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闇 433(師走の野良編)

闇 433(師走の野良編)

2025/12/23 tue
前回の章


二千十七年十一月二十四日、金曜日仏滅。

斉藤弘一が骨になってから、どのくらいの日数が経ったのだろう。
俺は仕事もキチンと言っているし、食事もちゃんと取っている。

でも何を食べたのかまったく覚えていない。
あれだけ必ず写真を撮っていた癖もなくなり、フェイスブックへ投稿する事もなかった。

「おい、何をボーっとしてんだよ! 早くINしろよ」
「あ、すみません……」

普通に動いているのに、何でこの客は怒るのだろう。
負けているから短気になっているだけか。
まあ俺に八つ当たりしたいだけだ。

「おい、赤崎君」
「はい、何でしょう?」

「烏龍茶じゃなくて、リアルゴールドって言ったろ!」
「あ、すみません。すぐ取り替えますね」

まったく高山は小さな事をネチネチと小うるさいな。
お茶と炭酸系のドリンクを間違えただけで…、いや、おかしいのは明らかに俺じゃないかよ……。

もうちょっとしっかりしなきゃ駄目だろ。
俺にとって盟友が亡くなったかもしれないが、ここにいる客にとってはどうでもいい事なのだから。

世の中に甘えるな。
物事を履き違えるな。
他人に期待などするな。

第一俺がこんな覇気がない状態を斉藤弘一が天国から見て、喜ぶのか?

不甲斐なかったのは俺。
他人のせいにするなよ。

十三日のつい気にしてしまうジンクスを彼は身をもって違うと提示してくれたじゃないか。

二千年五月十三日は、ジャンボ鶴田師匠の命日。
二千九年六月十三日は、三沢光晴さんの命日。
二千十四年十月十三日は、おじいちゃんの命日。

でも、斉藤弘一は違った。
二千十七年十月二十九日。
十三日の欠片もない。

「……」

馬鹿だな、俺は……。

彼の死を変にこじつけるな。
もうこの世にいないのだから。

「赤崎さん、ちょっと一服してきなよ」
「はい…、すみません……」

セブンスターへ火をつける。
携帯電話を見ると、中学時代の同級生である飯野君からLINEが届いていた。

『岩ヤンお疲れ様です。うちの会社の部署が、川越で忘年会をする事になりました。本川越駅近くのイタリアンでいい店あったら教えてほしいのですが……。 飯野誠』

もうすぐ十二月だもんな、もうそんな季節か。
川越でいいイタリアン…、パッと思いつくのが川越市駅の先にあるリストランテベニーノだ。
名前を思い出せないが、あそこのシェフは岩上整体の時よく患者としてきてくれた。
判官贔屓ではなく実際に店へ行って、いいイタリアンだなと思える。

飯野君へ返信し、店の名前と場所を伝える。
するとできれば本川越駅周辺がいいと連絡が来た。

『今日仕事終わって川越着くの、夜の十一時過ぎてしまうけど、それで良かったら一軒紹介しようか? 岩上智一郎』

『多忙なところごめんなさい。僕もちょうど残業でまだ会社なので、今日もしよかったらお願いします。 飯野誠』

二本目のタバコに火をつけようとする。

「ちょっと赤崎さん! 一服ですよ、一服!」
「あ、すみません」

俺はすぐ立ち上がりホールへ向かった。

ちょっとした事でネチネチと嫌味が始まる高山。
俺は両手で強く顔面を二度叩く。
それから深々と頭を下げ謝罪する。

ポカーンとした表情で高山は俺を見ていたが、それからは何一つ文句を言わなくなった。
この事を斉藤弘一に話したら、腹を抱えて喜びそうだ。

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