知華さんへ――子供を送り出す一人の保護者として、辺野古転覆事故に思うこと
知華さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
先日、とある私立中高一貫校のPTA役員会で、知華さんの事故について共有する機会がありました。
沖縄は多くの学校にとって修学旅行・研修旅行の行き先です。旅行会社も関与する国内旅行であり、保護者としては当然、学校行事として必要な安全管理がなされているものと考えます。その中に、保護者が想定もしない高いリスクが潜み、実際に一人の高校生の尊い命が失われたことに、改めて強い衝撃を受けました。
同じように子供たちを修学旅行へ送り出す保護者として、決して他人事ではありません。
知華さんの尊い命を無駄にしないためにも、「これまでそうしてきたから」という慣例で済ませることなく、沖縄を修学旅行先とする目的、現地で行う活動の必要性、そして安全対策について、今一度問い直す必要があると思います。
学校任せにせず、大人たちが立場を越えて連帯し、子供たちを取り巻くリスクを可視化し、一つずつ取り除いていくこと。それが、残された私たちにできる、知華さんへの何よりの供養ではないかと思っています。
私は仕事柄、「安全第一」という言葉を当たり前のように目にします。しかし、白地に緑十字の「安全旗」は工場や職場だけではなく、子供たちが学ぶ教育の場の真ん中にこそ、高々と掲げられるべきものだと思います。
重大事故は、多くの場合、一つの原因だけで起こるものではありません。小さな判断、確認不足、役割分担の曖昧さ、慣行や思い込みなどが連鎖し、それを途中で止める仕組みが働かなかったとき、取り返しのつかない事故となって現れます。
今回、どこかで「安全第一」の旗が降りてしまったのだとすれば、何がそうさせたのか。工場で重大事故を解析するのと同じように徹底的に検証し、ヒヤリハットを見逃さず、どこで事故への連鎖を断ち切ることができたのかまで明らかにする必要があると思います。
沖縄県議会では、特別委員会の設置に至るまで紆余曲折があったものの、現在は各会派の合意に至ったと承知しています。その一歩が踏み出されたことを大切にしたいと思います。
今後、委員会を設置したという事実だけで終わらず、学校、旅行会社、受入側、行政など、それぞれの判断がどのように重なり、なぜ事故への連鎖を止められなかったのかまで、十分に検証されることを願っています。
noteに書かれていた、
「それらがどう連鎖して、一人の高校生の死に至ったのか。そこまで描かなければ、本当の反省にはなりません。」
という言葉が、強く心に残っています。
誰か一人を責めて終わるのではなく、何があり、誰が何を判断し、どこに事故を防ぐ機会があり、なぜそれが機能しなかったのか。そこまで明らかにして初めて、本当の意味での再発防止につながるのだと思います。関係する学校、行政、その他所管の皆様には、一保護者として、また一納税者として、徹底した検証をお願いしたいと思います。
そして、十分な原因究明と具体的な再発防止策が示されず、学校行事として子供を安全に送り出せるという確信を保護者が持てないのであれば、修学旅行先から沖縄を外すという「リスクオフ」も現実的な選択肢として考えざるを得ません。
これは沖縄への賛否や基地問題についての政治的立場とは別の問題です。「高校生を学校行事として送り出したとき、その生命を誰が、どのような仕組みで守るのか」。保護者にとっては、それが何より先に確認されなければならないからです。
先日、国内出張でJALを利用した際、降機時に『明日への翼』が微かに流れていました。その曲を耳にして、知華さんのことを改めて思い出しました。
直接存じ上げないお子様のことを、なぜ今もこれほど気に掛けるのだろうと考えます。おそらく、一人の子供の命が失われたにもかかわらず、いまだ「大人たちが十分に責任を果たした」と感じられないからなのだと思います。
責任とは、誰かが謝罪や処分を受けることだけではありません。なぜ命を守れなかったのかを最後まで明らかにし、同じことが二度と起こらない仕組みを残すところまでが、子供たちを送り出す大人の責任だと思います。
私自身もその大人の一人として、この出来事を他人事にはしたくありません。
ささやかではございますが、「辺野古転覆事件の全容解明と再発防止を求める会」のお口座に、知華さんへのご仏前としてお送りいたしました。
あくまで知華さんへのお供えの気持ちですので、どうぞ使途にはお気遣いなく、ご遺族のお考えでお使いいただければと思います。そのうえで、もしその一部でも真相解明や再発防止のためのお力になれるのであれば、これ以上のことはございません。
知華さんのご冥福を改めて心よりお祈り申し上げます。そして、事故の全容が明らかになり、その事実と教訓が次の子供たちの命を守ることにつながることを心から願っております。
※本稿は、辺野古転覆事故についてご遺族が公開されているnoteを拝読し、同じく子供を学校行事へ送り出す一保護者として感じたことを、ご遺族への公開メッセージとして記したものです。特定の政治的立場や基地問題への賛否を表明することを目的とするものではありません。
