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「イラナイ経験」 (リーグ第25節・アビスパ福岡戦:2-5)

 ハーフタイムが終わり、先にロッカールームから出てきたのは川崎フロンターレの面々だった。

 スコアは2-2。彼らの表情は、このゲームの勝利をまるで諦めていないように見えた。

 後半開始に備えて、ピッチにいる選手たちが円陣を組み始める。キックオフ前の儀式である。

 だがその輪はいつもより小さかった。
選手が2人少ないからである。記者席から見ても小さく感じたほどなので、選手たちはより実感していたことだろう。その違和感に円陣を組み終わった選手たちには、思わず笑顔が漏れたという。

 自分たちが招いたシチュエーションとはいえ、ここから始まる45分はどう考えても逆境になることがわかっていた。ただ、あまりに絶妙的な状況を目の当たりにすると、人は笑ってしまうのかもしれない。キャプテンの脇坂泰斗がこんなやり取りがあったことを明かす。

「(後半に)円陣を組んだ瞬間、『(輪が)ちっちゃくね?』みたいなことは言ってました(笑)。そして『9人になったのはしょうがない。これで勝ったらすげえよ』みたいなことを誰かが言ったんですよ。アサヒ(佐々木旭)かマルくん(丸山祐市)かな。勝てなかったのは本当に悔しいですけど、あの時はそんな感じでした」

 サッカーは11人で行うスポーツである。それで一人少なくなると、どれだけ不利になるのかは、サッカーで生き抜いてきたプロならばよくわかっている。それが2人少ない状況だ。

 多くの選手が経験したことのない未知の領域だったが、その逆境に奮い立っている選手もいた。

 例えば、山本悠樹がそうだ。

 この後半開始直後の出来事。
中盤でボールを持った彼は切り返しで一人かわすと、自らのドリブルで果敢に敵陣まで持ち運んでいる。瞬く間に福岡の選手数人に取り囲まれたが、それでもお構いなしで突き進んでいこうとした。後半のキックオフからわずか30秒のプレーだ。

 結局、ボールロストしてしまったが、味方に対して明確な意思を伝えるような背中だった。試合後にあの場面について本人に尋ねると、「姿勢を示したかった」と彼は説明してくれた。

「9人でしたけど、前に出ないといけないっていうところもそうですし、チームに対する姿勢として『行くんだよ』っていうのを示したかったっていうのがありました。無理やり前に出て行ったりというのは、意識的にやろうと思ってました」

 後半の45分は、どう転んでも守勢に回る時間帯が長くなる。
それは火を見るよりも明らかである。だからと言って、後ろでガードし続けるだけではジリ貧になる。こちらが懐にナイフを隠し持っていることを相手にはちらつけせないといけなかった。

 そうした思いは選手たちに共有されていたのだろう。
真夏のピッチに立つ9人のフロンターレの選手たちは、どこか吹っ切れたように試合に向き合い、後半の時間を進め始めていた。

 後半、決定機は何度も作られている。それでも最後の局面で体を張り、必死に均衡を保ち続けた。

・・・10分、15分、20分と時計の針が進んでいくが、スコアは動かない。次第に2人多い福岡の選手にも焦りの色が浮かび始めているようにも見えた。この時点までは苦しいながらも失点しないというプランを遂行できていたことを山本が振り返る。

「9人で人数を合わせて前から奪いに行くのは難しいので、引き分けてる状態をどれだけ長くできるかっていうところでした。相手も攻めてはいますけど、(ゴールを)決めていないところで、若干フラストレーションを感じてるなっていうのもありました。その時間がもう少し長くできればっていうところでした」

 ところが73分、最初はノーファールと判定された橘田健人のディフェンスにVARが介入。清水勇人主審はOFRをしてPKを宣告した。

 このPKを決められて、事実上の勝負は決した。この失点を境にそれまで堪え続けていた守備陣も瓦解してしまったが、それまでの頑張りを否定する者はいないだろう。

 なお、そのPKの場面で交代を告げられてピッチを去ったのが山本悠樹だった。この時間まで30分近く、9人で耐え続けていた要因について彼は今年経験したある試合を引き合いに、こんな風に話し始めてくれた。

※12日、麻生グラウンドで練習公開がありました。
週末のアルビレックス新潟戦に向けた取材でしたが、福岡戦の振り返りもありました。

 デビュー戦で退場となってしまったウレモヴィッチに話を聞けました。Jリーグではレッドカードを受けた選手は、試合後にミックスゾーンを通らないですし、取材対応もしません。なのでウレモヴィッチのコメントは取れなかったんですね。練習後、ウレモヴィッチが語ってくれました。後日取材として追記しておきます。

※▪️(追記:8月12日)「最終的にレッドカードになって、自分が望んだ形にはなりませんでした。でも、これがサッカー。サッカーにはこういうことがあり得ると思っています」。デビュー戦で退場となったウレモヴィッチがオフ明けに語ったこと。そして今回の退場から学んだこととは?


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