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33話 コレクション⑨ ティソ シデラル ブルー

 ティソのシデラルというモデルは、1971年に発表された「シデラルS」という時計を現代風に解釈して作り直されたモデルだ。どこがオリジナルのアイデンティティなのかというと、クッションケース、カラーリング、そしてクリップシステムと呼ばれるストラップの装着方法の部分。この辺は70年代の時計の特徴らしいが、70年代はまだ小さな子供だったのでよく分からない。
 
 よってレトロ顔と言われてもピンと来ない。ただよくよく眺めていると、ラグを持たないケースは、オリエントの『クロノエース』と似ているといえば似ている。この時計は文字盤にレガッタカウントダウンメモリが搭載され、黒文字盤に白、青、赤、緑(ベルト色によって若干変わる)のメモリがあるから、非常に派手である。ティソの中でもカジュアルに全開に振った時計だから、仕事には着けて行けない。
 
 このシデラルを知ったのは、YouTubeチャンネルの「ロック福田の腕時計魂」。ティソを訪問した福田氏とアシスタントの丸山さんが3色のシデラルを紹介してくれた番組だ。
 シデラルはベルトと文字盤の色で分けられた黄色、赤色、青色の三色が発売されている。「どれも素敵で迷ってしまいますね」と素敵な表情でお言葉を発せられる丸山さんに福田氏が「そういうときは全部」と言った言葉に刺さってしまった。

 ティソ大好き人間なら、3本買っちゃう人もいるだろう。何しろ、この時計の値段は14万4,100円という信じられないプライスタグ。
 ちなみに性能を列記しておくと、サイズは41mmと大きすぎず、小さすぎずの大きさ。文字盤ブラックで色によってメモリの配色が異なる。バックスケルトン(いわゆる裏スケって奴)ケース素材はフォージドカーボンで裏蓋はスチールでねじ込み式。これによって、裏スケなのに300mの防水性能をもつという暴れっぷり。自動巻きでなんと80時間パワーリザーブをもつ。これはすごいことで、他のメーカーなら100万円級の時計に載せるべきもの。それをティソは14万円程度の時計に与えているのだ。(ありえねえ)おまけにチタン合金製ニヴァクロン製ひげぜんまいだから、磁気に強いという性能まである。
 
 欲しくなった私はいつものA時計店へ。ここはティソも取り扱っている。シデラルはあります?と聞くと「赤」と「黄」が置いてあった。
 実機を見るとますます欲しくなる。値段も高くないから決断も早い。ただ、悩むのは色。ロック福田氏のように全部買うという選択肢はさすがに私にはない。
 ちなみに1970年代に出たシデラルSは「黄色」一択。レトロ調を重んじる時計愛好家は迷わず「黄色」を選ぶらしい。だから黄色がよく売れる。品切れも多いから、今日、実機があるのは奇跡かもしれない。
 丸山さんは「赤」がいいと言っていたような気もした。実際に丸山さんに「赤にしたら・・・」と言われたら、美人に弱い私は「はい・・・」と調子こいて買ったかも知れないが、残念ながら丸山さんはいない。
 
 私が選んだのは実機がない「青」。ブルーのラバーベルトの派手さが夏にぴったり。これは白いジーンズに白いTシャツ姿にこのブルーのシデラルを左手に巻くとおっさんでも格好いい。背景にヨットやクルーザーがあったら絵になる。ちなみに「青」だけ、ケースの黒いカーボンにブルーのマーブル模様が加わるという特別感。黄色と赤色は同じケースで黒一色だから、青だけ特別。
 
 よってシデラルは黄色と青色が人気なのだ。私は青を買うことにした。実機がないから注文となる。ティソは大衆ブランドで十分に供給されているから、2週間もしないうちに入荷して私の手元に来た。
 
 使ってみると「軽い」「スタイリッシュ」「針を動かすときの重厚感」「日付が12時でパチンと変わる」ところが高級感を感じさせていい。
 デメリットは「派手過ぎる」ことと、ラバーベルトの着け方。派手なのは承知していたし、アウトドア(しかも水辺の活動一択)にしか使わないからよしとしても、ラバーベルトの装着方法は不満だ。ラバーベルトに複数の穴が空いており、そこへ先端が丸くなった突起を穴にはめて2カ所で止めるのだが、これがスムーズにできない。突起部分が穴に入らないのだ。
 
 ラバーで伸びて穴も細かく開いているから、どんな人でもジャストフィットするとはいえ、毎回、突起を穴に入れるのに苦労する。入ったと思っても浅く、知らずに歩いているとベルトが外れることもある。最悪、地面に落とせば壊れてしまう可能性もある。実際にぽろっと外れて地面に落ちそうになったことがあった。幸い、2カ所目のティソのロゴがある部分のはめ心地はよくて、そこが取れないから腕から落下はしなかったが、これはいただけない。
 あと同じ穴に通すから穴がユルユルになってしまうだろう。ストラップは消耗品だから買い換えればいいと言うことだが、ティソでも専用のラバーストラップは高い。1万円するのだ。ラバーだから経年劣化でごわついたり、ひび割れしたりすることもあろう。そこがネックだ。
 ネガティブな意見も言ったが、スタイリッシュでレトロ風。性能は最新という時計が欲しければ、ティソのシデラルをお勧めだ。人とは被らないし、何よりも機械式なのに安いというコストパフォーマンスの良さは随一である。

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