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売れないクリエイター、本屋を作る   連載エッセイ その③

――55インチのテレビが死に、VAIOの画面が赤くなり、それでも当日を迎えた話

前回のあらすじ:

1984年から書き続けている長編「ノイルフェールの伝説」は三人称、重厚、フックとは無縁の作品だ。
Xのスペースでラノベ作家さんたち・愛好家さんたちに読んでいただいたら異口同音に「読みにくい」「重い」「フックが……」と言われた。
世の中本当にラノベしかないのか。ファンタジーはラノベじゃないとダメなのか。それでも気合で紙媒体を50冊作り、大それた野望を胸に文学フリマに臨む朝霧だった。文フリ界隈のドン・キホーテ出馬!(ドンキではない)

嫌な予感①②③、そして……④

文学フリマの話をする前に、そこに至るまでの話をしなければならない。

文フリの約2ヶ月前から、なにかがおかしくなり始めていた。今思えばあれは予兆だった。虫の知らせとも言う。わたしはそれを

最終的に4回(?) 受け取った

嫌な予感 ①

モニター兼用で使っていた55インチのテレビが、突然死んだ。

テレビは、SharpのAQUOSだ。10年ほど前にヤフオクで買った中古品で、3D眼鏡が付属していた。どうやら3Dが見られるらしかった。

(※3D放送って何? という感じで、結局一度も使わなかった。)

モニター兼用で使っていたから、作業領域は広く、重宝していた。それが、その日突然終わった。何時もの通りスイッチをonにすると何と画面が点滅した。そして真っ暗になった。電源ランプが赤く点滅し二度とつくことはなかった。

職場のチャッピーに修理すべきか聞いてみた。
即答だった。「買い替えですね」と。

早っ。

(※それにしても最近のテレビは高い。ヤフオクで中古を探していた10年前の自分の判断は、あながち間違っていなかったと思う。)

嫌な予感がした。でもまあ、テレビが壊れることはある。そういうこともある。そう思って先に進んだ。
結局3年落ちの45インチの中古4Kテレビをヤフオクで送料込みで2万5千円で購入。4Kの描写の綺麗さに驚く💦

嫌な予感 ②

「ノイルフェールの伝説」1巻の本体が印刷所から上がってきた。数日後にカバーが別の印刷所から届いた。なんかズレてる。

本体とカバーを別々の印刷所に発注したのは、それぞれ得意分野が違うからだ。合理的な判断だったと思う。ただ、現物を合わせてみると、微妙にズレていた。

(※「微妙に」というのが余計に辛い。致命的にズレていればあきらめもつく。微妙だから、見るたびに気になる。)

ならば修正しようと思った。カバーをアイロンであて布しながら折り目を消し、ズレを調整して折り直す。地道な作業だ。家内制手工業と呼ぶにふさわしい。
なお、設定温度を間違えて3枚ダメにした。

(※家内制手工業とは、近代工業化以前の生産形態である。要するに手作りだ。朝霧書房の製造ラインは前近代である。)

嫌な予感が強くなった。でもまあ、印刷物のズレはある程度仕方がない。そういうこともある。そう思って先に進んだ。

嫌な予感 ③

文フリ前日、作画用ノートPC(SONY VAIO)の画面が赤くなった。

赤い、というのは比喩ではない。文字通り、画面全体が赤みを帯びた。ウィンドウの表示は正常だ。操作もできる。ただ、画面が赤い。これでは絵が描けない。色がわからない。

写真を撮った。これがその状態だ。ウィンドウは動いている。操作もできる。ただ、全部赤い。

レッドアウトだ!

思わず、自分がレッドアウト状態になったのかと思った。

(※レッドアウトとは、急激なマイナスGがかかった際に視界が赤くなる現象だ。戦闘機パイロットが経験するやつだ。わたしは今、椅子に座っている。)

Gは感じない。大丈夫、まだいける……わたしはね。VAIOはダメだったが。

設定を調整した。ドライバを入れ直した。レジストリを弄った。OSを再インストールした。

治らなかった。ハードウェアの故障だった。

前日である。文フリの、前日である。

(※タイミングというものは、どうしてこうも絶妙なのだろう。)

嫌な予感④

会場に向かう電車の中で、カートの底側の側面がバキッと音を立てて壊れた。
新刊を詰めた段ボールを運ぶために、モノタロウでカートを取り寄せていた。約3000円だった。
有楽町線から、臨海線に乗ろうとした、その瞬間だった。底部の側面が、バキッと割れた。

(※「バキッ」という擬音は、こういう場面にはあまりにも明快すぎて、逆に笑えない。)

中身は段ボールに入っているからダメージはない。
しかし亀裂は乗車中じわじわと広がり続け、文フリが終わる頃には底が完全に抜けていた。臨終である。

そして荷物は、減っていない。

(※売れていないからだ。)

文フリ終った時にL字パーツとネジ釘、ドライバーで無理やり補修し、帰りも同じ重さ(そんな筈はない朝霧が買い求めた本が増えている)を、修理したカートで運んだ。
3000円のカートは往復で仕事を終えた。(先日朝霧が電動のこぎりで解体し引導を渡した……合掌。)
3000円を払って電車内で壊れるゴミを買ったことになる。
モノタロウが悪いわけではない。使い方の問題だろう……知らんけど。

嫌な予感は、4回ではなく5回あった。

駅に向かう朝霧の目の前を、黒猫が横切った。我が家の近所を縄張りにしているオスのぬこだ。一瞬立ち止まって目が合い、やがて悠然と通り過ぎた。

以上だ。説明は不要だと思う。

(※欧米では黒猫は幸運の象徴らしい。日本では不吉とされる。わたしは日本人だ。)

そして本番を迎えた……

気合で作った50冊の紙媒体を持ち、キャッシュレス決済の端末を持ち、イラスト原画とポスターを持ち、文学フリマ東京42のブースB-31・32に立った。TEAM VALKYRIEの旗を掲げ、ヴァル書房として初めての出店だった。

結果は前回書いた通りだ。

驚異の売り上げ! 一般来場者への販売、なんと0冊! 

55インチのテレビが死に、カバーはズレており、VAIOの画面は赤くなった。
そしてカートは壊れ、黒ニャンに前を横切られた。
ここまでの嫌な予感はすべて的中した。いや、的中というより、これは前哨戦だったのかもしれない。

本番の追い打ちは、文フリの後に待っていた。

追い打ちが、3回あった。

その話は次回にする。

まだだ、まだ終わらんよ!

✒ 制作:朝霧 巡(Asagiri Jun)-TEAM VALKYRIE-

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