【28卒】ユニ・チャーム(8113)——本社1,429人で売上9,453億円・24期連続増配。減益の翌年に「初の1兆円」を狙う構造をIRで読み解く
はじめに
ユニ・チャームを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ユニ・チャームに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはユニ・チャームの部長クラスより、自社の事業構造を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、ユニ・チャーム株式会社 有価証券報告書 第66期(2025年1月1日〜2025年12月31日、IFRS)に基づきます。2026年8月5日発表の2026年12月期 中間決算も反映しています。
■この記事の読み方
無料パート(第1章〜第3章): 決算・財務の解剖、日用品業界の収益構造、日用品業界の構造的課題
有料パート(第3.5章〜第8章): 面接前に押さえる最新ニュース10本、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、働く環境の現実、IRで差をつける面接回答例、IR資料を読んでいるからこそできる逆質問集、総合評価
無料部分だけでも中間管理職並みの十分な知識を習得することができます。有料パートは、本気でユニ・チャームを受けると決めた28卒向けです(買い切り1,480円・月額課金ではありません)。
この記事は、ぜひ何度も読み込んでほしい。
ここに書いてあるのは、ネット上にあふれている「ユニ・チャームってどんな会社?」のまとめではない。有価証券報告書という、会社が金融商品取引法に基づいて提出した一次情報を、投資家目線で読み解いて就活に転用した内容だ。
専門用語は出てくる。コア営業利益、IFRS、ROE、DOE(株主資本配当率)、総還元性向、ダウントレード、不織布・高分子吸収技術。読みづらく感じる箇所もあるはずだ。それでも、分からない言葉を一つずつ調べながら、辛抱強く読み進めてほしい。1時間かけて読む価値はある。それが、学歴の壁を内定で壊すための最良の自己投資だ。
ユニ・チャーム——おむつの『ムーニー』『マミーポコ』、生理用品の『ソフィ』、大人用の『ライフリー』、ペットの『銀のスプーン』。誰もが人生のどこかで必ず使う商品を、日本からアジア・世界へ広げてきた日用品メーカーだ。売上の3分の2近くは海外。そして意外なことに、本社(単体)の従業員はわずか1,429人しかいない。この少数の頭脳が、連結1万6,542人と世界の工場・販売網を動かしている。
第66期(2025年12月期)は売上△4.4%・コア営業利益△21.4%という久々の派手な減益だった。ところが翌期の中間決算は増収増益に切り返し、通期では創業以来初の売上1兆円を計画する。この「谷と回復」を数字で語れるかどうかが、憧れだけの志望者と構造を読める志望者の分かれ目になる。
第1章 ユニ・チャームを投資家目線で読む
1-1. 第66期決算——売上△4.4%・コア営業利益△21.4%の「つまずき」
第66期(2025年12月期)の連結決算から確認する。
・売上高:9,452億円(前期比△4.4%)
・コア営業利益:1,088億円(△21.4%、コア営業利益率11.5%)
・税引前当期利益:1,053億円(△21.7%)
・親会社の所有者に帰属する当期利益:652億円(△20.3%)
コア営業利益とは、売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた利益で、一時的な損益を除いた「本業の経常的な稼ぐ力」を示すユニ・チャーム独自の開示だ。その利益率が前期の14.0%から11.5%へ、2.5ポイントも落ちた。
売上の5期推移を並べる。
・第62期:7,827億円
・第63期:8,980億円
・第64期:9,417億円
・第65期:9,889億円
・第66期:9,452億円
5期で+20.8%と成長を続けてきたが、第66期で初めて明確に折れた。この谷の中身を、次節で解剖する。
1-2. 減益の犯人は3つ——中国の風評・アジアの価格競争・インドの制度変更
有報は減収減益の要因を具体的に書いている。
第1に、中国の風評問題。2024年11月から2025年にかけて、生理用品の品質・廃棄管理に関する風評が報道され、一時的な販売減少に見舞われた。会社はeコマースでのデジタルマーケティング強化とブランド情報発信で立て直しを図った。
第2に、東南アジアの価格競争。ベトナム・タイ・インドネシアでは出生数減少と経済低迷を背景に、消費者がより安い商品へ移る「ダウントレード」が発生。インドネシアではローカル企業が価格競争力を強めており、2ブランド戦略(プレミアムと価格志向の使い分け)で応戦している。
第3に、インドの制度変更。2025年9月のGST(物品・サービス税)改正に伴い69億円の評価損失を計上、流通在庫の調整で販売も一時停滞した。ただし実需は底堅く、紙おむつの市場シェアは過去最高水準を維持している。
3つに共通するのは「需要の消滅ではなく、外部ショックと競争環境の変化」だという点だ。だからこそ、翌期の回復(後述)につながる。
1-3. キャッシュと財務——自己資本比率65.0%・24期連続増配
財政状態を確認する。
・総資産:1兆2,231億円
・親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率):65.0%
・営業キャッシュフロー:+1,314億円
・投資キャッシュフロー:△587億円
・現金及び現金同等物:2,530億円
・ROE:8.3%(前期11.1%)
減益の年でも営業CFは1,314億円と安定し、フリーキャッシュフローは約727億円のプラス。そして特筆すべきは株主還元だ。年間配当18円(2025年1月に1株→3株の株式分割実施後)で、24期連続増配を継続。DOE(株主資本配当率)4.0%、総還元性向50%以上を目標に掲げる。減益でも増配を止めない——「利益の谷でも配当を増やせる」のは、実質無借金に近い財務体力と、生活必需品という事業の安定性の証明である。
1-4. なぜ利益率が高いのか——不織布・高分子吸収というコア技術の横展開
ユニ・チャームのコア営業利益率は谷の年でも11.5%、好調期は14%。日用品としては高水準だ。源泉は、不織布・高分子吸収体という共通技術にある。赤ちゃんのおむつも、生理用品も、大人用排泄ケアも、ペットシートも、マスクも——「体から出るものを吸収し、肌に触れて不快にしない」技術の応用先を変えているだけ、とも言える。
研究開発費は136億円、売上比わずか1.4%。東京エレクトロン(11.4%)やキヤノン(7.3%)と比べると桁違いに低いが、これは技術軽視ではない。香川県観音寺市のテクニカルセンターを核に「Research Locally, Develop Globally」——各国の生活現場でニーズを掘り起こし、共通技術で素早く商品化する現場密着型のR&Dであり、巨額の基礎研究より「観察と仮説検証の回転数」で戦うモデルなのだ。
1-5. セグメント——パーソナルケアが8割、ペットケアが利益率で勝る
2つの報告セグメントを見る。
・パーソナルケア:売上7,744億円(△6.3%)、コア営業利益831億円(△25.0%)、利益率10.7%
・ペットケア:売上1,560億円(+5.0%)、コア営業利益240億円(△6.9%)、利益率15.4%
売上の81.9%を占めるパーソナルケア(ベビー・フェミニン・ウェルネス)が本体だが、注目はペットケアだ。減収の年に唯一増収を確保し、利益率は15.4%とパーソナルケアを上回る。北米では日本の技術を載せた猫用ウェットフードが好調で、中国ではJIA PETS社との提携で市場シェアNo.1を狙い、2026年にはブラジルの子会社化も完了した。「おむつの会社」の中で、ペットが第2の成長エンジンに育っている——この視点は面接で確実に差がつく。
第2章 日用品業界の収益構造
2-1. 景気に強く、人口動態に従う——ディフェンシブの本質
おむつ・生理用品・介護用品は、景気が悪くても使用をやめられない生活必需品だ。だから日用品メーカーの業績は景気変動に強い(ディフェンシブ)。その代わり、需要の天井を人口動態が決める。日本では少子化でベビー用が縮み、高齢化で大人用が伸びる。ユニ・チャームの国内戦略が『ライフリー』などウェルネスケアに厚いのは、人口ピラミッドをそのまま映した結果だ。
つまりこの業界の成長方程式は「国内は高付加価値化と価格転嫁、成長は海外の人口と普及率から取る」。ユニ・チャームの海外売上が3分の2近くを占めるのは、この方程式を30年かけて実行してきた到達点である。
2-2. シェアNo.1の経済学——棚とブランドの複利
日用品の勝敗は、スーパー・ドラッグストア・eコマースの「棚」をどれだけ取れるかで決まる。シェアNo.1ブランドは目立つ棚を取り、露出がさらにシェアを固める——複利のように効く構造だ。ユニ・チャームは国内のベビーケア・フェミニンケアで市場シェアNo.1を継続している。
No.1の実利は価格決定力に表れる。原材料高やインフレ局面で、シェアの強いブランドは値上げ(価値転嫁)が通りやすい。第66期の国内が「高付加価値商品の提供による価値転嫁」で安定成長を守った一方、シェア基盤の弱い東南アジアでダウントレードに苦しんだ——同じ会社の中で、ブランド力の差が明暗を分けた教科書的な1年だった。
2-3. 新興国開拓の方程式——「普及率ゼロ」から市場を作る
ユニ・チャームの真骨頂は、市場がまだ存在しない国で市場そのものを作ることだ。生理用品の普及率が低いインドでは、啓発活動と「個包装・フラットタイプ」など現地の価格感度に合わせた仕様で取扱店を広げ、高い成長と収益性改善を実現した。紙おむつでも、パンツタイプの普及を東南アジアで主導してきた。
先進国の商品をそのまま持ち込むのではなく、所得・習慣・宗教・気候に合わせて商品と売り方を再設計する。サウジアラビアではオリーブオイル配合品を投入するといった具合だ。この「現地適応の徹底」こそ、欧米巨人P&Gやキンバリークラークと戦って東南アジアで勝ってきた武器である。
2-4. 競合比較——花王という国内の好敵手
このマガジンで解剖した花王(4452)は、最良の比較対象だ。花王は化学(界面科学)を基盤に洗剤・化粧品まで広がる総合メーカーで、36年連続増配の株主還元で知られる。ユニ・チャームは不織布・吸収体に特化し、おむつ・生理用品・ペットに集中する専業型。24期連続増配と、還元の思想はよく似ている。
違いは海外の稼ぎ方だ。ユニ・チャームは売上の3分の2近くが海外で、アジア新興国の開拓で成長してきた。単体従業員1,429人(連結の8.6%)という極端な少数精鋭の本社が、グローバルの製造・販売を束ねる経営スタイルも特徴的で、「大きな本社が管理する会社」ではなく「小さな頭脳が世界を回す会社」である。この構造の違いを語れると、日用品業界の理解は一段深くなる。
第3章 日用品業界の構造的課題
3-1. 中国という難所——風評・低価格志向・出生数減の三重苦
中国はユニ・チャームにとって重要市場だが、第66期は生理用品の風評報道による販売減に直撃された。加えて経済の先行き不透明感から若年層は低価格帯を好み、出生数の減少はベビー用の市場自体を縮める。
会社の対応は、eコマース・デジタルマーケティングの強化、新コンセプト商品(ショーツ型ナプキン等)による市場活性化、そして大人用・ペット用という「人口動態に沿った市場」への軸足移しだ。急拡大の時代が終わった中国で、何で稼ぎ直すか——日用品各社共通の問いである。
3-2. 東南アジアの価格競争——ローカル勢の台頭とダウントレード
かつて「成長市場の代名詞」だった東南アジアで、出生数減少・経済低迷・ローカル企業の台頭が同時に進む。インドネシアでは地場メーカーが営業力と価格競争力を強め、消費者は安い商品へ流れる。
ユニ・チャームの答えは2ブランド戦略——プレミアム層と価格志向層を別ブランドで取り、エコノミータイプや小容量パックでトライアルを促す。ブランドの格を守りながら価格帯を広げる難しい舵取りであり、「高くても売れる」が通じない市場でのブランド経営の実力が試されている。
3-3. 新興国の制度リスク——インドGSTの69億円が教えること
第66期はインドのGST制度改正で69億円の評価損失を計上した。税制・規制・通貨——新興国で稼ぐことは、こうした制度変更リスクを常に抱えることを意味する。
重要なのは、実需は底堅くシェアは過去最高水準という事実だ。制度ショックは一過性、需要の構造は無傷——この切り分けができれば、「インドで損失」というニュースの見え方はまったく変わる。新興国比率の高い会社を受けるなら、この読み方は必修だ。
3-4. 中計目標との距離——利益率11.5%から17%へ、ROE 8.3%から17%へ
第13次中期経営計画は、2030年度に売上1.5兆円・コア営業利益率17%・ROE 17%を掲げる。現在地は売上9,452億円・利益率11.5%・ROE 8.3%。売上で1.6倍、利益率で5.5ポイント、ROEで8.7ポイントの引き上げが必要な、かなり野心的な目標だ。
達成の鍵は、高利益率のペットケア拡大、インド・中東など次の成長市場、値上げが通るブランド力、そして風評・制度ショックからの回復スピードにある。目標と現在地の差分こそ、これから入社する世代の仕事そのものだ。
――ここまでが無料パートです。売上9,452億円(△4.4%)、コア営業利益率11.5%(前期14.0%)、減益の3要因(中国風評・アジア価格競争・インドGST)、それでも24期連続増配、そして翌期は初の売上1兆円予想——ユニ・チャームの谷と回復力を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
■有料パートの内容
・第3.5章 面接前に押さえるユニ・チャームの最新ニュース10本——中間決算+14.1%増益・初の1兆円予想・ペット事業まで
・第4章 内定者の正体——「商品が好き」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
・第5章 職種別キャリア分析——平均年収875万円の読み方と、連結1.65万人・単体1,429人でのキャリア
・第6章 働く環境の現実——女性管理職比率19.5%の他社比較、男性育休102.7%、財務から見る雇用の安定性
・第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
・第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生
本気でユニ・チャームを受ける28卒向けの内容です。買い切り1,480円で、購入後はいつでも読み返せます。
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