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ドラマ版『ひらやすみ』 — 芝居と省略の美学

最近立ち寄ったブックカフェで、
ずっと気になっていたものの、読めていなかった
『ひらやすみ』の一巻をようやく読みまして。

こりゃ良い漫画だ、と最新刊まで読破。

NHKでドラマをやっていたと聞き、
しかも配信されてると聞く。

NHKなのに。
最近はNHKドラマでも配信されたりするんですね。

嬉しいことに、夜ドラ枠で15分の全20回。
さっくり見られる。妻と一緒に鑑賞スタート。

ということで、今回は、
ドラマ版『ひらやすみ』の感想をば。


【NHK公式】夜ドラ「ひらやすみ」
生田ヒロト、29歳、フリーター。 定職なし、恋人なし、普通ならあるはずの?将来の不安も一切ない、お気楽な自由人です。 そんな彼は、人柄のよさだけで、 仲良くなった近所のおばあちゃん・和田はなえから、一戸建ての平屋を譲り受けることに。 そして、山形から上京してきた18歳のいとこ・小林なつみと2人暮らしを始めました。 彼の周りには生きづらい“悩み”を抱えた人々が集まってきて……。

まず、そもそもの評価として、
このドラマ、相当原作をリスペクトした上で、
うまくドラマの構成に落とし込んで、
省略をしているなという印象でした。

さすがNHK。すごく誠実。

特筆すべきは、まずキャスティング。
岡山天音と森七菜の絶妙なコンビ。

まず、岡山天音。

彼って、器用じゃない印象だったんです。
笑いのカイブツ』で熱演と言われたけど
どちらかというと、私は感心できなかった。

基本的にいわゆる「熱演」は、
芝居とは最も離れた位置にあると思っています。

しかし、この作品で印象が変わりました。

あけすけに明るくて、能天気に見えながら、
心の中の闇や何か熱い核を持っているヒロト
という人物を、「トーンの差異」と、
ぎこちない会話の間合いでうまく演出していました。

ちなみに演出というものは、
演出家以外もやるので、お間違えなく。

それから森菜々。

彼女にはこういう役がすごく似合いますね。
一言で言うと田舎くさい役。
『まかないさん』の役に近いけれど、
あれよりも自意識が強くて、ガサツな人物造形。

身体表現が得意なんでしょうね。
なつみちゃんにしか見えませんでした。

ただ、彼女の芝居は、
以前から表情で逃げる節があります。
もう少し、指先で芝居してもいい。
せっかく身体の使い方が上手いのに。

ヒロインは、吉岡里帆。

りほぽ。大好き。りほぽ〜。

彼女は、よもぎ役になる必要がない。
でも真面目なんだろうなぁ、
原作に忠実であろうとしてました。

どんな衣装を着せようが、
どんな芝居をさせようが、
吉岡里帆は吉岡里帆の仮面から
逃れられないし、逃れる必要もない

この辺りを、演出家は果たして自覚的だったのだろうか?

それに彼女は、そもそも身体表現、
特に喉の使い方が得意じゃないと思う。
だから、特に癖の強いよもぎ役を
原作通りに再現するのは、無理。

この作品を、良作たらしめているのは、
脇を飾るメンツの実在感でしょう。

あかり役の光嶌なづな。

正直存じ上げませんでした。
森七菜に喰らいつくように、
方言を駆使して存在感を放っていました。

そもそも、ひらやすみという作品は、
誰もが主人公になる群像劇なので、
この存在感の方向性は、全く正しい。

これは技術スタッフ陣、特に照明が、
彼女と森七菜に大きな差異を作らずに、
ライティング設計をしていたことが、成功でしょう。

ヒデキ役の吉村界人。⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

この役柄はかなり難しかったと思います。
なぜなら、原作でもこのキャラクターだけ
ギャグ要素の強い存在で描かれていて、
実在感が、作中で最も薄い存在です。

まずは見た目に近いキャスティングをした
制作陣の勝利を宣言しておきます。

が、役者自身が、実在感の薄いキャラクターに
実在を与えていた点こそ、驚きです。

それはギャグの芝居ではありません。

口を細かく動かすんですよね。
めちゃくちゃ言葉を発しづらそうにする。

あぁこの人は、「ヒデキの過去」を
考えたんだろうな、と感じました。
それを、口で表現した事に感動しました。

口ごもる」という動作だけで、
ギャグの悲しさや、人柄の優しさなど、
多くのことを表現していました。

これが身体表現で、これが映像表現だと思いました。

ばあちゃん役の根岸季依

言うまでもなく。
この人にこういう役をさせるのは、
樹木希林にお婆さんをさせるのと
同じくらい安心感があるますね。

と、珍しく役者について書きました。
たまには、こういう視点で、
ドラマを見るのも楽しいものですね。

衣装

そういえば、この作品の森七菜の衣裳
すごくなかったですか?
原作者が毎回デザインしたのか?
ってくらい、実在感がありました。

結構細かく衣装が変更されるんですけど、
衣装で違和感を感じないというのは、
すごい事ですよ。

そりゃスーツとか、作業着とか、
型が決まっている服装の人物なら、
そんなに苦労しないでしょう。

でも今回は、
芸術大学に通う田舎出身の1年生が、
徐々に学内で人と接点を持ち始めて、
少しずつ明るくなっていく人物造形なので、
難しかったと思います。

けど、代わりにあかりちゃんの衣装は
可愛すぎましたね。ヘアメイクも同じ。
あかりちゃんは可愛すぎた。
でも、森七菜に存在感として対抗するには、
これくらいしないと仕方ないかなとも思いました。

本題

で、ここからが本題なんですけど。
(助走長すぎでしょ!!)

この作品、最初に挙げた通り、
15分20話で収めるために、省略してます。

それが、二人の人物を削除した点。

一人は吉岡里帆の恋模様の相手。
でもそれを描かなかった。
あくまで吉岡里帆は、
平屋生活の中で現れる気になる相手。

ひらやすみを、
あくまで平屋の日常ドラマとして
描くための省略。大勝利。

二人目はあかりちゃんの恋の相手。
同様の理由で省略されています。
あくまで平屋を中心に物語を
展開させるために、意図的に存在を外した。

これが下手な脚本化をすると、
原作ファンへの目配せとして、
一瞬だけその存在を匂わせたりする。

それをしなかったことが、すごい。

脚本家、もしくはプロデューサー、
誰の手腕かは計りかねますが、
「完全に削除」したことで、20話がまとまった。
この省略こそ、評価される根本的要因だと思います。

ちなみに省略だけでなく、
巧みに時系列を処理している点も、
美学を感じる点でした。

脚本の時点で、この作品は、
勝利が約束されていたと言えるでしょう。

だからこその問題は、
シリーズ2が期待されている点です。

重要人物を二人削除してるので、
やるには、その二人を登場させるところから。
でもそれをすると、今回のひらやすみで
満足した視聴者が、離れていくでしょう。
平屋物語じゃなくて、恋愛ドラマになるので。

難しいですね。
私はここで留めて欲しいなと思います。

おしまい

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