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“儲かる”からこそ、地方で不動産投資をおすすめしない理由

要旨(3行)

地方の大家は、たしかに儲かっている。
でも、最終的に残るものは意外と少ない。
問題は「利益」ではなく、「構造」にある。


地方の大家は確かに「儲かる」

私は不動産の専門家ではないが、仕事柄、年間300件ほどの決算申告書を見る。
その中で、地方の不動産賃貸業を営む人たちは、たしかに黒字だ。

家賃収入は安定しているし、場所を選べば実需もある。利回りも悪くない。

「やっぱ、大家は儲かりまんなぁ、ええでんなぁ」
とエセ関西弁を使いたくなる。

ここだけを見ると、「地方不動産で安定収入」というストーリーは成立しているように見える。

ただ、少し踏み込んで見ると、違和感が出てくる。

儲かっているのに、なぜか余裕がない。

この違和感の正体は、利益の大小ではなく、その“質”にある。


なぜ儲かるのか

地方の不動産賃貸業は、構造的にはそこまで難しくない。

競争が都市ほど激しくない。
利回りが比較的高い。
一定の実需がある。

うまく立地を選べば、安定した収入源になる。

「稼ぐ」だけなら成立しやすい事業だ。


それでも残らない理由

問題はここから先にある。

不動産賃貸業は、見た目以上に「逃がしにくい収入」でできている。

修繕が発生しない限り、経費はかなり限られる。

固定資産税、損害保険料、管理委託費。
このあたりが中心になる。

一般的な事業のように、交際費や車両費、通信費、光熱費といった支出を柔軟に経費化する余地はほとんどない。

生活と事業を重ねて、税負担を調整することができない。

さらに、青色申告特別控除を満額受けるには、いわゆる「5棟10室基準」を満たす必要がある。
このラインに届かない規模では、控除面でも不利になる。

結果として、

利益が出る。
そのまま課税される。
社会保険料も上がる。

稼いだ分だけ、ちゃんと持っていかれる。逃げ場がない。

そこに借入の返済や修繕費が重なる。

帳簿は黒字。でも、なぜか楽にならない。
こういう状態が珍しくない。

一番怖いのは、老後の医療費

そして、ここで見落とされがちなのが、医療費の問題だ。

不動産賃貸業は、所得がきれいに出る。
つまり、そのまま「医療費の自己負担割合」に反映される。

現役時代はあまり問題にならないが、老後は事情が変わる。

病院に行く回数は確実に増える。
そのタイミングで、年金収入に加えて不動産賃貸業での事業所得があると、

医療費の自己負担は2割、場合によっては3割のまま続く。

心身を痛め、辛さを押し殺して病院に行くたびに、「あ、これずっとこの負担なんだな」と実感することになる。

これは税金よりも重い。

日常的に発生する支出が、ずっと高止まりするからだ。

収入はある。
でも、出ていくお金も減らない。

結果として、

黒字なのに、生活は楽にならない。

むしろ、年齢が上がるほど、じわじわ効いてくる。


地方特有のリスク

もう一つは流動性だ。

地方の不動産は売れにくい。
買い手も限られる。
手放すにも手間とコストがかかる。

一度ポジションを取ると、簡単には動けない。

資産であると同時に、かなり重たい持ち物でもある。


では、何をやるべきか

ここまでの話を踏まえると、地方でキャッシュフローを考える際の視点は変わってくる。

ポイントは、「経費として扱える余地があるかどうか」だ。

私が仲良くしているタバコ屋がある。
60代の女性が、団地の一角で一人で営んでいる店だ。

店頭に加えて、自販機を3台持っている。
年間の売上は直近で一千数百万円ほど。

タバコの粗利はおよそ10%なので、大儲けというわけではない。
ただ、年金の補助と考えれば十分な規模だ。

さらに、車両費や光熱費など、生活と事業が重なる部分を一定程度経費として扱える。

結果として、所得を上げすぎずに、実質的なキャッシュフローを確保できている。

もう一つ、身近な例がある。

自宅でスマホ教室を始めたシニア女性だ。

もともと友人が多く、周囲よりスマホやパソコンに詳しかったことから、高齢者向けの教室を始めた。

携帯キャリアが扱いづらい分野、たとえばLINEの使い方や、家族向けアプリの操作方法といった領域に特化している。

「子ども夫婦に嫌われないための使い方講座」といったテーマが、実際には一番需要があるらしい。

現在は友人を中心に20名弱の会員がいる。

さらに、古物商の免許を取得予定で、中古スマホを仕入れて設定したうえで販売する事業にも広げている。

来期の粗利は200万円弱を見込んでいるという。

どちらの事例も共通しているのは、

「生活と事業が自然に重なっている」こと、
そして、「経費として扱える余地がある」ことだ。

所得を無理に上げなくても、現金は残る。


サラリーマン層であれば、

年金に加えて、こうした形で年間100万〜200万円程度の粗利を継続的に生む仕組みを持てれば、所得を抑えながら、現実的にはかなり安定した老後を組み立てることができる。

しかも、こうした事業は人との接点を生む。

単なる収入源というより、生活そのものの一部になる。

結果として、人間関係が維持され、活動量も保たれる。
いわゆるアクティブシニアに近い状態になる。


一方で、不動産賃貸業はこの逆にある。

儲かるが、逃がしにくい。


もしどうしても地方で不動産を使いたいのであれば、民泊という選択肢もある。

家具や家電、消耗品、清掃費など、経費として扱える範囲が広がる。
事業としての性質が強くなる分、支出の紐づけもしやすい。

もちろん、運営の手間は増えるが、少なくとも「稼ぐほど苦しくなる」構造にはなりにくい。


補記:すべての人に向かないわけではない

ここまで読むと、不動産賃貸業そのものを否定しているように見えるかもしれない。

ただ、これは使い方の問題だ。

すでに事業を持っている人にとっては、不動産賃貸業は有効な選択肢になる。

景気変動の影響を受けにくく、担保としても機能し、キャッシュフローも安定する。

本業のリスクを受け止める役割を持たせることができる。

さらに、節税は本業や法人側で設計できるため、「所得が出すぎて苦しくなる」という問題も回避しやすい。


一方で、

現役時代はサラリーマン、老後は不動産で生活する、という設計は注意が必要だ。

利益はそのまま課税され、社会保険料や医療費にも反映される。
経費で調整する余地も少ない。

結果として、黒字なのに余裕がない状態になりやすい。


結論

地方不動産は儲かる。
ただし、きれいに儲かりすぎる。

そして、その分きれいに持っていかれる。

本業を支えるなら強いが、それ単体で人生を支えようとすると、思ったより重い。

地方で老後を生きるなら、何で稼ぐかより、どう残すか、そしてどう生きれば楽しいかを考えた方がいい。

※自己紹介を兼ねた記事


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