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「紅楼夢」の料理談義―名作を舌で味わう(その13) ―熊掌をめぐるエピソード―

中国料理で珍味といわれ、伝統的な格式ある宴席や、いわゆる満漢まんかん全席ぜんせき(清朝時代の宮廷で振る舞われた中国史上最も豪華ともいわれるコース料理)に登場する料理として、燕巣やナマコ、鱶ふか鰭ひれなどと並んで熊掌(熊の手のひら)があることはよく知られている。

紅楼夢の物語においても、熊掌が登場する。それは、賈家にいわば年貢を納めている庄屋というか地方の豪農が、年始の挨拶に賈家に納めた特別の供物の中に、ノロジカ、シャム豚、羊、雉などと並んで「熊掌二十対」が含まれていたとされていることである(第五三章)。

賈宝玉(東京芸術大学附属図書館所収 蓋奇作)@Public domain

熊掌は、伝統的な大宴会には欠かせないものであったようで、一説によると、江戸時代、長崎在住の中国人の行う大きな宴会では、第一級の宴会には熊掌、鹿の尾、鱶鰭が欠かせないもので、第二級の宴会では、熊掌と鹿の尾は供されず(ただし鱶鰭は欠かせない)、第三級では、鱶鰭も省かれたといわれており、このように熊掌は特別に珍重されたようだ。

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小倉和夫(おぐら・かずお)
国際交流基金顧問、全国農業会議所理事、青山学院大学特別招聘教授。1938年東京生まれ。東京大学法学部卒業、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。外務省文化交流部長、経済局長、外務審議官等、駐ベトナム大使、駐韓国大使、駐フランス大使、国際交流基金理事長を歴任。1972年日中国交正常化交渉に外務省事務官として参与、70年代に香港に在住。「日中実務協定交渉」など国際関係関連の著書多数。