本庄市|街の印象をたった一人が決めることもある|まちある記041

旧中山道の宿場町として栄えた本庄の地に、
格子状の地割りが今でも往時の気配を残し、
白壁の奥に眠る古い物語は静かに息づいて、
かつての繁栄の面影が旅人の足元を照らし、
この街が積み重ねて来た時の重みを伝える。
やがて一本の鉄路が敷かれ近代の扉が開き、
駅の誕生は人の営みを変え街に活気を呼び、
蒸気と轟音が街の輪郭を大きく塗り替えて、
人々は新たな時代への期待を胸に行き交い、
列車の影を追いつつ次の百年へと歩み出す。
モータリゼーションの波が来て道は広がり、
車が主役の空間へと街の意義が変わる中で、
新幹線駅という次の核が南の丘に生まれた。
丘の早稲田には大学と巨大資本が集まって、
速度を増して広がる世間に街は追いつかず、
営みは少しずつ確実にその形を変えていく。
中心部は静まって新都市が光を浴びる構図、
主役の交代が冷徹に街の姿を塗り替えつつ、
影を落とした古い通りでは静かに時が過ぎ、
ただ受け入れつつ一時の休息を迎えていた。
抗いようの無い栄枯盛衰がこの街に訪れた。
だが古蔵や料亭の壁の奥で鼓動が響き出し、
現代の担い手たちが新たな場所を紡ぎ始め、
歴史的な資産に新しい息吹が吹き込まれる。
街の銀座に新たな営みの明かりが灯り始め、
歩行者の目線からこの街の日常が動き出し、
本庄の街の新たな時が今ここで動き始めた。


本庄駅南口から駅前へ至る道路上にて。電線地中化や歩道美装化も完了、特筆すべきは自転車通行帯の十分な確保であり、施策の充実が分かるが、肝心の道路沿いの大部分は空き店舗と駐車場から構成されている。


本庄駅南口の様子。右手に立つのはポレスターステーションシティ本庄という高層マンションで、2007年竣工のもの。本庄駅北口は駅前広場の拡充をはじめとする2035年までの再整備計画の詳細が昨年度に発表されており、事業年度で完了するかや総予算が計画通りに収まるのかも含め、今後の動向が注目される。


パレガルニエの看板を掲げた印象的な外観の建物。パレガルニエはパリを代表する歌劇場であるが、こちらは本庄駅北口にある寿ホールという映画館の建物で、現在は使用されていないものと思われる。風俗の中心地にこのような建物があったことで、街の文化の積層を知る。


駅北口から寿ホールを経て延びる三交通りの終着点にある金属プレートには、親不孝通りの名称が記されており、この街で身を持ち崩す若者が多い盛り場であったことが伺える。福岡市天神の親不孝通りに似た由来であることが実に興味深い。


毎年11月に開催されている本庄まつりにおいて巡行される多くの屋台や山車は、各町内で保管されている。地域でも少子高齢化が進む中でこのような伝統文化が守られ、現在でも大切に保管されている様子を伺うにつれ、地域コミュニティの力を感じる。


東日本大震災で使用不可となった市民プラザ跡地に、2015年に当時約20億の建設費で建てられた「はにぽんプラザ」。市民活動や生涯学習等の支援拠点として使用されている様で、少々大きめな公民館といったところ。高齢者を中心に利用が多く、付近の飲食小売店への影響もある。なお、施設名称はネーミングライツとなっており、本庄ガス株式会社が年間130万円で落札している。


本庄駅北口エリアの銀座通りを中心に空き店舗活用などエリアマネジメントに取り組む、本庄デパートメント(大橋千賀耶、早川純)の拠点の一つであり、旧さいとう化粧品店をリノベーションした民間複合施設であるLIGHT+CANARY。新たに店を始めたい人のためのポップアップ出店スペースなどを設けており、銀座エリアの賑わい創出の拠点の一つである様子。


旧本庄宿の総鎮守であり、前述の本庄まつりにおける精神的な中核でもある、金讃神社。現在も本庄市においては伝統文化を継承し、市民の結束が図られる中核的な存在であるとのこと。駅から地域の中核的な神社までのルートが確立され、現在も個人事業主が点在するストーリー性が本庄駅北口の強みであろう。


明治29年に建てられた国登録有形文化財でもある「旧本庄商業銀行煉瓦倉庫」は、元来、融資の担保として預かった大量の繭や生糸を保管するための倉庫であるとのこと。渋沢栄一に由来する約6万4千個のレンガが使用されており、2年間の耐震補強工事を経て2017年から交流スペースや多目的ホールとして活用されている、地域のシンボル。


昭和54年に建設され、平成27〜28年にかけて大規模改修が行われ、書架の増設や交流スペースの設置等が行われた、本庄市立図書館。まちなかに立地する建物ではあるものの、来訪者の大半は車で訪れるものであることから、この施設によりエリアでの回遊性が図られているとは感じない。


蔵書数は開架と書庫を合わせて約17万冊の規模で、特徴としては郷土の思想家である石川三四郎の遺族から寄贈された約3000冊の蔵書や関連資料が保管されており、地域の学術・郷土資料として重要な位置を占めている様である。子供向けスペースも一定規模が確保されており、内部は効率的に空間が活用されている印象である。


江戸時代に穀物や醤油を扱っていた「穀屋」という商家に端を発し、その後、明治43年から平成21年までは酒問屋小森商店で使用されていた三つの蔵。小森商店の閉店に伴い、設計事務所を営む戸谷正夫氏を中心とする地元の市民グループが土地や施設を取得、蔵以外の部分を住宅地として分譲した資金により運営が始められたとのことで、民間資本による歴史的遺産の活用方法としては、理想的なストーリーだと感じる。


旧小森商店の有する蔵のうち、味噌・醤油蔵であった部分を活用したコミュニティカフェのNINOKURA。1階は地元食材を使ったランチが提供されており、2階部分はコンサートやイベントに使用される多目的スペースとなっている。代表の小林由美氏はカフェの運営以外にも、子育て支援や行政のまちづくりにも参画する、地域キーパーソンの一人である様子。


手前は私が食べた郷土食である「つみっこ」を主菜にしたランチ1,000円、奥は妻が食べた本庄B級グルメとして売り出し中である「ナピラ(納豆・ピザ・ライス)」880円。ナピラは本庄では古くから親しまれていたものらしく、高齢の方々も一度は口にしたことがあるとのことであった。


本庄駅南口から3km程南下したところに、上越新幹線本庄早稲田駅を中心としたまちが広がっている。本庄駅北口の旧街道筋での歴史共存まちづくりとは異なり、こちらは田畑に開発した新たな都市であることから、その様相は一変する。誰一人として歩いていない歩道も、北口市街地の数倍の広さが確保されており、ウォーカブルでない場所にこそウォーカブルらしさがあるのだと皮肉を感じる。


本庄早稲田駅周辺の土地区画整理事業により2013年に誕生した、ベイシアグループの重要拠点である「ベイシアゲート」。敷地面積は78,222平方メートルで駐車台数は全体で1,500台と圧倒的な規模を持つ。本庄煉瓦倉庫の敷地面積が1193平方メートルであるから、実に65倍の面積を有する巨大商業施設が存在し、JR駅と新幹線駅の2面性が今の本庄市を性格づけている。


本庄早稲田駅正面の様子。2004年に整備が行われ、北側にはベイシアゲート本庄早稲田などの大型商業施設が、南側にはホームセンター大手のカインズ本社や早稲田大学のリサーチパークなどが立地し、高度に活用されている。1日の乗降客数は通勤客を中心に2000人程度であり、上越新幹線沿線では比較的下位に位置している。(最下位は浦佐で1,000人未満)


本庄市と早稲田大学の基本協定に基づき運営されている「本庄早稲田の杜ミュージアム」の内部。無料で入場できる。本庄市展示室には本庄市内の遺跡群から発掘された古墳時代の資料が、早稲田大学展示室には国内外の考古学調査で集められた学術資産が展示されており、この日はパプアニューギニアのものが並んでおり、大変に興味深いものであった。(来場者は極端に少なかったが)


2020年にオープンしたJR本庄駅の南側連絡通路に直結する複合型インフォメーションセンターで、インフォメーションセンター以外にも飲食店、レンタルスタジオ等が整備されている。公設施設であり、運営は本庄デパートメントが主体となり、地域の事業者と共に組織した「本庄RE-PUBLIC」が指定管理者を担っている。本庄駅周辺における本庄デパートメントの影響力は目を見張るものがある。


本庄早稲田駅と本庄駅とを繋ぐ公共交通機関である「はにぽんシャトル」で1回の乗車は200円。地域の足としても効果的かと。しかし、私が乗車した日は運転手のホスピタリティが極端に悪く、乗り合わせた高齢者とその娘は乗車に時間がかかることで運転手から悪態をつかれ、何度も「すみません、急ぎますから」と謝り、最後には「乗せていただいてありがとうございました」と頭を下げる始末であった。本庄市の印象が極めて良かっただけに、街歩き全体の印象を悪くした本当に残念な出来事であった。

【まちあるき私的指標】
 本スコアは、実際に歩いた際の実感に基づく個人の主観的な評価です。
 歩行空間の質:★★★☆☆
 滞在の快適さ:★★★☆☆
 街並みの活力:★★★☆☆
 官民の繋がり:★★★★★
 都市の物語性:★★★☆☆

【都市診断:5つの私的指標の解説】
 歩行空間の質:道の広さや安全性。誰もがストレスなく歩ける環境か。
 滞在の快適さ:居心地の良さ。ベンチやなど、留まりたくなる仕掛け。
 街並みの活力:1階部分の質。街に開かれた店舗、持続的な賑わい。
 官民の繋がり:連携の質。道路と私有地の一体感、空間を使いこなす。
 都市の物語性:ストーリー性。歩くことで感じる街の歴史や深み。

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