2026.04.25|まちある記038|栃木県小山市
小山評定の地に今は新たな市役所が建つ。
約110億円を投じた免震の8階建て竣工。
思川の舟運が北関東有数の商都を育てた。
祇園城を構えた小山氏は町割の礎を作り、
例幣使街道の宿場町として人と物が集い、
賑わいでロブレという箱が生み出された。
そのロブレも2028年中には幕を閉じる。
まちの賑わいを担う主役の入れ替わりが、
小山駅前ほど分かり易く起こる街も無い。
イトーヨーカドーに続きイズミヤも去り、
ドン・キホーテとツタヤが跡地を埋める。
スターバックスの進出を喜ぶべきなのか、
中心市街地再生の矛盾をここで思い知る。
嶋田洋平氏が火を灯したリノベの流れは、
行政アドバイザー経費が尽きた頃に翳り、
それでもFUJINUMAの藤沼英介氏は残り、
卒業生が全国に広がってその文化を繋ぐ。
エアクラフトキャリアの活動も起こるが、
まちの規模により個人の活躍も吸収され、
歩道には人影が無く公共空間も静寂な様。
担い手はいるが街区へ広がらない歯痒さ。
大型店と顔の見える店主の誰を選ぶのか、
この街でも次の一手を問われている現状。
駅東口はかつて未利用地が多い地区であった様だが、アクセス道路や歩行デッキの整備を進め、白鴎大学キャンパスを始めとする大型施設を整備したことで、人口22万都市の顔に相応しく大型の民間資本の誘致が実現したエリアとなっている。しかし旧来の自動車優先型施設が大半を占めていると思われ、駐車場問題が解決しているかどうかは疑問が残る。
白鴎大学は法人創立100周年事業として、2018年度に新キャンパスを駅東口に開設した。本キャンパスは2028年度には小山駅東口とペデストリアンデッキで接続されるとのことで、総事業費は概算で30億円が見込まれている。大学から駅への交通利便性の向上は学生確保に重要であるのだろうが、大学からどこへも寄らずに帰れる通路を優先的に確保することが、地域経済にとって有益かは疑問が残る。
小山駅西口を語る上で欠かせない駅ビル「ロブレ」。老朽化により2028年度までに閉鎖及び再整備が検討されているとのこと。駐車場も含めると駅周辺で閉める床面積は大きく、所有権の50%を有する小山市では市民会館の移転を核にした建て替えを検討中とのことであるが、建設費高騰の状況下において、市民理解を得つつ、効果的に民間資本を導入するプロジェクトを推進することは非常に難易度が高いと想像がつく。
小山駅西口再開発の核となる施設の一つ、アトラスタワー小山城山町。2021年4月に竣工したこの施設は地上18階建てのタワーマンションで、1~2階には足利銀行が入居する。この二丁目エリアではすでに再開発事業が終了しているが、三丁目エリアにおいても新たな再開発事業が検討されており、老朽化した木造住宅や小規模店舗の取り壊しや再整備が進められている。
小山駅西口においては再開発事業によるマンション建設が進んでいるが、筆者が訪れたこの日は歩道上に歩行者を見かけることはほとんどなく、日常的な買い物や移動の大半は車により充足されているものと思われた。住人は新幹線等により首都圏へ通勤する者が大半であると考えられ、再開発により周辺地域に魅力的な生活空間や地域コミュニティが形成されているとは思えない風景であった。
再開発エリアから少し外れた街区においても歩道の高度化が進められており、ウォーカブル思想は行政のハード整備において全面的に根付いているものと思われるが、随分と前に壊された車止めがいつまでも修理されていないであろう状況を鑑みるに、歩道の安全確保が政策的な優位事項ではなく、ウォーカブルは理念のみにとどまっているのでは無いかと思われた。
昭和36年に創業したという、小山市内で唯一現存する銭湯、「幸の湯」。店頭の張り紙を見るに、「ふれあい入浴サービス」や「薬湯の日」などのイベントも開催されているようで、地域コミュニティに溶け込んだ存在であることが窺える。
区画整理により街区整備が完了した県道沿いにも、このような廃アパートが多く残される。区画整理事業を進めた自治体では、全国共通の課題なのだろうと思うが、区画整理等で道路等の整備が完了したエリアでも、老朽化した個人資産の整理は進まないことが多い。特定空き家等の施策によってしか、解決の道が無い場合があり、区画整理がまちの全ての課題を解決するわけでは無い。
コロナ禍によりすっかりと様相を変えたのであろう。かつては多くの風俗店や遊興施設があったが、現時点では営業の様子を伺うことが出来ない、社交飲食店が集まっていた歓楽エリア。
旧日光街道の1本東の駅西口へ続く通りには、2010年代後半から既存建物を活用したリノベーションまちづくりの動きが進められており、幾つかの空き店舗を活用する事例も起こった様であるが、肝心の駅西口ロブレやロブレ632といった駅西口を構成する主要施設において再整備が必要との議論が起こり、現在は大掛かりな再々開発を進めるフェーズへ進むことを余儀なくされている様である。
リノベーションまちづくりの舞台の一つになったと想像される駅西口広場へ続く街路。現在でも数件が営業している様子が窺えるが、少なくとも現状においては、リノベーション案件がエリアに滲み出し、一定のにぎわいを生み出した成果を読み取る事はできない。空き店舗活用と創業支援は人と人をつなぐ取り組みであり、それ故に世代を超えた継続が難しいのであろうと痛感する。
2021年にクラウドファンディングで目標の200%を達成して設立されたコワーキングスペース「
SEKEN」は小山駅西口のみつわ通りで現在も営業されている様であったが、入り口の埃の溜まり具合と脇の植物の枯れ具合を見るに、多様な人の手が入って適切に管理運営されている施設であるとは思えない様相であった。
約11億円をかけて2024年6月にリニューアルオープンした城山公園は、思川と街をつなぐまちなかウォーカブル区域の結節点として重要な場所であると思われるのだが、GW中のこの日、この公園で過ごす市民の姿は2人しか見かけることがなかった。
野球グラウンド等のスポーツ施設として、一部が活用されている思川河川敷。まちなかから近く、城山公園などの社会資源もある中で、河川の利用については積極的な取り組みがなされていない様子。まちなかの多様な魅力を形成する最重要な資源であるという理解が、市民や行政職員に十分になされていいのでは、と思われる風景。
小山市役所に隣接し、かつての祇園城址に2015年に整備された小山御殿広場。「歴史の散策拠点やマルシェなどまちの賑わい創出の場として機能」とされている様であるが、GWのこの日、この広場に滞在している人の数は、我々以外には0人であった。小山市民にとってまちの賑わいとは何なのか、考えさせられる風景である。
小山市出身の横山賢氏が小山市地域おこし協力隊を経て2022年にオープンした施設「Aircraft Carrier」では、駅周辺の低未利用地のリノベーションとリーシング、民泊事業等が展開されている。壁面の絵画が非常に目を惹く建物であるが、若者やアーティストの挑戦を後押しする場として、多くの地域住民や学生に利用されている様子。大きな再開発の波に飲まれる小山市でこの様な動きが展開されることは、街にとって心強い一面もあるが、想定外の一面もあるのだろう。
地元の野菜卸売会社「Sunフーズ株式会社」代表の栗原宏氏が立ち上げた、八百屋が手掛けるクラフトビールが地元産直「まちの駅思季彩館」にて販売されていた。地域密着型のクラフトビールはまさに食を通じた地域づくりであり、非常に価格が高い(1本600円!)ことを除けば、民間が主導する地域づくりにおいて、まさに理想の取り組みである。
小山駅から徒歩5分ほど離れると、高層マンション街も姿を消し、空き店舗が軒を並べる街区となる。その一角にあり、自家焙煎の高品質なスペシャルティコーヒーを提供するのが、地元出身の藤沼英介氏が空き店舗をリノベーションし開業した「Cafe FUJINUMA」。現在は小山市を中心に複数の店舗を展開しているようで、Cafe文化醸成の中心的役割を担っている様であった。
Cafe FUJINUMA店内の様子。我々が11時過ぎに店内へ入った時は1組の先客がいるのみであったが、12時が近づくにつれて来客が増え、正午にはほぼ満席となっていた。一時は近隣の貸し長屋にも影響されて入居する小売飲食業の事業主がいた様にも窺えるが、現状、この近隣で集客している店舗はこのCafe FUJINUMAのみだと思われ、個店がエリアに醸成することの難しさを思った。
Cafe FUJINUMAが自社ビルをリノベーションしてオープンした物件で、かつてはFUJINUMA CO-LABというコワーキングスペースが開かれていた様子。3階建てのビルにはいくつかの店舗が入居していたものと思われるが、5月3日日曜日の11時の時点においては、人通りもなく、コワーキングスペースとして活用されている様子も伺うことが出来なかった。こちらもFUJINUMA氏のリノベーションまちづくりの取組がエリアへ滲み出すことが出来たか否か、現状では見て取れなかった。【まちあるき私的指標】
本スコアは、実際に歩いた際の実感に基づく個人の主観的な評価です。
歩行空間の質:★★★★☆
滞在の快適さ:★★★☆☆
街並みの活力:★★☆☆☆
官民の繋がり:★★☆☆☆
都市の物語性:★☆☆☆☆
【都市診断:5つの私的指標の解説】
歩行空間の質:道の広さや安全性。誰もがストレスなく歩ける環境か。
滞在の快適さ:居心地の良さ。ベンチやなど、留まりたくなる仕掛け。
街並みの活力:1階部分の質。街に開かれた店舗、持続的な賑わい。
官民の繋がり:連携の質。道路と私有地の一体感、空間を使いこなす。
都市の物語性:ストーリー性。歩くことで感じる街の歴史や深み。