恋愛万事塞翁が馬【矢沢先生】②
柊くんに差し出された折り畳み傘をみて、合点がいった。
朝礼の時のあの反応、それに今、カバンを不自然にもっていたこと。
「先生は今日、傘を忘れたんでしょう?」
「ええ、そうだけども――」
「僕はなんとか帰れますし。それに先生は……二人分、特に大事でしょう」
私の返答を終わらせぬまま、柊くんは畳みかけるように続けた。
いつもより饒舌な様は、有無を言わさず私に受け取れという意思すら感じる。
なるほど、そうきたか。
私を慮ってくれる生徒の、この優しい気持ちを受け取らねば、逆に申し訳ないというものだ。
――ありがとう、といって傘を受け取ろうとした瞬間、廊下の向こうからの来客に気が付いた。
「星野さん?どうしたの?」
尋ねる私に星野さんはワタワタと走り寄って、傘を差し出してきた。
「先生、この傘、使ってください……」
揃いも揃って、なんなのだろう。
降りしきる雨の中、二人が傘を渡してくるなんて――私はいい生徒に恵まれたようだ。
「でもそれじゃああなたが――」
そこまでいうと、私は気づいた。
星野さんの傘を手にとる。
「ありがとう。それじゃあ、あなたの傘を借りるわ。これで”ちょうどいい”みたい」
私の言葉に、柊くんは瞬時に反応した。
みるみるうちに顔が赤くなり、私の思惑をくみ取ったようだ。
肩を叩き、優しき男子生徒へ心からのエールを送る。
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