【読書メモ】スティーブズ

今日は漫画の感想です。

Apple という会社、もちろんご存じですよね。
気づいたら身の回りに Apple 製品があって、もしかすると、今これを iPhone で読んでいる方もいるかもしれません。

そんな “当たり前の光景” があるということは、Apple が生まれた物語に、少し興味が湧く瞬間もあるのではないでしょうか。

この漫画は、まさにその創業期を描いたお話です。

私は初めて触ったPCが Windows95 でした。
家には親の仕事用のPCがあり、ワープロもまだ普通に使われていて、今ほどコンピュータが生活に溶け込んでいる感じはありませんでした。

でも、今ではスマホも当たり前になり、PC も誰もが気軽に使っていますよね。

ただ、この「当たり前」の歴史はまだ浅いと言われています。
技術のあっという間に進化する今だからこそ、少しだけ過去に目を向けてみよう。

そんな気持ちになったきっかけが2つありました。

ひとつは、Podcast『コテンラジオ』で語られていた「科学技術の歴史」やコンピュータの歩み。

もうひとつは、毎月のライトニングトーク会で、レトロコンピュータの歴史を紹介してくださった方がいたこと。そこで
「まずは『スティーブズ』を読んでみたら?」
とおすすめいただき、気軽な気持ちで手に取ってみました。

読んでみると、「歴史の教科書じゃなくて漫画でわかる」という気軽さが最高。難しい専門用語の意味が分からなくても、創業の熱量が伝わってくる。とにかく面白い。

そして、iPhoneの上でこの漫画を読んでいる、それ自体もなんだか感慨深いものがありました。紙の本も好きなのですが、なぜかこれは Kindle で買って、iPhone で読みたかった。

ということで、今回は漫画『スティーブズ』の感想です。


『スティーブズ』ってどんな漫画?

今や誰もが知る Apple の創業者、スティーブ・ジョブスとスティーブ・ウォズニアック。本作は、この2人を中心に、Apple II から Macintosh の開発までを描いた全6巻の漫画です。

著者の「うめ」さんは、企画・シナリオ・演出担当の小沢高広さんと、作画・演出担当の妹尾朝子さんによる二人組の漫画家です。

『スティーブズ』は、1970年代のシリコンバレーを舞台にした群雄割拠の物語で、実在の人物やエピソードをコミカルに再構成しているのが特徴です。
各話の間に挟まれる2ページのコラム(ストーリーの元になった実話や関連情報、その後どうなったか…)もとても読み応えがあります。

当時、コンピュータがなかった時代の空気が、ふっと立ち上るような読み心地があります。

面白ポイント:キャラが立っている

舞台はアメリカ西海岸ですが、登場人物の個性がとにかく濃い。例えば、

  • ジョブス:ロックバンドのカリスマのように圧のある暴君

  • ウォズ:一人称が「オラ」のおおらかな天才エンジニア

  • ポール・テレル:バイトショップのオーナー、まさかの関西弁

私でも知っているような有名な人物だけでなく、ジョブスとウォズを取り巻く実在の人物とのエピソードが漫画ならではのテンポで描かれています。

そして、最大のライバルとして登場するビル・ゲイツも、静かに迫ってくる「天才らしさ」が圧倒的です。
ジョブスとウォズが物語の中心だとすれば、対峙する存在として描かれるマイクロソフトのビル・ゲイツとポール・アレンも、負けず劣らず魅力的なキャラクターになっています。

私は学生時代に電気情報工学を学び、今でもエンジニアリングに関わっていますが、ITの歴史にはあまり詳しくありません。

それでも、キャラクターたちが目の前で動き出すような描き方のおかげで、知識がなくても素直に楽しめました。

面白ポイント:史実ベースなのに誇張表現が絶妙

■ ジョブスの現実歪曲フィールド

この漫画で象徴的なのが「現実歪曲フィールド」。

「現実歪曲フィールド」とは、ジョブスが提唱した、卓越した話術やプレゼンテーション能力によって、不可能に思えることを可能だと信じ込ませたり、聴衆を惹きつけたりする影響力のことです。

ジョブスはよく“プレゼンの天才”と語られますが、漫画のジョブスはそれ以上に、「世界を変える」と本気で信じて突き進む人物として描かれています。

その信念の熱そのものが周囲の空気を変え、仲間を動かしていく。その様子が、コマの中の表情やセリフ回しにしっかり表れていて、読んでいると自然と引き込まれます。

そして、この「現実歪曲フィールド」が嵐のように周囲を巻き込んでいく描写は、漫画ならではの迫力があり、本当にかっこいい。

■ ビル・ゲイツの「ホビイストたちへの手紙」

一方で、ジョブスとウォズのライバルとして描かれるビル・ゲイツ側のエピソードは、ジョブスとは対照的に、静かに燃え続けるような熱が“重み”を伴って伝わってくるような描かれ方をしています。

特に、印象に残ったのが、「ホビイストたちへの手紙」のシーン。

物語の序盤から登場する HCC(ホームブリュー・コンピュータクラブ)は、当時の西海岸のハッカーたちが集うコミュニティ。
ガレージの匂いがしそうな熱気の中、メンバーたちはソフトもハードも自由に共有し合っていました。ウォズも例外ではなく、自作の設計情報を積極的に公開していた時代です。

そんな文化の中で、ビル・ゲイツとポール・アレンは Altair 上で動く BASIC を開発。しかし、そのソフトウェア(紙テープで配布されていた)は、クラブのホビイストたちに“当たり前”のようにコピーされていきました。

そこで投げかけられたのが、ビル・ゲイツの有名な「ホビイストたちへの手紙」です。

「大半のホビイスト達が承知のように、彼らは自分たちの使うソフトウェアを盗んでいる」

今でこそ「ソフトウェアの権利を守った先見の明」として語られますが、
当時の文化では、“ゲイツこそが非常識”と見られてもおかしくなかった背景があります。

実際に、当時の HCC やハッカー文化の中では、公然と盗人扱いしたこの手紙に対して、「金にがめつい」「ハッカー精神に反している」と批判されていたとも言われています。

この漫画では、このエピソードがビル・ゲイツ側の視点で描かれており、彼らが抱えていた静かな怒りや葛藤が、まるで重圧としてのしかかってくるような描写になっています。その押しつぶされるようなプレッシャーの表現が、とても印象的でした。

まとめ

実は昔、シリコンバレーを訪れたとき、ヒューレット・パッカード(HP)に伺ったことがあります。すでに世界的な企業として知られていましたし、私自身もパソコンや測定器で HP 製品には触れていました。

そして、あのシリコンバレーの始まりの場所がパッカードさんちのガレージだった、という話も有名です。

当時の私は「シリコンバレー=ITベンチャーが集まる場所」「ITの巨人がいる地域」程度の理解でしたが、今ならもっと深く楽しめたはずです。西海岸にあるコンピュータ歴史博物館にも、いつか改めて行ってみたいですし。

次は『IT全史』など、もう少し広い視点から歴史を追ってみるのも面白そうです。

気になった方は、ぜひ漫画『スティーブズ』を手に取ってみてはいかがでしょうか。著者のインタビュー記事も合わせて読むと、さらに楽しめます。

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