氷上で魂が震えた朝|オリンピック観戦記
まえがき
──小さな光を、見逃さないでほしい。
朝の静けさの中、
目を凝らすと、日常の中にも小さな光がある。
誰かの仕草、息づかい、微かに揺れる影——
それを見つけるたび、魂が震える瞬間がある。
私はこの物語を書きながら、
そんな“魂の震え”を、少しでも
伝えられたらと思った。
テレビの向こうで輝く人の一瞬も、
ページの隅に残る余白も、
同じように、光になるのだから——
本編
─朝の静けさの中、魂の震えを見つけた。
時計は6時を少し回ったところ。
外はまだ薄暗く、街灯の光がかすかに差し込む。
部屋の明かりを小さくして、
私はテレビの前に座った。
氷の上に現れた二人——りくとりゅう——は、
光の精霊のように静かで、
でも確かな存在感を放っていた。
滑り出すたび、空気が変わる。
氷の光の反射、衣装の揺れ、
回転の瞬間に生まれる影。
すべてが胸の奥に小さな波を作った。
手元のマグカップの温かさすら、魂の震えと混ざる。
息を止めて画面を見つめ、
心臓の鼓動に耳をすませる。
テレビの中の二人の呼吸に、
私の呼吸が少しだけ重なる気がして、
心の奥がじんわり震えた。
演技中、二人の細かい仕草を追いながら、
私は自分の小説を書くときのことを思い出していた。
言葉にならない感情、余白に残す想い、
それをどう形にするか迷いながらも、
光や息遣いを大事にするあの感覚。
ジャンプが決まるたび、氷を蹴る音が静かに響き、
着氷の衝撃が画面を通して魂に届く。
ふわりと跳ねた髪、滑るたびに重なり揺れる影、
小さな瞬間のすべてが、光の粒になって心を打つ。
呼吸を整えようとしても、魂の震えは収まらない。
画面の中で互いを見つめ合う視線、
回転のたびに生まれる信頼の形——
それを受け止めるだけで、私は胸がいっぱいになる。
そして、演技が終わった瞬間——
りゅうの瞳に光る涙を見た。
りくはそっと彼の肩に手をかけ、
言葉にならない優しさで支えている。
その光景に、私の魂も震えた。
ただの観客である私の心まで、そっと揺れた。
涙は出なかったけれど、胸の奥の温かさに、
思わず手を握りしめる。
私は思う。
演技を見て魂が震えるこの感覚は、
私が小説を書くときの気持ちと同じだ——
誰かに届けたい、魂を揺さぶる瞬間を、
光や余白や、言葉にならない感情を、
そっと紡ぎたい。
画面が切り替わり、インタビューで二人が微笑む。
りゅうの目にはまだ涙が光り、
りくがそっとフォローする。
その光景を見て、私は小さく笑った。
震えていたのは、二人だけじゃない。
私自身も、少しだけ変わった——
表現することの意味を、改めて感じた。
朝の薄明かりの中、
マグカップの温かさが、魂の震えをそっと包み込む。
今日もきっと、
光と影と、瞬間の震えを探しながら、
言葉を紡いでいくんだろう——
静かに、でも確かに。
──魂の奥で震えたものは、
小説になって、
誰かの心の中でそっと光を放つ。
あとがき
──魂の奥で震えたものは、言葉になる。
私はいつも、言葉になる前の感情に
夢中になります。
ふとした瞬間、心が揺れたとき、
それをどうやって形にするか迷うけれど、
ページに向かう手は止まらない。
今回の物語も、テレビ越しの光景に
魂が震えたまま、
小説にその余韻をそっと閉じ込めました。
読んでくれたあなたの胸にも、
誰かを思う温かさや、
小さな震えが残りますように。
つむぎ
iwkn_note
余白
山根あきら様の#青ブラ文学部に
参加させていただきました。
書いていてとっても楽しかったです。
オリンピックの余韻がまだまだ続くような
素敵な企画をありがとうございました。
#青ブラ文学部
#そんな君に金メダル
#短編小説
#オリンピックの思い出
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見てくださるあなたがいるから、物語は続いていきます。この景色が、あなたの明日をそっと照らす「お守り」になれたら。