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オンラインゲームのヒーラーだった私は、今は文章でヒールを撃っている

20代の頃、仕事以外の時間をオンラインゲームに費やしていた時期がある

仕事が終わり、入浴を済ませるとPCの電源をつけてゲームにログインする。
そこには気の強そうな銀髪の女性キャラ。職業はヒーラー。
当時のもうひとりの『私』である。

ログインボタンを押した瞬間、私はもうひとりの私になる。ここでは現実のしがらみは何もない、ただひとりのヒーラーキャラとして存在できる。
それが、私にとっては何より楽になれる時間だった。
ただ、もうひとりの私にも悩むことはあった。中身は人間だから、対人関係からは逃れられない。

パーティーを組み、ダンジョンへ行く。

「私はPOTポーションがぶ飲みするから、後ろは任せて突っ込んでー!」

と、私はすかさずチャットと回復魔法ヒールを飛ばす。
皆が戦っている間、背中は守る。ヒーラーの矜持だ。

仕事のストレスも、ゲームをやりながらスカイプ通話をし、話していると忘れられた。
日本各地にいるフレンドとゲームの話、仕事の愚痴、たわいない話をして楽しんだ。

狩りが終われば回復薬の材料の草むしりに行く。黙々とひたすら材料を集める。ストックを作っておく必要があるからだ。
そして、対人要素もあるので、草むしりの最中、通りすがりの見知らぬ相手にやられるのはよくあることだった。

回復のタイミング、スキルに最適なボタン配置。
当時、同じゲームをやっている人のブログを読み込み研究し、実践した。

(あの敵のスキル詠唱バーが、8割くらいになったらヒール詠唱始めればちょうどいいな)

常にそう考えながら戦っていた。その真面目さを、もう少し現実にも向けられたらよかったのに。
好きなことは突き詰めたい。昔からそんな人間で、今も本質的には変わっていない。

当時のフレンドも、私がゲームを辞めてその後どうしているのかはわからない。
あれから15年くらい経つだろうか。
どこで、どうしているだろうか。さすがに、noteで再会することはないだろうけれど。

今の私はオンラインゲームはやらないが、あの頃の思い出は、黒歴史というより、私の1ページなのだろう。

今は、ゲームから文章で遊んでいる気がする。スキルを撃つように文章を奏でるように書いている。
たぶん、もうひとりの私は、今も私の中でヒールを撃っている。そんな気がする。




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