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「恐れることを、恐れるな」(ACLE準決勝 アル・ナスル戦:3-2)

それは、まるでスーパースターが輝くために準備された舞台のようですらあった。

 3-2で川崎フロンターレがリードしていたアディショナルタイム。表示された6分のうちの4分に達した時間帯の出来事だ。

 ゴール前で獲得したフリーキックをセットしたのはクリスティアーノ・ロナウド。こういうシチュエーションで劇的な同点弾を何度も決めてきたからこそ、彼はスーパースターの称号を手にしてきたとも言える。

キャリア通算934点目を決めてきたストライカーは、この緊張感でも決して慌てていないように見えた。ごく冷静に、コンパクトに取った助走距離から鋭く右足を振り抜く。

 ボールはジャンプした壁の下を抜ける絶妙な弾道でゴールマウスに向かった。しかしゴールネットは揺れていない。

スーパースターのためのドラマは起こさせない。川崎フロンターレはそう抗った。俊敏な反応を見せたGK山口瑠伊が、懸命に足で弾き出したのだ。

 ボールが大きく跳ね返ると、次の瞬間、40歳のフットボーラーは両手で頭を抱えた。なんで入らなかったのか。理由がわからず、困惑しているようにも見えた。

だがそのこぼれ球を味方が拾って、左サイドからの仕掛けから再びクリスティアーノ・ロナウド。カットインして強引にミドルシュート。だが、これも山口瑠伊が正面でキャッチし、その場でボールを大切に抱え込んだ。

 試合時間は残り約1分半ほど。
クリスティアーノ・ロナウドのシュートを連続して防いだことで、川崎フロンターレの勝利が近づいてくる。


・・・だが試合はこれで終わらなかった。終盤のアル・ナスルは、マンチェスター・シティにいた元スペイン代表のセンターバックであるラポルテを前線にあげてパワープレーも辞さない攻めを続けてくる。

 そして95分に達しようかという場面。後方からロングボールを送ると、最前線でラポルテが高井幸大に競り合い、そのボールが後ろにこぼれる。

 そこで抜け出したのは、やはりクリスティアーノ・ロナウドだ。
丸山祐市の背後から素早く走り込んで反応すると、飛び出してきたGKの山口瑠伊を冷静なトラップで置き去りにする。

・・・・万事休すか。

 そう思った次の瞬間、猛スピードで中央にカバーリングに入り、決死のスライディングブロックでシュートコースに身を投げ出した選手がいた。

 右サイドバックの佐々木旭だ。

突如、目の前に現れたディフェンダーの存在が目に入った影響なのか、切り返したクリスティアーノ・ロナウドの左足のキックは威力がなかった。カンフーキックのような格好で飛び込んだ佐々木の足に防がれ、間一髪でしのぐ。

試合翌日のオンライン取材で、佐々木旭にこのプレーの記憶について振り返ってもらった。彼は「もう時が止まったように感じました」と苦い笑顔を浮かべ、一連の流れをこう説明し始めた。

「あそこを抜け出された時に終わったなと(笑)。でも、ルイくん(山口瑠伊)がうまく飛び出して時間を作ってくれた。そのおかげで、自分も間に合いました。あとはなんとか足に当たってくれという思いで飛びました。どこかしらに当たってくれて良かったです」

 GK山口瑠伊の飛び出しによってわずかに稼いだ時間を使って、佐々木はシュートコースに入り、カバーリングを間に合わせたのだ。まさに紙一重の攻防。この舞台ならではの極限状態で生まれたビッグプレーだったに違いない。

 その後もコーナーキックも耐えきり、タイムアップの笛が鳴り響く。

その瞬間、川崎の選手たちの多くがその場に倒れ込む。ベンチからも選手やスタッフが一斉にピッチに走り出してくる。次々と出来ていく歓喜の輪。

 そして、試合終了同時にキング・アブドゥッラー・スポーツシティ・スタジアムに流れ始めたSHISHAMOの「明日も」。

 「月火水木金 働いたー」のフレーズから始まる曲が流れる中、フットボール界におけるほとんど全てを手に入れ、年俸300億円以上と言われてる40歳のスーパースターは複雑な表情をしていた。なんというコントラストだろうか。

 しかしこれがフットボールなのである。
そんな喜怒哀楽の詰まったセミファイナルの一戦をたっぷりと振り返っていこう。



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クラブ史上初となるACLE決勝進出。川崎フロンターレのグループステージからファイナルズまでの戦いのまとめです。準優勝までの軌跡をどうぞ。

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