[教育機会の地域格差:2] 都道府県別の進学率と所得の関係
「親ガチャ」「遺伝子ガチャ」そんな寂しい言葉が流行りつつあるこの頃。
親の所得や生まれた地域によってその人の人生は大きく左右されてしまうのも事実。
前回は、都道府県別に高校卒業後の進学率を計算し、地域によって進学率にかなり差があることを見た。
では、その差は何と関係しているのだろうか。
教育機会の格差を考えるとき、まず思い浮かぶ要因の一つは所得である。家庭の経済状況はもちろん重要だが、地域全体の所得水準も、進学のしやすさや進学後の選択肢と関係しているかもしれない。
そこで今回は、都道府県別の 高校卒業後の進学率 と 1人当たり県民所得 の関係を眺めてみる。
方法
高校卒業後の進学率は、前回と同じく、統計ダッシュボードAPIから取得した次の2つの指標を用いて計算した。
高校卒業後の進学率
= 高等学校卒業者のうち進学者数 / 高等学校卒業者数 × 100
進学率には2024年のデータを用いた。
所得の指標としては、統計ダッシュボードAPIから取得した 1人当たり県民所得(2015年基準) を用いた。こちらは取得できた最新の 2021年度 のデータを使った。
そのため、今回の比較は厳密には同じ年同士の比較ではない。
ここでは、地域ごとの大まかな傾向を見るための比較として扱う。
都道府県ごとに、横軸を1人当たり県民所得、縦軸を高校卒業後の進学率として散布図を作成し、Pearsonの相関係数とSpearmanの順位相関係数を計算した。
結果

都道府県別に見ると、1人当たり県民所得と高校卒業後の進学率の間には、正の相関が見られた。
Pearsonの相関係数 r = 0.58
Spearmanの順位相関係数 ρ = 0.60
つまり、所得水準が高い地域ほど、高校卒業後の進学率も高い傾向がある。
ただし、相関は「非常に強い」というよりは中程度である。所得が高ければ必ず進学率も高い、という単純な関係ではない。
特に東京都は顕著で、1人当たり県民所得が 5,761千円 と突出して高く、進学率も 74.1% と最も高かった。
一方で、京都府は1人当たり県民所得が 3,026千円 と東京都ほど高いわけではないが、進学率は 74.0% と東京都にほぼ並んでいる。奈良県も、所得は 2,549千円 と高い方ではないが、進学率は 65.2% と比較的高い。
逆に、茨城県は1人当たり県民所得が 3,438千円 と高めだが、進学率は 57.4% にとどまっている。栃木県や静岡県も、所得水準のわりには進学率が中位に見える。
この結果から、進学率の地域差には所得が関係していそうだが、それだけでは説明しきれないことも分かる。大学や専門学校の集積、都市部へのアクセス、県外進学のしやすさ、地元での就職機会など、複数の要因が重なっている可能性がある。
感想
所得と進学率の間に、ここまではっきり正の関係が出たのは興味深い。
やはり、教育機会を考えるうえで経済的な条件は無視できないのだと思う。
ただし、散布図を見ると、所得だけで進学率が決まっているわけではなさそうだ。
東京都のように所得も進学率も突出して高い地域がある一方で、京都府や奈良県のように、所得のわりに進学率が高い地域もある。反対に、茨城県や栃木県のように、所得は高めでも進学率は中位にとどまる地域もある。
このあたりを見ると、進学率には「お金」だけではなく、「近くに進学先があるか」「都市部に出やすいか」「地元で就職する選択肢がどれくらいあるか」といった地域の構造も関係していそうに感じる。
次回は、進学率と人口密度の関係を見て、都市性とのつながりをもう少し掘り下げてみたい。
