ヒロスエ食堂 2
土曜日だと言うのに仕事なんです。
いえ、土曜日に仕事というのはいつものことなんです。ここのところ休み無しなのだから。
でも今日はちょっと違います。休日出勤ではなくて、通常の勤務日だからなんです。
同じように仕事だといっても気分が少しばかり違うんです。
私は社有車を走らせています。
今日は関連会社に出張なのです。
空は晴れ渡り、ぽかぽか陽気。
そろそろ夏が訪れようとしています。
このままどこかに行ってしまいたい。
高速道路に乗って、どこか遠くに行ってしまいたい、と思うのです。
私は何だか疲れているのですね。
途中でミニストップに寄って、ソフトクリームを買いました。
これで少しはがんばれるかもしれません。
関係会社に着くと、いつものように中村課長が待っていました。
中村課長はいつものようにハイテンションです。
仕事をする。
仕事をする。
仕事をする。
うまく行かないことばかり。
うまくいかないことばかり。
うまくいかないことばかり。
うまく行かないから、毎日残業なのです。
うまく行かないから、休日出勤なのです。
あああ。
昼休みのチャイムが鳴ります。
中村課長が私の肩を叩きます。
「さあいくぞ、ヒロスエ食堂」
だから末広食堂だって。
私たちは「ヒロスエ食堂」に向かって歩きます。
いえ、スエヒロ食堂です。
私と中村課長は田舎道を歩きます。
田園風景。
この工場のある場所は本当にのどかな場所です。
気持ちが少しばかり安らぐのです。
ヒロスエ食堂のテーブル席に中村課長と向かい合って座ります。
私は親子丼、中村課長はカツ丼を頼みました。
中村課長はまた、大好きな広末涼子の話をします。
「スマホさ、楽天モバイルにしたんだよ」
「ああ、広末涼子が宣伝してますものね」
と私は話を合わせます。
しかしながら私の態度がそっけないので、中村課長は話題を変えます。
「仕事、順調?」
「それがなんだかうまく行かないんですよ」
「そう」
「今の仕事、自分に合ってない気がしてるんです」
「合ってない?」
「自分にぴったりの仕事がわからなくて」
「迷ってるの?」
「はい」
「それだったら、僕の部署に来ないか?」
「え?」
「僕の部署なら迷わないワンプラン」
「迷わない?」
「やった仕事に合わせて評価が決まるんだよ。チームで仕事を割り振っているから、忙しくても自分の都合に合わせて仕事ができる。元気なときはガンガン残業して貰うけど、少し疲れてきたら残業を減らして、少ないときは残業ゼロだ」
「すごーい」
「休みも取り放題。どれくらい仕事があるわからない人でもちゃんと休みが取れる、最適なワンプラン」
「私にぴったり」
「僕の課に来る人、すっごく増えてるんだよ」
「異動します、課長」
「今ポイント還元中」
って、私は何だか騙されてますか?
つづく。
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