草津町|車を締め出して日本一を手に入れたまち|まちある記040

湯畑へ向かう坂道を歩みながら下りてゆく。
温泉資源を宝として磨き続けた果ての地に、
文人が愛したこの湯治場は今も生きている。
行政が主導した湯畑の再整備という転換点、
御座之湯と広場を生んだ公共の強い意志で、
伝統の湯治場が世界的観光地へと変わった。
洗練された新しい店舗の隣に休業店が続く、
清濁を併せ呑む混沌こそがこの街の美しさ、
新旧の落差が生む鮮烈な魅力に目を見張る。
細い路地を車は通れず歩く者だけが主役だ。
歩行者の主権を路地の構造が静かに語って、
空間を余すところなく使い切る店が連なる。
西の河原へ続く路地に食べ歩きの湯気立つ、
湯客の足音と湯気が狭い路地の奥まで満ち、
観光誘客の深みへ向き合い続ける人がいた。
歩行空間の徹底した質が世界水準を示して、
自らが去っても動き続ける仕組みがここに、
湯畑の中心でまちづくりの核心を思い知る。


2025年4月にバリアフリー化を含むリニューアルが完了したバスターミナルで、鉄道網の無い草津温泉における交通の結節点であり、街の玄関口とも言える施設。乗降口や外観は魅力的であるが、内部の機能についてはいささか寂しい。町役場が隣接。


平成27年に町立図書館を移設、温泉資料館とあわせてリニューアルオープンした温泉図書館が、バスターミナル3Fに開設している。蔵書数は約47,000冊で、平日のこの日は地域住民の利用が多い様であったが、週末の風景はどうなっているのか。


バスターミナルの3Fにあることを除けば、極めて一般的な図書館の風景。個人用スペースも面積の割には充実しており、読書する地域住民の姿も多く見ることができた。バスを待つ間に利用できる、との文句も見かけたが、観光都市草津で、バスを待つ時間を図書館へ誘う意義はあるのか。


温泉街の入り口にある国道と町道の交差点の立体化を目的として2023年に整備された、町の新たなシンボルの一つ「草津温泉門」。歩行動線の流れからは外れているため、多くの誘客を期待することは難しい施設であると思うが、バスターミナルの裏手側になる中央通りへ連なる一つの核として機能を期待されているものと思われる。


草津温泉門からバスターミナル方面へ続く中央通りの街路。走路及び歩道の高度化が完了し、ウォーカブルと回遊性を意識しているものと思われる。写真右側には空き店舗が残っているが、幾つかの場所ではすでに空き店舗がリノベーションされており、動き出している様子が窺えた。


観光拠点となる草津バスターミナルから徒歩2分という好立地にありながら、昭和53年の開店以降、地域住民の台所として機能し続けている、スーパー「もくべえ」。もう一つの小売店、スーパー大津草津店が2025年に閉店し、その存在価値は高まるばかり。


一般家庭の内風呂が一般的では無い頃から地域に存在してきた無料温泉(共同浴場)の様子。観光客も多様化(多国籍化)する中で、利用者のモラルが低下し、現在は区民以外は利用不可、利用時間は制限、などルールを厳格化する運用が行われている様であった。観光地の難しい点である。


上述の共同浴場の一つ「地蔵の湯」へ続く街路。路上の所々に拠点を案内するパネルが埋め込まれており、一般的な看板形式での観光案内とは違い、情報量は少ないものの、その視認性の高さと独自性に感心した。


草津観光の新たな拠点整備を目的として草津町が中心となって進め、2025年に完成した伝統的な共同浴場の一つ「地蔵の湯」。足湯や顔湯など気軽に体験できるスペースを拡充し、多様な温泉体験ができる空間として整備されている。


大滝乃湯周辺を流れている「湯川」。源泉が流れており、温度は約50度で強酸性であることから、魚なども生息できず、人が入ることも難しいと思われる。他の温泉地とは違う、土地の力がむき出しになっている風景が、湧出量日本一の温泉地としての力を表す。


湯畑から西の河原へ至る、西の河原通りの様子。配送の車両等が通行することもあるが、歩行者は明らかに迷惑そうな顔をしており、元来の町の姿とはこの様なもので良いのでは無いか、と思わされるほど、自動車が無かった頃の賑わいの姿を思わされる風景。


西の河原通りから、白根神社へと続く参道。白根神社は草津温泉を発見したと言われる日本武尊を祀る神社であり、敷地内は背の高い石楠花が生い茂る神秘的な空間であった。


西の河原通りで温泉まんじゅうの試食を進める名物親爺なのであろう、達者な口上で通りゆく人にまんじゅうの試食を勧めていた。同行した妻によると、以前は1個の試食であったとのことで、物価高騰の波はこんなところにも押し寄せているのだと痛感する。


観光地としてではない歓楽街としての草津の姿を垣間見る路地の姿。コロナ禍を経て現在においてもまだ、このような路地を守り続けている飲食店主達の心意気に対して、(私はこの様な店舗では恐らく酒を飲むことは無いだろうが)心から応援のエールを送りたい。


新聞社調査でも日本一を獲得する知られた風景。写真右奥はホテル一井。草津湯畑の管理や源泉の管理供給は、草津町役場温泉課が業務を担当している。全国でも別府市、豊岡市(城崎温泉)、熱海市など温泉課を有する自治体は少ない。


御座乃湯2Fの休憩室から湯畑方面を見た風景。右手に広がるのは湯路広場で従来の駐車場を廃し、イベントスペースの確保を目的として2014年に整備されたもの。車両を湯畑中心まで入れ込ませないことで、ウォーカブルと活性化を両立させた好例だと言える。


湯畑から流れる源泉は御座乃湯の辺りではまだ温度が高く、適度な距離まで離れることで、適温かつ高濃度の源泉が楽しめるようで、湯畑から少し奥に入った場所には、こうした高級旅館が軒を連ねており、街区の趣も多少変わってくる。


湯畑等では多くの従業員が働いているものと思われるが、そうした従業員向けの安価な住居を町営住宅として整備している模様。湯畑から離れた北側の斜面にはこうした公営住宅が何軒も並んでおり、そこには多くの従業員が暮らしているのだろうと推測する。


車両通行が著しく不便な中心部を取り囲むように、車中心のエリアが広がっているが、こちらは他の自治体と何ら変わることなく、空き店舗や空き家が未活用のまま取り残されている。誘客がされない自動車交通中心のエリアにおいては、さすがの草津町でも問題は解決していない様子。


草津温泉において、湯畑と並ぶ拠点となるのがこの西の河原公園。バスターミナルから西の河原公園奥の露天風呂まで徒歩15分ほどの距離であり、バスターミナルを拠点として、通りの店舗を眺めながらこの公園を目的地に散策する観光客をターゲットに、街の整備が進められている。

【まちあるき私的指標】
 本スコアは、実際に歩いた際の実感に基づく個人の主観的な評価です。
 歩行空間の質:★★★☆☆
 滞在の快適さ:★★★★☆
 街並みの活力:★★★★★
 官民の繋がり:★★★★★
 都市の物語性:★★★★★

【都市診断:5つの私的指標の解説】
 歩行空間の質:道の広さや安全性。誰もがストレスなく歩ける環境か。
 滞在の快適さ:居心地の良さ。ベンチやなど、留まりたくなる仕掛け。
 街並みの活力:1階部分の質。街に開かれた店舗、持続的な賑わい。
 官民の繋がり:連携の質。道路と私有地の一体感、空間を使いこなす。
 都市の物語性:ストーリー性。歩くことで感じる街の歴史や深み。

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