Photo by
taketakeshiki
月の輪郭
「明日のパン買い忘れた……!」
夜七時。私はすーっと青ざめた。
この時間になって、明日の朝食のパンがないことに気がついたのだ。
焦る私をちらっと見て息子は「ぼく、お留守番する」とだけ言い、すぐに視線をSwitchに戻す。四年生、少しの留守番ならできるようになった。
彼に留守番を頼み、私は外に出た。
近所の夜は静かだ。
街灯や家の灯りが道をぽつり、ぽつりと照らし、居酒屋の提灯がぼうっと光る。
しんとした冷たい空気が私の頬を撫でていく。
空を見上げると、星がぽつ、ぽつと瞬く。
昔――小学生の頃、理科の授業で先生が星座盤を見て「目に見える星は、すごく遠くにあるだけで大抵太陽より大きい。その大きさを知った時、人間がどれだけ小さい存在かと怖くなった」と話していたのを思い出す。
実際、その後図書室で図鑑を見た時、宇宙の雄大さより怖かったことを覚えている。
そんなことを思いながら近所のスーパーでパンを書い家路を急ぐ。
帰り道、また空を見上げると曇がかかり始めていた。
雲に隠れた月がぼうっと浮かんでいる。その輪郭は、あいまいだった。
空は見る人の心を映すように思える。
私の心も曖昧になっているのだろうか。いや、人の心ははっきりしてる日もある、曖昧な日もある。
たぶん、そんなものだ。
いつしか私は空を見て、写真に残すのが趣味になった。
その時の心を、残しておくかのように。
カメラを取り出し、曖昧な月を写真に残した。
家に帰り着くと、息子がいつも通り待っていた。
家の明るさが、妙に目に染みた。

いいなと思ったら応援しよう!
いただいたチップで少し豪華なコーヒー飲みます!