「2024 J1リーグ 第28節」湘南ベルマーレvs名古屋グランパス 分析レポート
「2024 J1リーグ 第28節」
湘南ベルマーレvs名古屋グランパス 分析レポート
0-1(前半0-1/後半0-0)
Ⅰ.「はじめに」
グランパスは先制点が前半7分と早めの時間帯であったこともあってか、その後は前線からのプレスとブロックを状況に応じて使い分けながら手堅く試合を進め、後半途中からはより強固なブロックを組んで試合を終わらせおり、先制点の場面も含め、自分たちの狙い通りに進められた時間帯が長い試合であった様に見えました。
対してベルマーレはパスを繋いでゴールを奪うという意図は見え、確かにボールは保持してはいたものの、最後までグランパスの守備陣を崩すことが出来なかったという印象。
そこで今回のレポートでは、最後までグランパスの守備陣を崩すことの出来なかった、ベルマーレ目線で分析を進め「どうすればベルマーレは勝てたのか(勝つ確率を上げられるのか)」について「攻撃」をメインに話をしていきたいと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅱ.「攻撃の問題点」
この章ではベルマーレの「ビルドアップ」と「守備ブロックの崩し方」から垣間見える「攻撃の問題点」を確認し、改善策を提示していきたいと思います。
グランパスの前線からのプレス
ベルマーレは攻撃時、山口監督就任以降、お馴染みとも言える「3-1-4-2」でスタート。対するグランパスは守備時、前線からプレスを掛ける際は「3-4-3」ブロックを作る際は「5-3-2」(5-2-3)を採用。
グランパスは前線からプレスを掛ける際、ベルマーレの3バックに3トップ、WBにWB、アンカーにボランチ、ボールサイドのサイドボランチ(世間一般で言うIH)にボランチを当て、嵌め込む守備を構築していました(図Ⅰ参照)。
この形の一番のポイントは、非ボールサイドのサイドボランチへのマークを捨てていることです。非ボールサイドの選手に一発でボールが入る可能性は低いため、そこに人を割くのではなく、より危険度の高いポジション(図Ⅰではベルマーレのアンカー)に位置する相手選手に当てることで、失点の可能性を下げることが出来ます。

「ベルマーレのビルドアップ」
上記の様なグランパスのプレスに対して、ベルマーレは長いボールを選択することもありましたが、ベースとしては丁寧に繋いでいこうとする姿勢が見て取れました。そんな中で僕が気になったビルドアップの形や改善点について、この章ではお話していきたいと思います。
まず初めに僕が気になったビルドアップの形は「左右のCBとWBのワンツー」(図Ⅰベルマーレから見て右サイド参照)です。
グランパスはベルマーレの左右のCBにボールが入った際、ひとつギアを上げてプレスを掛けていました。更にグランパスはWBにWBを当てており、ベルマーレはそれらの食い付きを利用して、CBとWBとのワンツーでプレスを交わそうとする場面が何度かありました。
リスクのあるプレーであることは間違いないですが、相手が食い付いている分、抜け出せればチャンスになる可能性は高く、有効的なプレーであったと思います。
少し話が逸れてしまいますが、左のCBを務めていた鈴木淳選手はサイズがある上にボールの扱いにも長けており、ワンツーの場面も含め、彼が前に出た際は何か起こりそうな雰囲気がありました。ちなみに鈴木淳選手の本職は中盤とのことですが、個人的にはサイドボランチで見てみたいと思いました。
次に僕が気になったのは「GKも含めたビルドアップ」です。
ベルマーレは3バックに3トップを当てて来るグランパスのプレスに対して、途中からGKも含めた4枚でビルドアップを試みる様になりました。すると、グランパスは後半頭からCFを務めていたパトリック選手がプレスには行かず、アンカーの田中選手の目の前に立ち、彼へのパスコースを消しに掛かってきました(図Ⅱ参照)。

更にアンカーの田中選手にはボランチが一枚ついているため、彼を経由して前線にパスを送ることは難しい状況を作られていました。
ただ、ここでベルマーレは質の高いビルドアップを見せ、このプレスの第一関門を見事に突破してみませました。それは以下の通りです。
CFの選手が相手の中盤へのパスコースを消す際「背中で見る」という表現がよく使われますが、この試合のパトリック選手の場合「背中でマーク」していたと言った方が適切であると思える程、ぴったりと田中選手についていました。
そこでボールを受けることが難しい田中選手は、自らが囮になることでサイドボランチへのパスコースを作り出しました。具体的には、図Ⅱの様にパトリック選手と稲垣選手を引き連れて横に動くことで、キムミンテ選手から池田選手へのパスコースを作り出していました。これはグランパスの守備を逆手に取った素晴らしいプレーだったと思います。
ビルドアップの改善点
「左右のCBとWBのワンツー」「GKも含めたビルドアップ」共に改善点の鍵は「非ボールサイドのボランチ」となります。
初めに「左右のCBとWBのワンツー」の改善点から説明していきたいと思います。
上記した通り、リスクはあるものの確かに有効的なプレーではあり、ワンツーで抜け出すところまでは良かったと思います。
しかし、その後の展開に関してはシュートまで繋がったシーンも含め、よりスムーズにゴールへと迫れるのではないかと感じられ、ここではワンツー後の崩し方を提案したいと思います。
まず、本題に入る前に「グランパンの前線からのプレス」の章で説明した通り、グランパスが前線からのプレスの際、非ボールサイドのサイドボランチへのマークを捨てていることを思い出して下さい(図Ⅰ参照)。
ワンツーで抜け出せたということは、ベルマーレのCBはマーカーを振り切った上でのフリーの状態にあり、そこに対してグランパスは別の選手を使ってプレスを掛けに来ると思われます。ここではそのズレを利用して、非ボールサイドのサイドボランチにボールを繋ぎ、好機を作り出したいと思います。
図Ⅲの通り、ベルマーレの右CBがWBとのワンツーで抜け出したと仮定します。
その際、ボールサイドのサイドボランチの池田選手には、グランパスのボランチの椎橋選手がぴったりとついています。これは恐らく試合前から指示が出ていたのだと思いますが、キックオフ直後からこの様な傾向が見て取れました。そのため、椎橋選手が池田選手のマークを捨ててCBにプレスを掛けて来る可能性は低いと考えられます。
では誰が来るのかといえば、それはベルマーレのアンカーをマークしている、もう一枚のボランチとなります。そしてその際のズレを利用することで、CB→アンカー→非ボールサイドのサイドボランチという流れで、ボールを繋ぐことが出来るはずです。
ここまで来れば後はズレを利用し続けるだけとなります。
例えば、フリーでボールを受けた非ボールサイドのサイドボランチに対して、3バックの一角が出て来た場合、トップとのワンツーでゴール前まで抜け出せるはずです。

次に「GKも含めたビルドアップ」の改善点を説明していきたいと思います。
上記した通り、アンカーの田中選手が囮になることで、サイドボランチへのパスコースを作り出したところまでは良かったと思います。
しかし、ボールサイドのサイドボランチに対しては名古屋のボランチがしっかりとマークについており、特に池田選手に関しては上記した様に、試合開始直後から椎橋選手が徹底的にマークしていたため、ボールを受けに行っても簡単には前を向かせてくれず、パスを受けてからの展開に少し苦しんでいる様に見受けられました。
そこでここではボールサイドのサイドボランチがボールを受けた後の展開に関して、提案をしたいと思います。
図Ⅳの通り、ベルマーレがGKも含めた4枚でビルドアップを図っている中、アンカーの田中選手が囮となり、サイドボランチの池田選手にボールが入ったと仮定します。
その際、池田選手には椎橋選手がぴったりとついているため、前を向くことは出来ません。そこで重要となるのは周囲の選手の池田選手に近づきながらパスを受ける動きです。
この動きには池田選手が潰される前にパスコースを用意するという意味もありますが、一番の狙いは相手の視線を集めることにあります。池田選手が近づいて来る味方選手にボールを落とした瞬間、大半の選手の視線はそこに集まります。そこを狙って、非ボールサイドのサイドボランチに繋ぐことが出来れば、アンカーをマークしているボランチのプレスバック等を受けることなく、フリーの状態を保ったままバイタルでボールを受けることが出来ます。
後は「左右のCBとWBのワンツー」の仕上げと同じ様に数的優位を活かしてゴールに迫るだけということになります。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「守備ブロックの崩し方」
前後半通して、グランパスが守備ブロックを敷いた際、ベルマーレは突破口を見つけられず、対応に苦しんでいる様に見受けられ、実際に得点を奪うことが出来ませんでした。
グランパスは「5-3-2」もしくは「5-2-3」で守備ブロックを組んでおり、単にクロスを上げただけでは中の人数的にも高さ的にも分が悪いため、地上戦で崩したいという意図を持って、後半の頭から、左利きでプレースキッカーも務めていた吉田選手を下げ、そのまま左WBに小野瀬選手を入れたのではないかと考えています。
HTに指示があったのか、後半はその小野瀬選手が敵陣のタッチライン際でボールを受ける場面が多かった様な印象を受けました。しかし、そこからの展開があまり上手くいっていなかった様に見受けられたため、ここでは小野瀬選手がボールを受けた後の、ブロックの崩し方について考えてみたいと思います。
小野瀬選手がボールを受けた後、上手く展開出来なかった一番の要因は、味方のフォローの位置にあると僕は考えています。
小野瀬選手はドリブルが出来る選手ではありますが、ボールを受けた際、対峙する選手には縦を警戒されており、中には多くのグランパスの選手が構えているため、ドリブルで仕掛けられる様な状況にはありませんでした。そんな状況下で適切なフォローがなければ、ブロックを崩すことが出来ないのも自明の理かと思います。
それでは図Ⅴ(Ⅰ~Ⅳと陣地が入れ替わっています)を見ながら、どの様にフォローに入り、どの様にブロックを崩していくのか説明していきたいと思います。
※ 後半のグランパスは「5-2-3」でブロックを組んでいることが多かったので、ここでも「5-2-3」で話を進めていきます
ここでのポイントは「長めの横パスと視線の集中」となります。
動きの流れは以下の通りです。
① ボールサイドのサイドボランチがマーカーを引き連れて縦に流れる
② アンカーが5バックの裏に抜け出す動きを見せてパトリック選手を引き付ける
③ 5バック前のスペースで非ボールサイドのサイドボランチがボールを受ける
④ ボールが流れている間にCFはボールを受ける準備を始める
⑤ ボールを受けたサイドボランチがダイレクトでCFにパス
⑥ CFがボールを受けてシュート
試合中に実際にあったシーンとして、小野瀬選手にボールが入った後、サイドボランチの茨田選手がグランパスの選手に挟まれている中、小野瀬選手の近くでボールを受けに行っていました(図Ⅴ移動前のポジション参照)。
しかし、そこで受けてもグランパスのDF陣からすれば、自分のマーカーとボールを受けた茨田選手が自然と同一視野に入っており、更に味方選手が挟んでいるため、脅威とはなりません。ということで茨田選手には①の動きを取ってもらいます。
そして番号上は②としてありますが、①と同時進行のイメージでアンカーの田中選手にはディフェンスラインの裏を狙う動きを取ってもらいます。
パトリック選手は田中選手が攻撃参加した際、実際にエリア内までついて行っていたので、この動きを利用させてもらいます。パトリック選手を引き連れていくことには攻守においてメリットがあります。
攻撃においてはパトリック選手を引き連れていくことで、田中選手へのマークを捨て、③でボールを受けるサイドボランチに対してプレスバックして来る可能性を排除することが出来ます。
守備においてはボールを失った際、前線にパトリック選手がいないことで、グランパスのカウンターの威力を落とすことが出来ます。
次に③④⑤ではこの章のポイントとして挙げた「長めの横パスと視線の集中」の出番となります。まず、DFは確実にボールの動きを目で追います。その際、横パスの距離が長ければ、多くのDFは無意識の内にマーカーを視野の外に入れてしまい、最終的にDF陣の視線がボールの受け手に集中する瞬間が訪れます。
当たり前のことですが視線が集中している時間は一瞬です。そのため、ダイレクトでパスを出すことが重要となります。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「2024 J1リーグ第28節 湘南ベルマーレvs名古屋グランパス」の分析レポートは以上となります。
有難うございました。
いいなと思ったら応援しよう!
noteを含めたフットボール活動へのご支援を頂けると幸いです。