【28卒】旭化成(3407)——売上3.07兆円・純利益+17.6%をIRで読み解く就活戦略
【徹底解剖】旭化成(3407)——売上3.07兆円・純利益+17.6%、ヘルスケア×住宅×マテリアル3軸の総合化学コングロマリットの就活戦略
はじめに
旭化成を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、旭化成に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは旭化成の部長クラスより、自社の事業構造を整理して語れるようになる。
この記事は、ぜひ何度も読み込んでほしい。
ここに書いてあるのは、ネット上にあふれている「旭化成ってどんな会社?」のまとめではない。有価証券報告書、決算短信、決算説明会要旨、財務ハイライト——旭化成のIRが開示する一次情報を、投資家目線で読み解いて就活に転用した内容だ。
この記事を最後まで理解できれば、あなたは旭化成の部長クラスより、自社の事業構造を整理して語れるようになる。役員面接で「弊社のことをよく理解されていますね」と言わせる材料は、ここに全部入っている。
専門用語は出てくる。3領域経営(ヘルスケア×住宅×マテリアル)、ヘーベルハウス、サランラップ、Calliditas Therapeutics、プラノバ、LifeVest、エッセンシャルケミカル、エレクトロニクス事業、ハイポア(セパレータ)、Daramic、ZOLL、イオン交換膜法食塩電解、カーインテリア、パフォーマンスケミカル、コンフォートライフ、D/Eレシオ、事業構造改善費用。読みづらく感じる箇所もあるはずだ。それでも、分からない言葉を一つずつ調べながら、辛抱強く読み進めてほしい。1時間かけて読む価値はある。それが、学歴の壁を内定で壊すための最良の自己投資だ。
旭化成株式会社——「ヘーベルハウス」「サランラップ」「ジップロック」「キュプラ」「ベンベルグ」を擁する、日本最大級の総合化学コングロマリットだ。「ヘルスケア」「住宅」「マテリアル」の3領域経営で、化学・住宅・医薬品を1社で持つ稀有な構造を実現している。マイナビ・日経の人気ランキング常連で、就活市場でも別格のブランド力を誇る。
ただし「化学の老舗」「ヘーベルハウスの会社」というブランドストーリーだけで志望動機を語っても、面接官の心は動かない。なぜなら、それは「結果」であって「構造」ではないからだ。
この記事では、旭化成の3セグメント(ヘルスケア・住宅・マテリアル)がどう連動して3.07兆円の売上を生んでいるか、なぜFY2026で売上+1.2%・営業利益+9.1%・純利益+17.6%・自己資本比率46.3%→50.5%という財務改善を実現したのか、工藤幸四郎社長が推進する3領域経営の本質、Calliditas Therapeutics買収・Daramic売却の戦略的意義、5期連続増配の株主還元戦略——投資家目線で構造を解剖する。
第1章 旭化成は何に賭けているのか
1-1. 2027年にROE9%、2030年に12%——階段が2段で置かれている
旭化成の有価証券報告書には、目標が2段階で書かれている。
まず3年後。
「投資成果創出による利益成長、構造転換や生産性向上による資本効率改善に加え、経営基盤のさらなる強化・活用により、『Diversity×Specialty』を進化させ、最終年度の2027年度には営業利益2,700億円、のれん償却前営業利益3,060億円、ROIC6%、ROE9%を目指します」
そして、その先。
「その結果として、高い利益成長と資本効率の向上を実現し、当社グループとして2030年近傍には、営業利益3,800億円、ROIC8%以上、ROE12%以上を目指します」
2027年度にROE9%、2030年近傍にROE12%以上。
2段階で置いているところに、この会社の現実的な姿勢が出ている。いきなり12%とは言わず、まず9%を通過点にする。
計画の名前も明快だ。
「2025年4月に発表した『中期経営計画2027~Trailblaze Together~』(以下、『本中計』)は、当社が目指す『持続可能な社会への貢献』と『持続的な企業価値向上』の2つのサステナビリティの好循環の実現に向けた、2025年度から2……」
Trailblaze——道なき道を切り拓く、という意味である。
グループの存在意義は、たった一文で書かれている。
「『世界の人びとの"いのち"と"くらし"に貢献します。』というグループミッション(存在意義)のもと、『健康で快適な生活』と『環境との共生』の実現を通して、社会に新たな価値を提供することをグループビジョン(目指す姿)として掲げています」
「いのち」と「くらし」。この2語が、旭化成の3つの事業領域——ヘルスケア(いのち)、住宅(くらし)、マテリアル(両方を支える素材)——をそのまま表している。
そして、「Diversity×Specialty」という言い方も独特だ。多様さと、専門性の掛け算。幅広い事業を持つことと、それぞれで尖ることを、両立させるという意味である。
1-2. 買うのはヘルスケアと海外住宅、切るのはケミカル
旭化成の直近期は、買う側と切る側が同じ年に進んだ。
買う側は、はっきり領域が指定されている。
「特に医薬と海外住宅については、M&Aを中心とした先行的投資から確実に利益を創出することで利益成長を実現します」
医薬と海外住宅。この2つが、M&Aで伸ばす領域である。
「先行的投資から確実に利益を創出する」という言い方に注目してほしい。すでに投資は済んでいる。次は回収する、という局面である。
投資額も明記されている。
「■設備投資・投融資 本中計の3年間の意思決定ベースの投資額は、ヘルスケア領域や海外住宅におけるM&Aの投資額を精査した結果、当初計画の1兆円をやや下回り、約9,300億円を見込んでいます」
当初1兆円の計画を、約9,300億円に引き下げた。理由は「M&Aの投資額を精査した結果」。
買う金額を、計画より減らしている。これは規律の表れとして読める。
切る側も、同じ年に動いている。
「2025年度においてはケミカル事業における事業撤退や設備停止に加え、ケミカル事業以外において、他社への事業譲渡や提携を進めました」
ケミカル事業で撤退と設備停止。そして他の領域でも事業譲渡。
この対比が、旭化成の事業ポートフォリオ改革である。
同業を次々に買い集めるロールアップとは違う。旭化成がやっているのは、領域をまたいだ資本の配り替えだ。素材で稼いだ資金を、医薬と住宅に移していく。
方向は明確に書かれている。
「2030年度に向けては各領域がほぼ同水準の利益目標を目指す形になり、それに合わせ、今後の成長投資はヘルスケア領域や住宅領域へのアロケーションを増加させます」
3領域の利益を、ほぼ同水準にする。つまりマテリアル依存から脱するという宣言である。
ただし、直近の設備投資はまだマテリアルが最大だ。
・マテリアル:1,870億円(感光性絶縁材料「パイメル」の生産能力増強、リチウムイオン電池用セパレータ「ハイ……」)
・ヘルスケア:370億円(ウイルス除去フィルター「プラノバ」の新紡糸工場建設)
・住宅:200億円
設備投資はマテリアル、M&Aはヘルスケアと住宅。手段が領域ごとに違う。
面接で使うなら、こう聞ける。「3領域の利益をほぼ同水準にするという目標について、マテリアルを縮小するのではなく、ヘルスケアと住宅を伸ばして追いつく形だと理解してよいですか」
1-3. 3つの領域、3つの異なる戦い方
旭化成の事業は、領域ごとに置かれた環境がまったく違う。有報はそれを別々に説明している。
マテリアル領域。
「Ⅲ『マテリアル』セグメント ●事業の方向性:『カスタマーオリエンテッド型』『ソリューション型』事業の拡大による持続的成長と他社との連携や外部リソースを活用した事業価値の最大化 ●注視する事業環境:DX・AI技術を支える半導体の市場成長、グローバルEV市場動向、米国の政策動向等の地政学的リスク、水素など低炭素社会実現に向け……」
半導体、EV、地政学リスク、水素。素材が置かれた環境は、世界の技術と政治の両方に揺さぶられる。
具体的な競争環境も書かれている。
「イオン交換膜法食塩電解は、米国の規制強化によるアスベスト隔膜法プラントからのプロセス転換や、インド・東南アジアでの電解プラントの新増設等で需要が高まるなか、競合他社の能力増強による競争激化が見込まれます」
需要は増えるが、競合も増設する。素材産業の典型的な構図である。
住宅領域。
「海外住宅事業は独自のビジネスモデルによる展開を通じた持続的成長を追求 ●注視する事業環境:国内の戸建住宅、不動産関連の市場動向、米国・豪州における景気や金利政策の住宅需要への影響」
米国と豪州の金利が、旭化成の利益を左右する。住宅ローン金利が上がれば家は売れない。日本の会社でありながら、見るべきは海外の金融政策である。
ヘルスケア領域では、外部との連携が進んでいる。
「事業開発、臨床開発における両社の知見を統合し、免疫・移植の周辺疾患領域での成長の可能性を最大限に追求します」
そして、旭化成には古くからの合弁の伝統もある。
「旭化成㈱(当社)/PTT Global Chemical Public Company Limited/合弁会社株主間契約等/PTT Asahi Chemical Co., Ltd./2008年3月24日締結」
「旭化成㈱(当社)/本田技……」
タイの石油化学大手、そして本田技研。相手の規模も業種も違う合弁を、長期にわたって持っている。
人についてのKPIも数値管理されている。
「主要KPIとしては、『従業員エンゲージメント(成長行動指標)』『ラインポスト+高度専門職における女性比率』『従業員エンゲージメント(活力指標)』を掲げています」
エンゲージメントを「成長行動」と「活力」の2つに分けて測っている。
28卒が入社する2028年4月は、中期経営計画2027(2025-2027年度)が終わった直後である。ROE9%に届いたかどうかの答えが出た後に入社することになる。
1-4. ROE8.0%——9%まであと1ポイント
旭化成の直近期のROEは8.0%。前期は7.4%だった。0.6ポイントの改善である。
1-1で見たとおり、2027年度の目標はROE9%。あと1ポイントの距離にある。
どこが動いたのか。ROEを3つに分解する。
ROE = 純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
「売って儲かる度合い」×「資産をどれだけ働かせたか」×「他人のお金をどれだけ使ったか」である。前期と当期を並べる。
・純利益率:4.44% → 5.16%
・総資産回転率:0.79回 → 0.75回
・財務レバレッジ:2.09倍 → 2.06倍
・ROE:7.4% → 8.0%
動いたのは純利益率である。0.72ポイントの改善が、ROEを0.6ポイント押し上げた。回転率は4.7%落ち、レバレッジもわずかに下がっている。
つまり、利益率の改善だけで、他の2つのマイナスを打ち消して余りある成果を出した。
1-2で見たケミカル事業の撤退と設備停止が、ここに効いている。利益率の低い事業をやめれば、全体の利益率は上がる。
一方、回転率の低下は投資の裏返しである。マテリアルに1,870億円、ヘルスケアと住宅にM&A——投じた資産は、まだ売上を生み始めていない。
では、ROE9%に届くには何が必要か。
レバレッジ2.06倍は、化学メーカーとして無理のない水準だ。ここを大きく上げる方針は書かれていない。
回転率0.75回は、投資が実を結べば戻る。1-2の「先行的投資から確実に利益を創出する」という一文が、まさにそれを指している。
そして純利益率5.16%は、まだ伸ばす余地がある。ケミカルの構造改革が続き、利益率の高いヘルスケアの比率が上がれば、自然に上がっていく。
2030年のROE12%以上という目標は、この3つがすべて噛み合って初めて届く水準である。
面接でROEを語るなら、ここまで分けて話す。「ROEが8.0%まで改善しました」で終わる学生と、「上がったのは純利益率だけで、回転率は投資中で落ちています。目標の9%まであと1ポイントですが、レバレッジは使わない前提なので、ケミカルの構造改革とヘルスケアの利益貢献がどこまで進むかが鍵だと見ています」と言える学生では、聞こえ方がまるで違う。
後者は、企業価値をどう上げるかを考えている学生として扱われる。そして、そういう学生は驚くほど少ない。
1-5. FY2026決算ハイライト(2026年3月期、日本基準)
旭化成が2026年5月12日に発表した決算短信から、最重要数字を確認する。
◆ 売上高:3兆745億円(前期比+1.2%)
◆ 営業利益:2,312億円(前期比+9.1%)
◆ 経常利益:2,304億円(前期比+19.1%)
◆ 親会社株主帰属当期純利益:1,588億円(前期比+17.6%)
◆ 営業利益率:7.5%(前期7.0%から0.5pt改善)
◆ ROE:8.0%(前期7.4%から0.6pt改善)
◆ 自己資本比率:50.5%(前期46.3%から大幅+4.2pt改善)
◆ 1株当たり当期純利益:116円97銭
◆ 1株当たり純資産:1,539円66銭
◆ D/Eレシオ:0.46(前期0.62から大幅改善)
◆ 配当:年42円(前期38円から+4円増配、5期連続増配)
◆ 配当性向:35.9%
売上+1.2%・営業利益+9.1%・経常利益+19.1%・純利益+17.6%——増益率が増収率を大幅に上回る「利益率改善型成長」だ。さらに、自己資本比率が46.3%→50.5%へ4.2pt改善したのが今期の隠れた最重要トピック。Daramic売却益と純利益積み上げで財務体質が劇的に強化された。
1-6. FY2027業績予想——「営業利益+7.3%・初の2,500億円視野」
旭化成の2027年3月期業績予想は以下。
◆ 売上高:3兆2,540億円(+5.8%)
◆ 営業利益:2,480億円(+7.3%、初の2,500億円目前)
◆ 経常利益:2,475億円(+7.4%)
◆ 親会社株主帰属当期純利益:1,600億円(+0.8%)
◆ 配当:年44円(+2円増配、6期連続増配計画)
連続増収増益+配当6期連続増配の安定成長計画。前期に1,069億円計上した投資有価証券売却益等の反動で純利益伸長率は限定的だが、本業の営業利益は確実に拡大する見込み。
1-7. 3領域経営——「ヘルスケア×住宅×マテリアル」の事業ポートフォリオ
旭化成の最大の特徴は、報告セグメントを「ヘルスケア」「住宅」「マテリアル」の3領域で構成していることだ。
【FY2026 セグメント別売上高】
◆ ヘルスケア:6,641億円(前期+482億円、+7.8%)
◆ 住宅:1兆774億円(前期+415億円、+4.0%)
◆ マテリアル:1兆3,062億円(前期△625億円、△4.6%)
◆ その他:267億円(前期+99億円、+59.4%)
【FY2026 セグメント別営業利益】
◆ ヘルスケア:835億円(前期+194億円、+30.2%)
◆ 住宅:998億円(前期+39億円、+4.0%)
◆ マテリアル:683億円(前期△116億円、△14.5%)
◆ その他:39億円(前期+10億円)
「ヘルスケアが利益成長エンジン、住宅が安定収益、マテリアルが減益で構造改善中」——これがFY2026の旭化成の構造的特徴だ。
1-8. ヘルスケア事業——「医薬品×ライフサイエンス×クリティカルケアの3本柱」
ヘルスケア事業(売上6,641億円、営業利益835億円、+30.2%増益)はFY2026最大の利益貢献度成長セグメント。
◆ 医薬事業:主力製品の販売量増加、Calliditas Therapeutics AB(スウェーデン製薬会社、2024年10月連結開始)の新規連結効果で大幅増益
◆ ライフサイエンス事業:血漿分画用ウイルス除去フィルター「プラノバ™」、培地、CDMO等。販管費増・血液浄化事業譲渡影響で減益
◆ クリティカルケア事業(ZOLL Medical、米国子会社):装着型自動除細動器「LifeVest®」、除細動器新製品上市で患者数増加、ただし販管費増で減益
Calliditas Therapeutics買収(2024年10月連結化)は、希少疾患領域での欧米事業強化の戦略的M&A。IgA腎症治療薬「Tarpeyo®」を保有しており、ヘルスケア事業の新たな成長エンジンとなっている。
1-9. 住宅事業——「ヘーベルハウス×北米×建材」の3本柱
住宅事業(売上1兆774億円、営業利益998億円、+4.0%増益)は安定収益源。
◆ 建築請負事業:「ヘーベルハウス」「ヘーベルメゾン」が中核。物件大型化・高付加価値化で平均単価上昇→増益
◆ 不動産開発事業:分譲マンション販売戸数減も、物件構成差・固定費削減で増益
◆ 賃貸管理・不動産流通事業:管理戸数・仲介件数増加で増益
◆ 建材事業:「ヘーベル」(ALCパネル)等。価格転嫁進捗で増益
◆ 海外住宅事業(北米):住宅需要落ち込み・価格対応で減益
北米事業は米国住宅市場の住宅需要落ち込み・価格対応の影響を受けて減益。国内住宅は堅調、北米は逆風という二極化が続く。
1-10. マテリアル事業——「エッセンシャルケミカル×エレクトロニクス×エナジー&インフラ」
マテリアル事業(売上1兆3,062億円、営業利益683億円、△14.5%減益)は今期の構造改善対象セグメント。
◆ エッセンシャルケミカル事業:在庫受払差影響・水島製造所大規模定期修理実施で減益
◆ エレクトロニクス事業:AIサーバー・ハイエンドスマホを中心とした半導体・電子機器関連の旺盛な需要で主力製品販売伸長、増益(隠れた成長エンジン)
◆ カーインテリア事業:欧州堅調だが、中国・北米販売量減少と固定費増で減益
◆ エナジー&インフラ事業:イオン交換膜法食塩電解の電解プラント販売増だが、セパレータ事業(鉛蓄電池用セパレータ事業=Daramic譲渡、ハイポア事業)譲渡影響と価格対応で減益
◆ コンフォートライフ事業:繊維事業販売量減少で減益
◆ パフォーマンスケミカル事業:市況下落の在庫受払差・定期修理影響で減益
マテリアル事業の中で、エレクトロニクス事業のみが増益。AI半導体需要の本格化で、旭化成のエレクトロニクス事業(電子コンパス、感光性ドライフィルム、AI半導体パッケージ材料等)の存在感が増している。
1-11. Daramic売却——「セパレータ事業の戦略的撤退」
FY2026で旭化成は鉛蓄電池用セパレータ事業のDaramic, LLC及び連結子会社14社を売却した。これは「選択と集中」を実行する象徴的な戦略的撤退。
◆ Daramicは鉛蓄電池用セパレータの世界トップ級メーカー
◆ ハイポア事業(リチウムイオン電池用セパレータ)は継続するが、鉛蓄電池用は撤退
◆ 売却によりキャッシュ獲得・財務体質改善・経営資源集中
連結範囲の変更:除外21社(旭化成メディカル及び連結子会社4社、ナガセダイアグノスティクス、Daramic及び連結子会社14社)。
1-12. 財務体質——「自己資本比率50.5%・D/Eレシオ0.46」
FY2026末の財務指標は以下のとおり。
◆ 総資産:4兆1,379億円(前期+1,227億円)
◆ 純資産:2兆1,656億円(前期+2,517億円)
◆ 自己資本:2兆885億円
◆ 自己資本比率:50.5%(前期46.3%から+4.2pt改善)
◆ 時価ベース自己資本比率:49.5%(前期35.4%から+14.1pt改善)
◆ 有利子負債:9,675億円(前期△1,899億円減)
◆ D/Eレシオ:0.46(前期0.62から大幅改善)
◆ 営業活動キャッシュフロー:3,031億円
◆ 投資活動キャッシュフロー:△1,069億円(前期△3,812億円から大幅改善)
◆ 財務活動キャッシュフロー:△2,454億円
◆ フリーキャッシュフロー:+1,962億円
◆ 現金及び現金同等物期末残高:3,721億円
自己資本比率50.5%・D/Eレシオ0.46は化学業界として高水準の健全財務。Daramic売却益と純利益積み上げで財務体質が劇的に強化された。
第2章 業界比較——日本総合化学大手の構造
売上高(直近通期)
◆ 三菱ケミカルグループ(4188):4.5兆円水準
◆ 三井化学(4183):1.9兆円水準
◆ 住友化学(4005):2.5兆円水準
◆ 旭化成(3407):3.07兆円
◆ 信越化学工業(4063):2.8兆円水準
◆ 東レ(3402):2.6兆円水準
◆ 富士フイルムHD(4901):3.36兆円
営業利益率
◆ 信越化学工業:25%水準
◆ 富士フイルムHD:10%水準
◆ 旭化成:7.5%
◆ 三井化学:5%水準
◆ 住友化学:低水準
◆ 三菱ケミカル:5%水準
戦略の違いを5社で比較
旭化成:「ヘルスケア×住宅×マテリアル3領域経営」型
化学事業に加え、ヘーベルハウス(住宅)、ZOLL Medical(医療機器)、Calliditas(医薬品)を持つ稀有な多角化。住宅事業を持つ総合化学は旭化成のみ。
三菱ケミカルグループ:「総合化学×医薬」型
基礎化学品からスペシャリティケミカル、田辺三菱製薬(医薬品)まで展開。ポートフォリオ広いが利益率は中位。
信越化学工業:「シリコンウエハー×塩ビ×シリコーン」型
半導体シリコンウエハー世界トップ、塩ビ(米Shintech)世界トップ、シリコーン世界トップ。営業利益率25%の業界別格。
住友化学:「総合化学×農薬×医薬(大日本住友製薬)」型
基礎化学、農薬、住友ファーマ(医薬品)等を持つ総合化学。近年は構造改革局面。
東レ:「炭素繊維×繊維×化学」型
炭素繊維(CFRP)で世界トップ、繊維、化学、エレクトロニクス・情報材料が中核。
旭化成の独自性
3つの軸が他社にない独自性だ。
第1に、ヘルスケア×住宅×マテリアルの3領域経営。化学事業に加えて住宅事業(ヘーベルハウス)と医療機器(ZOLL)・医薬品(Calliditas)を持つ多角化は、日本では旭化成のみ。
第2に、事業の循環性分散。マテリアル(化学)の市況循環性、住宅(不動産)の景気循環性、ヘルスケア(医薬)の安定性をミックスすることで、グループ全体の業績変動を平準化。
第3に、AI半導体材料への深い参入。エレクトロニクス事業(電子コンパス、感光性ドライフィルム、AI半導体パッケージ材料)でAI需要を取り込む稀有なポジション。
第3章 業界の構造的課題
課題1:マテリアル事業の市況循環性
エッセンシャルケミカル、パフォーマンスケミカル、カーインテリア、コンフォートライフ事業は原料市況・為替・需給に大きく左右される。FY2026でマテリアル△14.5%減益の主因。
課題2:北米住宅市場の不確実性
住宅事業の海外(北米)は、米国住宅需要落ち込み・価格対応で減益継続。米国住宅市場の回復タイミングが業績に直結。
課題3:ヘルスケア事業の規制リスク
医薬事業(Calliditas、Tarpeyo®)、ライフサイエンス事業(プラノバ)、クリティカルケア事業(LifeVest®、ZOLL)は各国の薬事規制・医療制度の影響を受ける。
課題4:脱炭素・PFAS規制対応
EU規制、米国PFAS規制、CO2排出規制が化学業界全体に影響。製造プロセスの脱炭素化投資が継続課題。
課題5:為替変動の影響
海外売上比率約45%。円安は追い風、円高は逆風。地政学リスクと米国通商政策の影響も大きい。
――ここまでが無料パートです。売上3.07兆円は+1.2%しか伸びていないのに純利益は+17.6%、自己資本比率は46.3%から50.5%へ4.2pt跳ね上がり、ヘルスケア+30.2%増益の裏でマテリアルは△14.5%減益――。ここから先は、この数字を「選考で使える武器」に変える有料パートです。
■有料パートの内容 ・第3.5章 面接前に押さえる旭化成・化学業界の最新ニュース10本――Calliditas Therapeutics買収(IgA腎症治療薬Tarpeyo®)・Daramic売却による「選択と集中」・AI半導体向けエレクトロニクス特需・5期連続増配(38円→42円→44円)まで ・第4章 内定者の正体――「ヘーベルハウスが好き」「サランラップの会社」で落ちる理由、3領域のどこを希望するかを必ず問うESと、役員まで4段階の面接 ・第5章 職種別キャリア分析――平均年間給与900〜950万円の読み方と、研究開発・生産技術・住宅(旭化成ホームズ)・ヘルスケア(ZOLL、旭化成ファーマ)の職種別キャリア、外資化学・外資医療機器への市場価値 ・第6章 働く環境の現実――平均勤続年数18〜20年の読み方、女性管理職比率10%程度・男性育休80%超、連結従業員4万人超と延岡・水島など地方勤務の現実 ・第7章 面接攻略――3領域経営の戦略的意義を財務で語る回答例と逆質問 ・第8章 やましゃんの総合評価――推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生
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