「実家みたい」な家に私たちは住むことを決めた
「実家みたい……」この家に最初に足を踏み入れた時、夫が感慨深そうに呟いた。
息子が小学生になる前に購入した我が家は築年数が私の年齢くらいの中古住宅。
不動産屋さんに連絡を取り、最初に内見に訪問した時は前の住人であるご夫婦が引っ越しの準備で忙しい中迎え入れてくれた。ご夫婦は、私たちくらいの息子さんがおり、息子さんの近くに引っ越されるのだという。
うちは息子が一人っ子だ。この先も、家を継ぐ人はいない。だから新築の家はいらないし、ローンも定年前に払い切れる価格の家にしようと決めていた。
そして、この家は謎の増改築が施されているが、再び内見に来たとき、なぜか安心した。
その日の帰り道、夫は「ここにしようか」と言った。
夫の「実家みたい」という言葉は今でも覚えている。
確かに夫の実家は訪問すると、とても安心できる場所なのだ。ぴりりと張り詰めた空気だった私の実家とは違う。
そんな空気で息子を育てたい。私はそう思った。
何より、バス停が近く交通の便がよく、それでいて静かなところが気に入った。
日当たりの良い2階の6畳の洋室を子供部屋に、反対側の4畳半の和室は私の書斎にすることにした。
夏は灼熱、冬は極寒。断熱性なにそれと言いたくなる空間だが、私は気に入っている。私好みにカスタマイズしたいが、うまくできる自信がなく5年目だ。
何よりこの家に引っ越してきて、息子は好きなだけブロックを広げたりして遊べる部屋ができたことを喜んでいた。2DKのアパートから引っ越したこの家は、世界が広がった気がした。
ベランダからは海も山も街も見える。夏には花火だって見える。古いけれどとても贅沢な空間なのだ。
私は、気を張り詰めなくてもいい部屋で、仕事や執筆をしている。静かな空間、これをどれだけ望んでいただろうか。
家は古い。でも、穏やかで居心地がいい。
気を張らなくていい空気の中で、私は書き、息子は遊び、夫はくつろぐ。
そんな時間が積み重なっていくなら、この家で十分だ。
苦手な掃除も……なんとか頑張ろう。

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