な生活を送っている白人が大量に居るのだ。
しかし、それだけのリスクを冒してでも、保守的な伝統や家柄を破壊することを、左翼リベラルは美徳とする。
ローズの母親と婚約者キャルは、どこの馬の骨か判らない突然現れた貧しい青年を強く毛嫌いした。それは彼らが意地悪だからではなく、彼らには守るべき家柄があったからである。それはまさにリベラルの正反対のコンサバティブ(保守的)な思想だ。そして当事者のローズはそこから脱却することだけを考えて、実行に移してしまう。
つまり映画『タイタニック』は、思想的には非常にリベラル色の強い左寄りな作品(伝統や保守を否定する作品)だと言えるのだ。
政治に興味がない人は気づいてすらないかもしれんけど、タイタニックは全く中道ではないんだぜ。すごく思想が左に偏った映画だから。知識のない心がピュアな人達を、知らず知らずのうちに左翼リベラルに洗脳する作品と言っても過言ではないと思うよ、正直。
これらのことから、ワーナーの買収騒動に絡んだ政治的な衝突は、そのままタイタニックの人物に当てはめることができる。

ローズ:売りに出された伝統のある会社ワーナー。
キャル:ワーナーを買おうとする伝統のある会社パラマウント。
ジャック:ワーナーを買おうとする新興企業ネットフリックス。
そしてキャルとつるんでいた上流階級の人々を思い出して欲しい。

彼らはジャックのことを「面白い男」だと物珍しくこそ観察していたが、まさかジャックがローズと結婚するだろうとは思いもしなかっただろうし、もしタイタニック号が氷山に衝突しなかったら恋に燃えるローズを説得した可能性が高い。彼らもまた家柄や財産を守る重要性をよく知っている立場だからだ。
これと同じことが現実のワーナー買収騒動でも起きている。
映画館ビジネスを壊しかねない新興企業ネットフリックスの台頭を警戒する映画業界はもちろん、上述したようにリベラルなCNNとNetflixが結びつくことをよく思わないトランプ大統領、そして同じく保守的な思想を持つイーロン・マスクまでも参戦して、映画業界をあげての大反発が起きている。
独占:大手業界関係者のグループが、議会に緊急の公開書簡を送り、NetflixがWarner Bros. Discoveryの買収に成功した場合、ハリウッドで経済的・制度的崩壊が起こる可能性があると警告しています。
この書簡は、木曜日に両党の議会議員にメールで送付され、送信者は「懸念を抱く長編映画プロデューサー」と名乗る匿名集団のみを自己紹介としています。
https://x.com/Variety/status/1996739110820893113
Netflix共同CEOのテッド・サランドス氏は以前、人々が映画館ではなく「家で映画を見たい」と望んでいると述べました。「消費者は私たちに何を伝えようとしているのか? 家で映画を見たい、ありがとう、と。スタジオと劇場は、消費者がただ映画を愛する体験と完全にズレた、この45日間のウィンドウを維持しようと争っています」
https://x.com/DiscussingFilm/status/1997000075806179372
クリストファー・ノーラン会長が率いるディレクターズ・ギルド・オブ・アメリカ(全米監督組合)は、NetflixがWarner Bros.を買収したことに関する重大な懸念に対処するため、Netflixとの会合を予定している。
https://x.com/ashotmagazine/status/1996978975311364261
トランプのパラマウント推しは10月末には報道されていた。
トランプ政権は、パラマウントがワーナー・ブラザースを買収することを本気で望んでいるという報道がある。「ワーナーは、パラマウント・スカイダンス以外の関係者からこの取引の承認を得る可能性について、本当に真剣に考える必要がある」と、トランプ政権の高官が語っている。
https://x.com/DiscussingFilm/status/1981756035292434729
イーロンはパラマウントの敵対的買収の報道にポップコーンの絵文字で反応した。
🍿🍿
>パラマウント・グループは現在、ワーナー・ブラザースに対する敵対的買収提案を検討していると報じられている。 彼らは、1株あたり30ドルの現金による提案が、Netflixが提示した現金、株式、およびケーブル事業分離の価値を上回ると考えている。
https://x.com/elonmusk/status/1997075212891050049
まさにタイタニックでのあの夕食会と同じ構図である。
「おいワーナー考え直せ!由緒あるパラマウント君にしろ」
「ネトフリ君はダメだ!」
「パラマウント君、応援してるよ」

しかし、ワーナーの社長デヴィッド・ザスラフは、ネットフリックスとの話が一度内定したら、もうパラマウント君の言い分を全く聴こうとしない。これはローズが一度ジャックとの運命を感じたら、後はそのまま突っ走った点とほぼ完全に一致する。
ワーナー・ブラザース・ディスカバリーのCEO、デビッド・ザスラブは、パラマウントのデビッド・エリソンから、NetflixがWBを買収するというニュースが報じられるわずか数時間前に音信不通になった。
12月4日、パラマウントがWBDの取締役会に入札を提出した後、エリソンはザスラブに以下のテキストメッセージを送った:「新しい入札について電話しようとしたばかりです。あなたの懸念点すべてを聞きましたし、新しい提案でそれらに対処したと信じています。詳しく話し合うために、可能であれば折り返し電話してください。」
12月4日の東部時間午後4時頃——パラマウントの提出書類によると「その日一日何も聞いていなかった」——エリソンはザスラブに以下のテキストメッセージを送った:「Daivd [sic]、今日は多忙だと理解していますので、短いメッセージを送ります。次回の取締役会で会う際に、私たちはあなたが私[sic]と話し合ったすべての問題に対処したパッケージを提供したかったことをご留意ください。それらは1 完全な確実性を提供したかった 2 強力な現金価値 3 迅速なクロージングです。大切なことですが、私たちの入札には『最終かつ最良のもの』を含めませんでした。また、過去24時間の騒ぎにもかかわらず、あなたと会社に対する敬意と賞賛しか抱いていません。あなたのビジネスパートナーとなり、これらの象徴的な資産のオーナーとなることは、一生に一度の名誉です。私たちが一緒に働く機会に恵まれれば、私の父と私が夕食を共にした人々であることがわかるでしょう。私たちは常にパートナーに対して忠実で名誉ある態度を保ち、あなたにそれを証明する機会が得られることを願っています。よろしく、デビッド。」
エリソンは3カ月にわたって、できる限り熱心にザスラブにアプローチした。彼はパラマウントの提出書類によると、「パラマウントのワーナー・ブラザースとの提携への関心を議論する」ために、父のラリー・エリソンとザスラブをビバリーヒルズの家族の自宅で夕食に招いたほどだ。エリソンは、統合されたパラマウント・ワーナー・ブラザース・ディスカバリーでの共同CEO兼共同会長の役割をザスラブに提案したことさえある。しかし、WBDの取締役会はエリソンが提示したすべての提案を拒否し、12月5日金曜日、同社はWarner Bros.スタジオとHBO Maxを720億ドルの株式価値でNetflixに売却する取引を発表した。
https://x.com/Variety/status/1998432968541393073
パラマウントは、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーに対する敵対的買収提案を開始するにあたり、映画館で30本以上の映画を公開することを約束しました。月曜日の報道陣および投資家との電話会議で、同社はまた「健全な伝統的な公開期間」を遵守すると述べました。
https://x.com/Variety/status/1998064635228942823
もう、超高級な青いダイヤのネックレスを予定より早く見せるなど、あんなにローズに猛アプローチしたのにフラれたキャルを見ている気分になること必至である。(笑)

さ〜て、果たして。
このドラマの結末は、一体誰が勝利するのであろうか?
キャルがお金の力でローズと結婚してしまうのか。
ジャックがローズと駆け落ちで逃げ切るのか。
仮にジャックが逃げ切ったとして、その直後に豪華客船が沈没して海の藻屑と消えてしまうのか。

どっちに転んでも良いから、ワーナーの良質な映画がたくさん観られる未来になって欲しいものである。(もちろん映画館で公開して、ブルーレイも積極的に発売することを!)
(了)
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