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「甘くないダービー」 (リーグ第5節・横浜F・マリノス戦:3-3)

「セサが(自分に)縦パスを出してくれないかなと思いながら走っていました」

 21,478人が集まったスタジアムを驚愕させた一撃が生まれる直前。瀬川祐輔は、後方でボールを持ち運んでいたセサル・アイダルの動きを見ながら、自分に差し込むパスを受けようとイメージを膨らませていたという。

 ただフリーだったセサル・アイダルは力強く踏み込んでミドルシュートを選択。左足を振り抜く姿を見た瀬川は、次の瞬間にはこぼれ球に詰める動き直しに切り替えながら、その軌道を目で追っていた。

「(シュートを)打ちそうだったから、自分はこぼれに行こうと。そうしたら(シュートは)トーマス・デンの脇あたりを通っていった。すごいところを通してきた(笑)」

 真横でその弾道を目の当たりにした瀬川は、そう笑う。距離にすると約30メートルはあっただろうか。振り抜いた左足は、ほぼ一直線の弾道でゴールに向かい、CBトーマス・デンの横と、GK朴一圭の手をすり抜けてネットに突き刺さった。

 いわゆる「打ったと思ったら入っていた」というやつだ。一瞬の出来事だったので、一体何が起きたのか。喜ぶよりも先に驚きの感情が出てくるタイプのゴールだった。

ベンチでアップしていた佐々木旭は、思わずあの瞬間は「打つな!打つな!って言っちゃってました(笑)」と笑う。麻生グラウンドでも、あの距離からのシュートを見たことがなかったので、入るわけがないと思っていたからだ。

「映像を見たらコースは結構空いてましたね。でも、セサルが打つシーンっていうのは(練習でも)あまり見たことなかった。すごいシュートでした」

センターバックによる、まさかの一撃。横浜F・マリノスが彼の左足をまるで警戒していなかったことは、失点後の彼らの表情が物語っていた。そら、そうだ。味方も驚いたのだから。

---チャンスがあれば、前に出て攻撃をしていこう。
Jリーグ初ゴールを記録した24歳のコロンビア人センターバックは、ミックスゾーンで自らのゴールシーンまでの流れを振り返る。

「ディフェンスとして、本来はゴールを守る仕事ではありますが、ああいうチャンスがあれば前に出て攻撃をしていこうと思っていました。その思いがピッチに出たシーンかなと思います」

 ちなみにコロンビアでは、はるか上空に逸れていったシュートのことは「マンゴーの木」と表現するらしい。由来は知らない。この日のセサル・アイダルが放ったシュートは、それとは逆に抑えの効いた地を這うミドルシュートとなった。

 67分に生まれたこのゴラッソにより、スコアは2-1に。
残り時間は25分ほど。今年のチームであれば、しっかりとゲームをクローズして勝ち切れる算段だ。82分、長谷部茂利監督は相手のストロングポイントであり続けた右サイドのヤン・マテウスのマークとして、対人守備に定評がある佐々木旭を左サイドバックに配置する。

 だが、そこから耐え切れなかった。
試合終盤にセサル・アイダルが脚を攣り、ベンチ入りしていた高卒ルーキー・土屋櫂大が最後の交代枠として最終ラインに送り込まれる展開に。そこからゲームは二転三転。敗色濃厚だった土壇場で高井幸大がCKから打点の高いヘディング弾を決めて、勝ち点1を持ち帰った。

  思えば、近年の横浜F・マリノスとの神奈川ダービーは劇的な展開が多い。しかも川崎フロンターレは、センターバックがアディショナルタイムにゴールを決めることが多い。近年だと2022年は等々力でジェジエウが決めたし、23年は日産スタジアムで車屋紳太郎が決めた。そして今回は高井幸大だ。

 劇的過ぎたがゆえに、試合後はうまく感情が整理できないゲームではあった。同時に、評価も難しいゲームだったと思う。

 特に前半である。
初スタメンだった大関友翔の初ゴールで幸先よく先制点を奪った後の時間帯は、自陣の守備でその多くを費やしてしまった印象が強い。

前半に起きていた幾つかの疑問を瀬川祐輔に尋ねると、彼はこう話し始めた。

「多分、外で見ていて感じているものと、中で感じたものは明らかに違っていたのだと思います。何か一声で変わるような状況ではなかった」

ピッチでは変えようとしても変えられない問題が起きていた、というわけだ。

では、前半のピッチではどんな何が起きていたのか。そこから掘り下げていこう。


では、スタート!

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