藤岡市|閉塞感を救うのは、ふじまるかたまごまんじゅうか|まちある記039

営みが消えた様な風景が広がる改札を抜け、
群馬藤岡駅を降りて中央通りへと歩き出す。
かつては絹で栄えた宿場町の地割りを北へ、
閉ざされた一階が続く表通りを歩き続けて、
何とも言えない閉塞感と諦めに満ちてゆく。
十五分程歩き続けた先に突如として開ける、
旧藤岡総合病院の広大な跡地がここにある。
長年地域を支えた医療の場が姿を消した後、
この土地をどう未来へ繋ぐかという問いに、
市民の声が集い学ぶ場という答えを出した。
全国で六十の施設を巡り知恵を積み重ねて、
令和七年ここに複合施設ふじまるが建った。
空を広く残した低い建物の連なりが美しく、
ガラス一枚を隔てて内と外の視線が交わり、
朝の小学生と夕暮れの高校生が共に過ごす。
路地へ目を転じれば成田屋の店先があって、
たまごまんじゅうが今日も売り切れている。
老舗の暖簾が大切な宿場町の記憶を留めて、
新しい拠点の熱量は街道の面へ広がるのか、
回遊の無い閉ざされた拠点に過ぎないのか、
この街からは次の担い手を求める声がする。
その声に応える営みの姿はまだ見えてない。


中山道の倉賀野宿から秩父方面へ至る脇街道の主要な宿場町であった藤岡宿には、現在も富士浅間神社と諏訪神社の間の区間に、かつての趣を感じさせる街並みが点在している。


群馬藤岡駅西口から街を見た様子。かつての宿場町につながる入り口ではあるものの、その乗降客の大半が学生であることから、駅前においてはまちの営みの姿を見ることは全くできない。


街から駅西口を見た様子。1日の乗降客は3,000人程度と八高線沿線では多い様子であるものの、この風景から学生の自転車利用に特化し、経済活動がほぼ行われていない駅であると推測できる。


群馬藤岡駅東口の様子。こちらはロータリーの整備がなされているが乗降口が無く歩道橋により西口へ続いているのみである。また、ロータリーに隣接する街区には住宅のみが広がっており、経済活動の様子は皆無であった。


電線地中化と歩道拡幅が完了している県道40号線の交差点。この先に幾つかの店舗が現存しているものの、店頭での誘客を実現している様子は見られず、歩行者のために高度化された歩道は自転車通学の学生が占有しているものと推測された。


群馬発のロックバンド「BUCK-TICK」のメンバーが出没したと噂されるユニー跡と市内循環バス。往時はバンドメンバーが頻繁に出没するとの噂を受け、ファンが聖地巡礼を繰り返す場であったとも聞くが真実は如何に。


街道筋の趣を残す建物のつくり。店舗の脇から私道の路地が続き、奥には庭付きの住居スペースが広がっているものと思われる。店舗併用住宅では無いものの、表の住宅との関係が密接であることから、空き店舗活用が進みにくい構造であると思われる。


狭い間口の奥に4件の店舗が連なる形式がいまだに残る。一番表の食堂から、一番奥の寿司店及びスナックまで、客層に合わせてレイヤーを使い分けているのが大変興味深い。現在の営業状況が気になるところであるが、この日は一番表のみの営業が確認できた。


旧市役所の土地を広大な広場として活用した中央公園。隣接する市民ホールは解体工事中であり、複合施設のふじまる内にホールが完成した現状において、この広大なパブリックスペースをどう活用する意図であるのか。まさに藤岡市中心市街地の今後を左右する案件であろう。


「たまごまんじゅう」が名物の成田屋店内の様子。洋菓子等の品揃えも良く、狭い路地にアンティークショップやカフェが集まるこの界隈の中核になる店舗。路地には菓子を買い求める乗用車が列を成していた。


成田屋で購入した渋川栗のタルト450円を妻と分けて食す。左側には品の良いアンティークショップが店を構え、界隈の趣きも良い。タルトはブランデーたっぷりで渋皮煮の味付けもよく、丁寧な品だった。


名物の「たまごまんじゅう」は人気で午前中には売り切れるようであったが、我々が訪問した午後1時台には、幸いにも最後の1個が残っていた。自宅に帰り、半分に割って妻と食す様子。シンプルな発想ではあるが、他では見ることの稀な名物商品。


宿場町の北側に位置する富士浅間神社。現在も県内7社で神玉プロジェクトに取り組むなど、意欲的なことで知られる。前述の成田屋の奉納なども見ることができ、地域で愛される社であることが伝わってくる。


富士浅間神社に隣接して並ぶ、各町内の屋台庫。県内でも屈指の熱量と聞く「藤岡まつり」のハイライトを飾る各町内の屋台が収められているようで、富士浅間神社の重要性を改めて思い知る一枚。


2025年7月に病院跡地へ開設された図書館及び子育て支援施設を中核とした複合施設「ふじまる」。機能別に幾つかの棟を設け、中庭を囲む形で連結した構造となっている。学生を中心に多くの来館者があり、長らく課題であった病院跡地の活用が結実したもの。


画像下はホール機能、左側は子育て支援機能および会議室、右側に図書館機能が配置されており、中央から右側空間にかけてマルシェ等での活用も可能な中庭が広がっている。平屋建てで圧迫感の無い構造であり、中庭の活用次第では、市民活力向上の拠点となり得る。


左側にホール棟、中央奥に子育て支援棟、右側に図書館棟を望む、中庭の様子。屋根部分が広めに取られており、学習の合間にくつろぐ学生の姿も見かけることができた。中庭部分の活用をどのようにコーディネートできるか、がこの施設が地域に広がるものとなるかどうかの分岐点だと思えるが、現状においてそのようなコーディネート機能を果たす「人」がいるのだろうか。


子育て支援棟は採光性が高く、図書館のエントランスの様にも見えるが、左側壁面の合間から各機能の部屋へつながる構造。複合施設でありつつも統一感が図られ、若者と子育て世帯を集めたい意思が伝わってくる。


図書館棟の様子。棚は高さが低めで空間を広めに確保するよう設定されており、蔵書数はその分少なめであると思われる。学習空間の確保も重点機能の一つであるようで、多くの学生が自習利用をしていたことも印象的であった。
ロードサイド系の店舗が並ぶ県道23号線沿いから、ふじまるの東南側入り口を見たところ。中庭は東側へ開かれており、街につながる機能は確保されているが、現状においてふじまるが街と結節している様子は伺えない。空き店舗が存在する街区ではなくロードサイド系の街区であることから、この施設が中心市街地活性化につながるためには、更なる工夫が必要だと感じた。

【まちあるき私的指標】
 本スコアは、実際に歩いた際の実感に基づく個人の主観的な評価です。
 歩行空間の質:★★☆☆☆
 滞在の快適さ:★★☆☆☆
 街並みの活力:★☆☆☆☆
 官民の繋がり:★★★☆☆
 都市の物語性:★★☆☆☆

【都市診断:5つの私的指標の解説】
 歩行空間の質:道の広さや安全性。誰もがストレスなく歩ける環境か。
 滞在の快適さ:居心地の良さ。ベンチやなど、留まりたくなる仕掛け。
 街並みの活力:1階部分の質。街に開かれた店舗、持続的な賑わい。
 官民の繋がり:連携の質。道路と私有地の一体感、空間を使いこなす。
 都市の物語性:ストーリー性。歩くことで感じる街の歴史や深み。

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