池波正太郎『青春忘れもの』
池波正太郎は言わずと知れた時代小説・歴史小説で名を馳せた作家であるが、そんな池波が半生を描いた自伝が『青春忘れもの』(新潮文庫)である。「小説新潮」で昭和43年に連載された時、池波は45歳で、半生を書くにはまだ早いと本人は思っていたらしいが、池波は67歳で亡くなっており、それを思うとまだ記憶もしっかりしていた45歳の時に書いていて良かったと言える。
特に若い池波がサインを貰おうとした際の政治家の重光葵と十五代目・市村羽左衛門との興味深いエピソードは是非読んでみて欲しい。
本書の解説を池波に連載させた元「小説新潮」編集長の川野黎子が執筆している。川野は以下のように記している。
この貴重な一冊〔青春忘れもの〕が連載終了後、掲載誌「小説新潮」の出版元である新潮社から出版されず、毎日新聞社から出版され、五年後、文庫化の時も中央公論社からと、はなはだ不本意な有様となったのは残念なことだった。
川野は新潮社から出版されなかった原因を書いていないが、毎日新聞社から出版された1969年時には、池波が本書で記している応召先で受けた暴力を働いた当事者たちはまだ存命だったであろうから、大手出版社から出版することは無理だったのだろうと推察できる。
