闇 179(みゆき専用過去の女編)
闇 179(みゆき専用過去の女編)
2024年12月28日(土) 14時26分59秒
テーマ:
闇シリーズ

2024/12/28 sta
前回の章

影原美優との別れ。
いや、言い方が違うか。
彼女にフラれ、俺から関係を切った。
これ以上俺は、彼女の相談に乗る事もない。
自分で選んだのだから、これからは彼女自身で好きにしていけばいい。
複雑な心境のまま、川上キカイへ出勤した。
九時に恒例の朝礼があり、それから業務開始となる。
まとめて送られてくる三十二台のノートパソコン。
「先生はそちらのパソコンから、電源入るかチェックしてもらっていいですか」
「了解です」
上司の小田柳の指示に従いながら、作業をしていく。
向こう側の荷物の中には、リース契約の終わったプロジェクターやレーザープリンターまである。
本当にここは宝の山だ。
俺が各品の名称とチェックを行い、小田柳がそれを書類に書き込む。
「先生、一服しましょうか」
喫煙ブースへ向かう。
「はい、先生。コーヒー」
いくら言っても小田柳は俺を先生と呼ぶのをやめてくれない。
嫌味な言い方でなく、作家としての俺を認めての先生という言い方なので仕方なくその好意を受けた。
「いつもすみません、小田柳さん」
「先生! 読ませて頂きましたよ」
「何をです?」
「『忌み嫌われし子』と『ブランコで首を吊った男』をですよ。失礼ですけど、最初ぶっちゃけどうなのかなって思っていたんですよ。かなり面白かったし、怖かったですよ」
興奮して俺の小説の感想を言う小田柳。
しほさんにはかなり指摘された作品ではあるが、普通の読者から見れば面白い作品なのだろう。
「先生、もっと他の作品もないんですか?」
生の声はとても嬉しい。
ここにいると、先日影原美優にフラれたばかりの傷が癒えてくる。
そういえばフラれるなんて、品川春美以来だな……。
ぎーたかにも俺は、フラれた形になるのか?
いや、あれは少し違うな。

まあ粘着系にストーカーチックな真似をされるよりはいい。
もう深く考えるなよ。
俺は気付けば影原美優の事を好きになっていて、気持ちを伝えたらフラれた。
それだけの話だ。
今は仕事をして、帰ったら小説を書いて…、その繰り返しだけで充分だ。
川上キカイの俺たちの部署へ、新人が入ってきた。
八歳年下の本間。
彼も派遣会社から入ってきたが、俺の派遣とは別会社から来たようだ。
少しオドオドした感じの大人しい真面目な子という印象。
俺と小田柳は業務内容を手取り足取り教え、三人で日々の業務をこなす。
少しだけ不満だったのが、違う派遣会社からの出向なので本間のほうが給料が高い部分だった。
しかしこれは彼に責任は無い話なので、あえて口に不満を出すような野暮な真似は避ける。
必然的に帰り道は同じなので、仕事が終わると一緒に帰った。
働き出して少し余裕の出た俺は、いつも休憩の度に缶コーヒーをご馳走してくれる小田柳の分もまとめて弁当を作り、職場へ持って行くようにした。
俺が料理までできると思わなかった小田柳は驚き、弁当を絶賛してくれる。
今まで友達くらいしか俺の作る料理を食べてくれなかったので、褒められるのはとても嬉しく思う。
共に働く本間の分まで作るようにした。
仕事を終えてからすぐ料理に入ると、伯母さんのピーちゃんと鉢合わせ、またグダグダと嫌味や文句を言われるので、深夜寝静まってから作るよう心掛ける。
ついでに作っただけなのだが、本間はその行動に感謝を覚えていたようで、たまに帰り道食事に誘われ、そこの会計は「いつも岩上さんにはお世話になっているので、ここくらい出させて下さい」と全部ご馳走してくれた。
これまでにないいい人間関係を築けた職場。
俺にとってとても居心地の良いものだった。
土日祝日は川上キカイが休みなので、必然的に小説の執筆漬けの時間を過ごす。
未だ思い出すあの感触。
影原美優の一連の流れ。
関係を切ってしまったが、一度くらい強引に抱いておけば良かったという後悔があった。
いや、無理やり抱かなかったからこそ、彼女は俺に甘えたいと複雑な関係ながら寄ってきていたのだ。
俺が焦り過ぎた為、あのような結果になってしまった。
その思いは強い。
無性に淋しさだけが残った。
以前ならもっと女性関係って良かったはずなのになあ。
ミクシィで過去の記事を見る。
俺から去って行ったみゆき。
がさつに見えたが、内面ではとてもデリケートな部分もあったのだろう。
何故彼女が結婚したあとも、俺にあのように関わってきたのかまでは分からない。
しかし俺ががっかりさせるようなメールを打つまで、みゆきはずっと俺の味方を…、一生懸命応援をしてくれていたのだ。
本当に俺は馬鹿だなあ……。
数ヶ月前、みゆきしか閲覧できない設定の記事を書いた。
「智が、私と出会う前にどれだけ女関係あったのか、本当に知りたいわ」
当時あいつは俺に何度もそう言ってきて、一度写真付きでそれをミクシィに書けとねだられる。
自分が俺の作品にいつ登場するのか、とても心待ちにしているようだ。
そう、みゆきはそんな変わった女だった。
俺は当時書いたみきゆだけが見られる記事を眺める。
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