コント文学『新時代の花婿』
『LGBT』『多様性』『ジェンダー』これらの言葉が身近になってきたのは感じていたけど、まさに今僕は時代の変化に直面している。
先に結婚式場に現れた男。
男は結婚式の最中、花婿を連れ去ってしまった。
男と男の愛のランデブー(逃避行)
残された花嫁は呆然と立ち尽くしてしている。
連れ去られるのは花嫁というイメージがあったけれど、世の中が変わって花婿が連れ去られる時代になったのかと感心してしまった。
しかし、感心している場合じゃない。
全く予想していなかった展開だ。
僕が花嫁を連れ去る前に、花婿が連れ去られるなんて!
僕は別れた元カノへの想いが断ち切れず、勇気を出して花嫁を連れ去りに来たのだ。
しかし、このイレギュラーな展開。
ど、どうしよう?
当初の予定通り、花嫁を式場から連れ去るか?
しかし、花婿が連れ去られて結婚式が中断している状況で花嫁を連れ去る必要あんのか?
僕は考えが纏まらないまま式場に突入した。
失意のどん底にいる花嫁(元カノ)に向かって僕は勢いでプロポーズしていた。
「僕と結婚して下さい」
「え!?あ・・はい」
気の抜けた返事だったけれど無理もない。
結婚式中に花婿が男に連れ去られた直後、元カレが現れてプロポーズをしてきたのだから。
僕も花嫁(元カノ)も急激な展開に思考が追いつかず、正常な判断ができる状態ではなかった。
それは神父も例外ではない。
「ナンナンダ、コノテンカイハ?
ケッコンシキ、ツヅケマスカ?
トワノアイヲ、チカイマスカ?」
「誓います」
僕は連れ去られた花婿が購入した高そうな結婚指輪を花嫁(元カノ)の薬指に着けて永遠の愛を誓った。
新郎新婦の両親。そして親族や関係者達は、この喜劇のような悲劇の中で怒るべきか、悲しむべきか、謝るべきか、喜ぶべきか、誰も正解が分からず式場内は収拾がつかなくなった。
まるで混沌としたこの新時代のようだと思いながら、僕はやっぱり花嫁を式場から連れ去る事にした。
