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闇 393(夏の悲劇―編)


闇 393(夏の悲劇―編)

夏の悲劇― ※本当は(蒙古竜巻撃)格ゲーマニアの空耳

2025/11/13 thu
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二千十七年二月六日、 月曜日仏滅。

休み明けの出勤。
…といっても実際に行くのは夜の十時。

基本日曜日休みの俺は、朝十時に仕事を終え。それから月曜の夜まではプライベートな時間である。
気付けば二月も一週間近く経とうとしていた。

普通に仕事をして帰って寝る。
そんな変わりのない日々。

一つだけ不満な事を挙げれば、君代からの連絡が減ってしまったという事。

『だいぶ遅くなってすいません。バタバタしてて、全然やつれてないせどやつれた気分。 増川君代』

今月二日に届いたメールも、あの時以来だった。
そう不満に思うのは少しおかしいのか?

彼女とのメッセンジャーのやり取りを見直す。
二日の前は、先月の二十九日。
格闘ゲームキャラのネタで盛り上がった休みの日。
横浜フレンチワイズのデートから一週間後の時だ。

あれからまた一週間以上が過ぎ、彼女とデートしてから二週間ちょっと。
それでこの二日に届いたメッセージ一通。

俺、何か変な内容を送ってしまったのか?
いやいや、それは違うでしょって。
もう一度見返してみる。

『あまり無理しないで下さいね。今度会った時、携帯で龍虎の拳とかできるよう作りますね。 岩上智一郎』

両方とも末尾に『ね』がつき、木下のオカマ野郎のウイルスにでも感染したからか?

「無理しないで下さいね。龍虎の拳とかできるように作りますね」

あえて声に出して言ってみた。
別に変じゃないでしょ。

君代の最後のメッセージ内容は、明らかに今の仕事の多忙さで『全然やつれてないせどやつれた気分』と書いてあっただろう。

「ん、やつれてないせどやつれた? 何だ、こりゃ?」

おそらくただの打ち間違いだ。
正しくは『全然やつれてないけど、やつれた気分』とこうだろう。

それだけ君代も疲れているのに俺へわざわざ気遣って返事をくれたんじゃないかよ。

それを不満だとか、日数が空いただの俺はいつからこんな生娘のようになった?
俺、四十五歳だよ?
こっちが年上なんだよ?
もっとどっしりとしなきゃ駄目じゃね?

どっしりはしてるだろ!
トレーニングはしなくなったけど、誰が見てもジュニアヘビー級レベルの身体は保っているぞ。

いや、馬鹿じゃないの俺は……。

身体の大きさがとかそういう事じゃないだろうが。
どっしり構えてデンとしろと言う事だ。

今日六日で二日からなんだから、五日間連絡が無いほど忙しいんだよ。
それを何おたおたしてやがるんだって。

でも五日も無いんだよ?
その間に俺の存在を忘れられてしまったら?

「むー!」

両手で頭を掴み、必死に言い聞かせる。
落ち着けよ。
こんな事で自我崩壊すんなってば。

だってこっちからまた連絡して、忙しい彼女から「あ、コイツ、しつけえ。粘着ー」とか思われたら、一体どうするんだよ?
馬鹿タレ、性格のいい君代がこんな事を思う訳ねえだろうが。
冒涜するなよ。

考え過ぎは絶対によくない。
寝よう。
今日はいっぱい寝て仕事へ備えればいい。

布団へ横になり、大人しく目を閉じる。
あー、駄目だ。
気になって眠れないよう……。

「ん?」

何か携帯電話に届いているぞ?
慌てて手に持つと、君代からのメッセージが届いていた。
仕事で忙しかっただけなんだよ。
だってそうでしょ。
俺だってラッキハウスにいる時、忙しい時は無理だもん。
もっとさ、大人になりなよ、本当。

『先週はひどい一週間でした。飛び降りようかと思いました。龍虎の拳楽しみにしてますね。 増川君代』

え、飛び降りる?
何それ?
駄目でしょ、そんな事しちゃ……。

いやいや、落ち着けって。
龍虎の拳楽しみにしてますって、そのあとあるじゃん。

あくまでも飛び降りたいほど大変だったという比喩だよ、比喩。
あれ、安心したら急に眠気が……。

結局目を覚ましたのは夜の八時十三分。
ヤバいでしょ、こんなギリギリに起きて……。

俺は慌てて着替えを済ませ、本川越駅までダッシュで走る。
今日だけは小江戸号乗っちゃおうか。
何故なら君代へゆっくり返信打ちたいからさ。

『どんな状況下にあっても、飛び降りたりしたら絶対に駄目ですよ! 岩上智一郎』

送ってから気付く。
何あの簡素なメール内容は?
あれのどこに文学的で知的な文面があるというのだ?
飛び降りたら駄目なんて、誰だって分かるでしょ?

あー、でももう送信済みだしなあ……。

混沌とした中、電車は西武新宿へ到着した。


二千十七年二月七日、火曜日大安。
仕事を終え、ガランとした電車へ乗り込む。
遅番のいいところは、こうして人と真逆の時間帯に働いているから通勤の際乗客がいないところ。

のんびり始発の電車に座り、そのままいるだけで川越へ着く。
一時間ちょっと掛けてと家に帰り、風呂入って寝るだけ。

返事ないなあ……。

『もし自暴自棄になり「う〜」って状況になったら、俺で良ければ何でも言って下さいね。 岩上智一郎』

とりあえず追撃のメールを送る。
寝ようとして飛び起きた。

もう一度送ったメッセージを確認する。
何だ、この「う~」って状況とは?
俺、馬鹿じゃないの?
焦り過ぎだよ!
何故もっと吟味して文章を研ぎ澄まさせてから送らなかったんだよ!

「うー……」

もう寝よう。
きっと疲れているのだ。

目を覚ましたらご飯食べて、時間になれば仕事へ行く。
それが日常のルーティン。

今日は夕方に目を覚ます。
五時ちょっと前。
携帯電話を見る。

「……」

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