今月は追わない女でいよう

昨日は好きな人はお休みだった。
今月はもう会えないことになる。
知ってるタイミーの人もいないし、
なんかもう笑うのも喋るのもめんどくさくて、
わたしは黙々と作業した。



クッッッソつまんない。




知らない会社かなと思うくらい退屈で、
時計も全く進まない。
ショートケーキのいちごを取ってしまったような、
何の魅力も華もない現場は、
本当に他社みたいだった。
みんなよくこんなところに来るよなと本気で思う。
好きな人はカッコいいけれど、




彼がいないと、
ここにはろくな人がいないなと思う。




わたしの隣では障害を持った汗臭いおじさんが、
ずっと独り言を言いながらシーツを投入していた。
休憩の交代でポジションが代わったので、
どれを投入するのか新人の外国人研修生に聞いても、
結局よくわからない。
でもその隣にいる若めのパートの女の人に聞いたら、
以前思いっきり無視されたことがあるので、
わたしはあの人には話し掛けたくない。
好きな人も冷静に見たら、
こういう人達の一部なんだろうか。






土曜日に趣味のイベントに行ったとき、
わたしと誰かをくっつけようとするおじさん達は、
あの日は来ていなかったけれど、
現場では珍しく若い、
わたしの3歳上の男の子の話をすると、




「あの人生活力無さそうだから」





と秒で却下していた。
たしかにあの男の子はわたしの女版みたいな人で、
間違いなく正社員では無さそうだし、
運転はできるみたいだけど、
わたしと同じように、
よくお母さんの車に乗せられて現場に来ている。
イベントの参加料もお母さんが払っていたと、
以前うちの母親も笑っていた。
(うちはもちろんわたしが2人分支払っている)
まち歩きのときはよくわたしに寄ってくるけれど、
彼は話しても自分の話ばかりなので、
主催のお姉さんがいつも気を遣っていて大変そうだ。
たまたま一緒に博物館を見たことがあるけれど、
話す距離が近くて嫌だったし、
ヲタク分野にもそんなに詳しくなさそうだった。
同じ趣味の人ならわたしは自分より詳しい人がいい。






趣味の現場のおじさん達は40代50代が多くて、
土曜日に酔って一緒に騒いでいたのは、
わたしの母親と同年代の人達だ。
異性関係の話なんてしたことはないけれど、
わたしに彼氏がいないのをちゃんと見抜いていたし、
みんな普段はきちんと働いているに違いないし、
とっくに子供も孫もいる人達だから、
きっと人を見る目はあると思う。
こういう人達にわたしの好きな人を見てもらいたい。




わたしの好きな人も即アウトだろうか。





彼を見せたらあの人達は一体何を言うんだろう。
好きな人は正社員だけどそれでもダメだろうか。
うちは母子家庭だからよくわからないけれど、
もしああいうまともなお父さんがいたら、
合格点が出る男を捕まえるのは大変だろうなと思う。






しかしいくら好きな人のことを考えても彼はいない。



今月は好きな人にも、
懐かしい気持ちになる男の子にも会えないんだな…。




4月以来半年ぶりだ。
好きな男に会えない月。
わたしは一体どうなってしまうんだろう。






いっそ有給を取って、



懐かしい気持ちになる男の子が出るイベントに行ってしまおうか。




あれは1人で行ったら間違いなくアウェーだから、
孫のいるおじさんを誘ってみればいい。
いや誘わなくても、
「〇日〇〇に行こうと思ってて…」
とわたしが言うだけでおじさんは来てくれるはずだ。
明日も有給を取ってイベントに行くつもりだけど、
孫のいるおじさんも来ると言っていたから、
また会って話せるだろう。
たしか週末も同じイベントに行くはずだ。
黙々とシーツを投入しながら、
行く理由も誘い方もいくらでも思い付いた。
もう最後の最後なんだから会いに行けばいいじゃん。
講義だからスカートでもワンピでも行けるな。
そこまで考えたとき、
わたしはあることを思い出した。






懐かしい気持ちになる男の子に会ったら
わたしはその後またしばらく泣いてるに決まってるじゃん…






そうだわたしはまた絶対に辛くなる。
なんであんな離れた県に行っちゃうのさと嘆くだろう。
やっと固まってきた傷口がまたぐちゃぐちゃになる。
彼と話せたときはどんなに嬉しくても、
後から落ち込むのは絶対にわたしのほうなのだ。
今あの彼と話してもハッピーにはならない。
何を話してもわたしが何を思っても、
来月の今頃はもう、
彼は遠く離れた県の人になっているのだから。

だから彼はもう何の関係も無い人だ。






うん、会わないほうがいい。






今までのわたしなら、
間違いなく最後に会いに行ったと思うけれど、
わたしはもう、
これ以上彼のことで落ち込みたくなかった。

せっかく穏やかに生きている今を壊したくなかった。
わたしを守れるのはわたしだけなのだ。





そこでわたしはひらめいた。





今月は男を追いかけない月にしてみよう。




好きな人にも、
毎年この時期は有給を取って会いに行っていた。
でも今年はそれを止めてみよう。
懐かしい気持ちになる男の子が、
あの街にいる最後の月だけど、
彼に会いに行くのも止めておこう。
わたしは今月は半年ぶりに好きな男に会わない。
女性ホルモンが出なくなりそうだ。
でも趣味の現場で会うおじさん達は、 
いつもみんなわたしに優しくしてくれる。
今月はちょっとそっちの世界にいてみよう。
もしかしたら何かが変わるかもしれない。



 

カッコよくて、
話が面白くて、
いなくならない、
完璧な男性が現れたらいいな。





とわたしは内心思っている。