伊勢崎市|現役公務員が歩いて感じた地元の現在地とは|まちある記050

【半年の時が経過し再びこの街を歩いた。】
半年前に私はこの街の現在地点を評価した。
器はあるが熱量は低いと率直に書き記した。
自動車が支配する街の景色が広がる中では、
人々の営みはまだ見えにくいと感じていた。
しかしこの街を再び歩いてみたことにより、
私の確信は少しずつ希望へと変わり始めた。
行政が整えた器に人の営みが宿り始めてる。
街には変化の兆しが確かに生まれつつある。
昨年春開館したくわまるプラザの窓際では、
朝から学ぶ高校生が集い日常を描いていた。
駅前では民間が新たな風を吹き込み続けて、
確実に少しずつこの街に人が集まっている。
ここに世界で一番暑い夏がやって来ている。
神社は祭事の中心としての役割を取り戻し、
七夕の熱は裏路地と人とを繋ぎ直していた。
歴史ある通りでも若い館長の挑戦が始まり、
眠っていた看板建築は新たな役割を果たす。
もちろんこの街はまだ完成した姿ではない。
歩き心地も十分とは言えない現実ではある。
空き地も空き店舗も静かな時間を抱え続け、
それでもこの街の確かな未来を感じている。
半年前には器を持て余していたこの街だが、
今では自ら器を使いこなし始めているのだ。
行政が整えた浅く広い空間の隙間の中へと、
市民の熱量が少しずつ流れ込み始めている。
街は自走し自ら呼吸を始めようとしている。
まだ完成でない未完成のこの街ではあるが、
だからこそ未来への可能性で満ち溢れてる。
記録を書き換えたくなる街へ変えてゆこう。

伊勢崎神社の境内には新しい社務所が完成した。数年前に終了した伝統ある七夕は、市民や地元事業者の手によって「福笹七夕」として生まれ変わり、同神社の境内において実施された。また、地域おこし協力隊員をきっかけとして始まった「神社縁日」というイベントも、市民有志の手により継続的に行われている。これらの多様な新しい動きとネットワークにおいて、禰宜の齋藤宏平氏が中心的な存在となっている。行政主導や大規模開発とは異なる、地域の神社というプラットフォームを起点に、市民・事業者の自発的な取組が、柔軟な思考を持つ齋藤宏平氏と結びつくことで、まちなかに新たなコミュニティが形成され始めている。
公益財団法人相川考古館の館長を務める相川裕保氏は、江戸時代から歴史を繋いできた伊勢崎のまちなみにおいて、昭和期に肉店として親しまれながらも長年空き家となっていた「中沢肉店」の建物に着目した。商店街に残る貴重な町屋建築を後世に継承し、講演会やワークショップなど多様な人々が利用できる新たなスペースへと再生させるため、クラウドファンディングによる資金調達プロジェクトを主導した。歴史的資産の保存に留まらず、自らが牽引する「伊勢崎まちなか文化祭」などの地域活動とも連動させながら、まちなかに新たな人の集う拠点を創出するエリアリノベーションを試みている。
伊勢崎プロレスを主催するラーメンマンは、市内で「ラーメンハウス」を経営し、街中に残る〆の店として現在も多くの人に愛されている。また、プロレスラーとしてミスター・ポーゴの遺志を現在も継ぎリングに上がり続けている。さらに、近年では地域の伝統行事であるまちなかの七夕イベントにおいても中心的な役割を担い、プロレスと地域コミュニティの双方の場で街を盛り上げる異色のプレイヤーとして存在感を発揮している。
中心街において、不動産賃貸業のPLUM(プラム)を経営する茂木和典社長が、本町に多目的複合施設「ほんまち広場」を開設した。最大6社が入居可能なこの施設は、遊休不動産を活用して新たな人の流れを生み出す拠点として整備された。風俗関連産業ではなく、一般の飲食店やスポーツジムといった、日常的に誰もが利用できる店舗や施設を誘致している点に大きな特徴がある。これにより多様な世代が日常的に足を運ぶ動線が生まれ、これまで閑散としがちだったまちなかに、昼夜を問わず持続的な人の流れと賑わいを創出することが期待される。
本町において高山華代氏は2024年3月にアンティーク伊勢崎銘仙の専門店「華々」を開業、まちなかの新たな拠点を作り出している。店舗では100年近く前のアンティーク銘仙のほか、着物やハギレ、グッズ、小物を販売し、その多彩なデザインを求めて全国各地から着物ファンが訪れる場所となっている。 販売にとどまらず、市や観光協会、企業と連携したキモノイベントの企画や、学校帰りに着物体験ができる「放課後キモノフォト」なども展開している。伊勢崎の伝統織物である「伊勢崎銘仙」の魅力を多角的に発信し、伝統と現代を結びつけながら中心市街地に新たなつながりを生み出すキーパーソンの一人。
大手町において、歴史ある大谷石の蔵をフルリノベーションし、本格フレンチバル「ル・クラージュ」が2025年11月にオープンした。重厚さと温もりをあわせ持つ石蔵の独特な空気感を活かし、バルスタイルで気軽に楽しめるレストランとして整備されている。街中に眠る遊休資産を現代の用途へと再構築することは、失われつつある歴史的な景観や建造物を後世に引き継ぐだけでなく、エリア全体の回遊性を高める大きな価値を持つと思う。既存のストックを賢く活かすこうした取組の一つ一つが、まちなかに持続的な賑わいと新たな人の流れを生み出していくと思いたい。
伊勢崎駅前のシンボルロードにおいて、歩道部分の仮舗装が行われた。東側の最大幅員が9.5mに及ぶゆとりある空間が確保され、これはオープンテラスや飲食スペース等の利用で有名な国内外の通りと比べても十分な広さである。本格的な整備の完了はまだ先となるが、歩道としての全容が姿を現したところである。今後はこの場所をどのように活用していくのか、どのような使い方をしてみたいのかについて、多くの人の声を集めていくことが求められる。そこから生まれるアイデアをもとに、積極的な挑戦を引き出すことができるかどうかが、この街の未来に繋がる試金石の一つとなる。
伊勢崎駅前のマンション一階の一室が美しくリノベーションされ、新たな活用が始まった。re:isesakiと言う有志によるプロジェクト。街の玄関口に位置する場所で、こうした前向きな挑戦が動き出したことは非常に心強い。この新たな試みを温かく見守り、力強く支えようとする支援のプロジェクトも立ち上がっている。地域の未来を切り拓くこうした好意的な動きが一つでも多く生まれ、それが街全体に広がっていくことを期待し、自分には何ができるのか考えたい。
伊勢崎市はデジタルクリエーティブ人材の育成を目指し、県が開設した育成拠点「TUMO Gunma」の初となるサテライト施設「TUMO BOX」の整備を進めている。市中心部の「大手町パティオ」に隣接する古民家を改修し、2027年度中の開業を予定している。市が計画する周辺のにぎわい創出に向けた新拠点との相乗効果により、地元産業の振興や中心市街地の活性化がさらに図られることとなるだろう。街中の新しい流れやその担い手たちとしっかりと手を取り合い、この地域に豊かな活力と希望を生み出す場となるよう、誠実に取り組んでいかなければならないのだろう。
伊勢崎市大手町に2025年4月に開館した「くわまるプラザ(保健センター)」は、総工費約26億円をかけて整備された。本来は保健センター機能や子育て支援機能、健康に関する情報発信を担う中核施設である。館内には多世代交流や学習の場となるオープンスペースが設けられており、現在では自習をする多くの学生たちが集まる賑わいの空間となっている。行政の主要な機能が中心市街地に配置されたことで、若い世代が日常的にまちなかへ足を運ぶ新たな風景が生まれている。
大手町にドラッグストアのコスモスが2024年にオープンした。この場所は、もともとは4階建てのデパート「田原屋」があり、その後は結婚式場が営業していた土地である。十分な面積の駐車場を備えており、訪れる客の多くは車でやってくる。全国の中心市街地でドラッグストアの出店が続いており、身近な場所で日用品が買えることは地域に暮らす人々の生活を支える効果がある。一方で、車の利用が増えることや街の景観への影響を考えると、良い面と難しい面の両方がある。これらは民間による自主的なまちづくりの動きであり、街のあり方を考えるうえでの重要な事例となる。
2025年4月から、伊勢崎駅前インフォメーションセンターの運営は合同会社ISESAKI LOVERSへ業務委託されている。民間委託に併せて開設時間の延長が行われたことで、多くの学生が勉強のために利用する場所として、さらにまちづくりにおける情報交換の場所として活用が進んでいる。また、駅前広場でイベントを行う際のもう一つの拠点としても機能している。受託者は自主的なまちづくり活動にも積極的に取り組んでおり、国内最高気温を記録した41.8℃のオブジェもその一つである。猛暑の時期を迎えて多くのメディアが取材に訪れるスポットとして、市の情報発信の場ともなっている。
高校生や大学生が中心となって活動するNPO法人アスワードは、街中に眠る空き家を改修して新たな拠点を整備している。この空間は、若い世代や地域住民、外国にルーツを持つ人々が気軽に集い、世代や国境を越えて交流できる温かな居場所となっている。この拠点をベースに展開される活動は多岐にわたる。歴史探索と清掃活動を融合させた「境まちなか歴史探索クリーニング作戦」では、ガイドを聞きながらエリアを巡りつつゴミ拾いを行い、分別学習を通じて地域ルールを共に学んでいる。 近隣のモスクと連携した多文化共生への取り組みでは、外国人住民も招き入れて一緒に汗を流し、地域の一員としての連帯感を育んでいる。 活動の後半に開催される縁日やキッチンカーが並ぶお楽しみ空間では、多世代と多文化が笑顔でつながる賑わいが創出されている。
伊勢崎駅の構内にある自由通路では、新たに大型ビジョンが設置され、街の情報を発信する新しい窓口となっている。北口側の出入り口付近には、親しまれている駅ピアノの横に、約一坪の出店ブースである「ISESAKI TINY SHOP」が設置された。ここは将来的にまちなかでの開業を目指す民間事業者を応援する実践型のチャレンジショップであり、新しいビジネスや試みに挑戦するための実験の場として、駅を行き交う人々に新鮮な驚きと出会いを提供している。
伊勢崎駅の周辺では、市のPRキャラクター「くわまる」と市の花4種がデザインされた可愛らしいカラーマンホール蓋を見ることができる。駅のすぐそばにある駅前インフォメーションセンターでは、このデザインをあしらったマンホールカードが無料で配布されている。実物のカラーマンホールを探しながら駅周辺を歩く楽しみがあり、多くの収集家からも注目を集めている。


伊勢崎市喜多町のシェアオフィスを拠点に活動する地域おこし協力隊の山田尚輝隊員は、将来のカフェ開業に向けた取り組みを進めている。この場所を活用した試験営業を通じて、地域の人々との対話を重ねながらメニューや店舗運営の実践的な検証を行っている。まちなかに新たな賑わいを生み出すための挑戦が始まっている。
JR伊勢崎駅の北口から徒歩数分の喜多町において、「つむぎ日本語学院」の新校舎が整備された。この施設は日本語の習得や生活指導を通じて外国人の学びを支える重要な教育拠点となっている。伊勢崎市は北関東有数の製造業が集積する街であり、群馬県内で最も多くの外国籍住民が暮らす地域でもある。産業現場を支える外国人にとって、日本語教育や地域社会への適応を担うこうした拠点の存在は、持続可能なまちづくりにおいて欠かせない役割を果たしている。
南池袋から始まった「Cleanup Coffee Club (CCC)」の活動が昨年度から伊勢崎市でも展開されており、音楽の一日プロジェクト(代表:石原明美)が主催している。活動では、伊勢崎神社を拠点としながら、参加人数にかかわらずゴミ拾いが行われている。清掃活動の後には、温かいコーヒーを飲みながら参加者同士で和やかに談笑し、地域のつながりを深める交流の場が育まれている。こうした街中での地道な活動を通じて、一人ひとりの顔の見える関係がしっかりと育まれていくことが、大型商業集積が広がる郊外とは一線を画す、まちなかならではの魅力になると考えている。
伊勢崎市のまちなか地域おこし協力隊員である一宮崇徳氏が中心となり、「伊勢崎駅前アニメソング盆踊り」が開催された。伝統的な盆踊りとポップカルチャーであるアニメソングを融合させたこの試みは、従来の枠にとらわれない斬新な切り口で駅前空間に大きな活気をもたらした。ありきたりな言葉ではあるが、若い世代をはじめ多様な人々を巻き込みながら、これまでにない新しい伊勢崎の魅力を力強く生み出している点に大きな価値があると思う。 当日は、Mr.秋葉原ササキチ氏と日本舞踊家・振付師の孝藤右近氏を中心に繰り広げられたステージに集まる人々が、まさに熱狂の渦に巻き込まれていた。会場がアニメソングで一つになり、老若男女問わず、日本人も外国人も一緒になって心から楽しむ光景が広がっていた。
熱狂の一晩が明けた翌朝、会場前でTikTokの撮影に臨む孝藤右近氏らの姿があった。撮影のお願いにも快く応じてくださり、その温かな人柄が印象的であった。氏は浅草での街づくりにも深く取り組んでおり、伝統芸能の枠に安住することなく、アニメという現代のコンテンツと伝統文化を大胆に融合させている。その挑戦は、世界へと通じる独自の文化を創り出している。特筆すべきは、そうした新しい試みに挑みながらも、ベースにある伝統的な盆踊りをはじめとする文化に対して深いリスペクトを常に持っている点にある。こうした本物のプロフェッショナルが表現活動を行い、人々を引きつける空間としての駅前空間。そのような魅力に満ちた場を、これからのまちづくりに関わる私たちが緩やかに目指していきたいものである。

【まちあるき私的指標】
 本スコアは、実際に歩いた際の実感に基づく個人の主観的な評価です。
 歩行空間の質:★★☆☆☆
 滞在の快適さ:★★☆☆☆
 街並みの活力:★★☆☆☆
 官民の繋がり:★★★★☆
 都市の物語性:★★★★☆

【都市診断:5つの私的指標の解説】
 歩行空間の質:道の広さや安全性。誰もがストレスなく歩ける環境か。
 滞在の快適さ:居心地の良さ。ベンチやポケットパークなど、留まりたくなる仕掛け。
 街並みの活力:1階部分の質。街に開かれた店舗、持続的な賑わい。
 官民の繋がり:連携の質。道路と私有地の一体感、空間を使いこなす。
 都市の物語性:ストーリー性。歩くことで感じる街の歴史や深み。

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