【28卒】小林製薬(4967)——売上は戻った。利益は2年前の18%のままだ
はじめに
小林製薬を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、小林製薬に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは小林製薬の部長クラスより、自社の事業構造を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、小林製薬株式会社 有価証券報告書 第108期(2025年1月1日〜2025年12月31日)に基づきます。
■この記事の読み方
無料パート(第1章〜第3章): 決算・財務の解剖、日用品業界の収益構造、日用品業界の構造的課題
有料パート(第3.5章〜第8章): 面接前に押さえる最新ニュース10本、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、働く環境の現実、IRで差をつける面接回答例、IR資料を読んでいるからこそできる逆質問集、総合評価
無料部分だけでも中間管理職並みの十分な知識を習得することができます。有料パートは、本気で小林製薬を受けると決めた28卒向けです(買い切り1,480円・月額課金ではありません)。
この記事は、ぜひ何度も読み込んでほしい。
ここに書いてあるのは、ネット上にあふれている「小林製薬ってどんな会社?」のまとめではない。有価証券報告書という、会社が金融商品取引法に基づいて提出した一次情報を、投資家目線で読み解いて就活に転用した内容だ。
専門用語は出てくる。売上総利益率、販売費及び一般管理費、減損損失、製品回収関連損失、セグメント利益、自己資本利益率、株価収益率、法人税等調整額。読みづらく感じる箇所もあるはずだ。それでも、分からない言葉を一つずつ調べながら、辛抱強く読み進めてほしい。1時間かけて読む価値はある。それが、学歴の壁を内定で壊すための最良の自己投資だ。
小林製薬——「熱さまシート」「ブルーレット」「サワデー」「アンメルツ」「ナイシトール」など、あったらいいなをカタチにするというスローガンで知られる会社である。
まず、5期の推移を見てほしい。
売上高
・第104期(2021年12月期):1,552億52百万円
・第105期:1,662億58百万円
・第106期:1,734億55百万円
・第107期:1,656億円
・第108期:1,657億42百万円
親会社株主に帰属する当期純利益
・第104期:197億15百万円
・第105期:200億22百万円
・第106期:203億38百万円
・第107期:100億67百万円
・第108期:36億56百万円
売上高は第106期の1,734億55百万円から1,657億42百万円へ4.4%減っただけである。ほぼ戻っている。
ところが、純利益は203億38百万円から36億56百万円へ——2年で82.0%減った。第106期の18.0%しかない。
自己資本利益率(ROE)も、10.1% → 4.8% → 1.7%である。
2024年3月、同社の紅麹関連製品をめぐる健康被害の問題が公表された。売上は戻りつつあるのに、利益が戻らない——その理由を、有報の数字が説明している。
当期の損益は、こうなっている。
・売上高:1,657億42百万円(前期比+0.1%)
・営業利益:149億23百万円(△40.0%)
・経常利益:169億95百万円(△36.7%)
・親会社株主に帰属する当期純利益:36億56百万円(△63.7%)
売上はほぼ横ばいなのに、営業利益は40.0%減った。
理由の1つが、販売費及び一般管理費のこの項目である。
・広告宣伝費:81億40百万円 → 135億3百万円(+65.9%)
53億63百万円の増加——販管費の増加額70億46百万円の76.1%を占める。
そしてもう1つ。
・減損損失:2億52百万円 → 147億75百万円(58.6倍)
信頼を取り戻すために広告に投じ、将来の見通しが立たない資産を切り下げた——それが当期である。
数字で、この2年を解剖する。
第1章 小林製薬を投資家目線で読む
1-1. 売上+0.1%、営業利益△40.0%
当期の連結損益計算書を、上から順に確認する。
・売上高:1,657億42百万円(前期1,656億円、+0.1%)
・売上原価:810億30百万円(前期779億97百万円、+3.9%)
・売上総利益:847億11百万円(前期876億3百万円、△3.3%)
・売上総利益率:51.11%(前期52.90%、△1.79ポイント)
・販売費及び一般管理費:697億88百万円(前期627億42百万円、+11.2%)
・営業利益:149億23百万円(前期248億60百万円、△40.0%)
・営業外収益:24億73百万円(前期24億77百万円)
・営業外費用:4億2百万円(前期4億76百万円)
・経常利益:169億95百万円(前期268億61百万円、△36.7%)
・特別利益:64億17百万円(前期6億62百万円、9.69倍)——固定資産売却益22億59百万円(前期21百万円)、投資有価証券売却益30億41百万円(前期6億35百万円)、その他11億16百万円
・特別損失:196億68百万円(前期136億9百万円、+44.5%)——減損損失147億75百万円(前期2億52百万円、58.6倍)、製品回収関連損失36億90百万円(前期125億24百万円、△70.5%)、その他10億62百万円、固定資産処分損1億40百万円
・税金等調整前当期純利益:37億44百万円(前期139億14百万円、△73.1%)
・法人税等合計:83百万円(前期38億42百万円)——法人税、住民税及び事業税43億59百万円、法人税等調整額△42億76百万円
・当期純利益:36億60百万円
・非支配株主に帰属する当期純利益:4百万円
・親会社株主に帰属する当期純利益:36億56百万円(△63.7%)
販売費及び一般管理費の内訳を見ると、当期に何が起きたかがはっきりする。
・広告宣伝費:81億40百万円 → 135億3百万円(+65.9%、53億63百万円増)
・租税公課:7億53百万円 → 12億64百万円(+67.9%)
・減価償却費:34億33百万円 → 38億86百万円(+13.2%)
・給料手当及び賞与:162億89百万円 → 168億25百万円(+3.3%)
・運賃保管料:52億94百万円 → 56億1百万円(+5.8%)
・研究開発費:91億9百万円 → 91億22百万円(+0.1%)
・のれん償却額:14億7百万円 → 13億90百万円(△1.2%)
・販売促進費:34億35百万円 → 33億59百万円(△2.2%)
販管費の増加額70億46百万円のうち、53億63百万円(76.1%)が広告宣伝費である。
売上をほぼ維持するために、広告費を66%増やした——そう読むことができる。
一方、研究開発費は+0.1%とほぼ据え置きである。
そして特別損失では、製品回収関連損失が125億24百万円から36億90百万円(△70.5%)へ減った。回収そのものの費用は峠を越えた。
代わりに、減損損失が2億52百万円から147億75百万円(58.6倍)へ膨らんだ。
将来生み出す収益が見込めなくなった資産を、帳簿上で切り下げる処理である。回収は終わったが、失った事業の価値を認識した年だったと読める。
なお、法人税等合計はわずか83百万円(税引前利益37億44百万円に対し2.2%)である。法人税等調整額△42億76百万円が効いた結果であり、これがなければ最終赤字だった可能性がある。
1-2. 2つの事業——国内が利益の93.2%
小林製薬の報告セグメントは2つである(ほかに「その他」)。
国内事業
・外部顧客への売上高:1,180億64百万円(前期1,199億1百万円、△1.5%)——構成比71.2%
・売上高(内部含む計):1,229億20百万円
・セグメント利益:139億63百万円(前期232億17百万円、△39.9%)
・利益率:11.36%(前期18.73%、△7.37ポイント)
・従業員:2,265人(臨時291人)
・セグメント資産:1,177億62百万円
・設備投資:134億67百万円
国際事業
・外部顧客への売上高:469億94百万円(前期451億81百万円、+4.0%)——構成比28.4%
・売上高(内部含む計):484億15百万円
・セグメント利益:8億10百万円(前期12億72百万円、△36.3%)
・利益率:1.67%(前期2.72%)
・従業員:1,008人
・セグメント資産:857億76百万円
・設備投資:64億円
その他:外部売上6億83百万円、利益2億15百万円、従業員105人(臨時103人)
このほか全社353人(臨時21人)がおり、調整額△66百万円を加えて連結営業利益149億23百万円となる。
セグメント利益の構成(計149億89百万円に対する比率)
・国内事業:93.2%
・国際事業:5.4%
・その他:1.4%
利益のほとんどを国内が稼いでいる。
1人あたりセグメント利益で見ると、差は歴然としている。
・国内事業:616万円(2,265人で139億63百万円)
・国際事業:80万円(1,008人で8億10百万円)
7.7倍の差である。
さらに、国際事業はセグメント資産857億76百万円を抱えながら、利益は8億10百万円——資産に対する利益率は0.94%にすぎない。
国内で稼ぎ、海外に投じている——だが、海外はまだ利益を生んでいない。
1-3. 地域別——中国が13.2%減った
売上高を地域別に見ると、国際事業の中身が分かる。
・日本:1,199億1百万円 → 1,180億64百万円(△1.5%)——構成比71.2%
・米国:212億46百万円 → 238億13百万円(+12.1%)——14.4%
・中国:110億82百万円 → 96億14百万円(△13.2%)——5.8%
・東南アジア:85億75百万円 → 92億99百万円(+8.4%)——5.6%
・その他:42億76百万円 → 42億65百万円(△0.3%)——2.6%
米国が+12.1%と最も伸び、中国が△13.2%と最も落ちた。
米国は238億13百万円と、国際事業469億94百万円の50.7%を占める最大の市場である。
一方、中国は96億14百万円まで縮小した。前期比14億68百万円の減少である。
日本国内は△1.5%——ほぼ横ばいまで戻している。
売上高全体では+0.1%とほぼ前期並みだが、中身では地域ごとに明暗が分かれている。
1-4. 財務——現金が40.7%増え、投資はほぼ止まった
・総資産:2,753億29百万円(前期2,653億68百万円、+3.8%)
・純資産:2,110億8百万円(前期2,134億71百万円、△1.2%)
・自己資本比率:76.3%(前期80.2%、△3.9ポイント)
・ROE:1.7%(前期4.8%、第106期10.1%)
・株価収益率(PER):110.3倍(前期46.0倍)
・営業CF:+255億90百万円(前期112億46百万円、2.28倍)
・投資CF:△1億54百万円(前期△184億15百万円)
・フリーキャッシュフロー:+254億36百万円
・財務CF:△79億21百万円
・現金及び現金同等物:646億93百万円(前期459億73百万円、+40.7%)
・設備投資(有形・無形固定資産の増加額):248億61百万円 → 207億23百万円(△16.6%)
注目すべきは投資CFである。前期の△184億15百万円から、当期は△1億54百万円——ほぼゼロになった。
これは、設備投資を207億23百万円行った一方で、資産の売却が進んだためと考えられる。特別利益には固定資産売却益22億59百万円、投資有価証券売却益30億41百万円が計上されている。
その結果、フリーキャッシュフローは+254億36百万円、現金は459億73百万円から646億93百万円へ40.7%増えた。
自己資本比率76.3%は依然として非常に高い水準である。
利益は落ちたが、現金は増え、財務は健全——これがこの会社の現在地である。
なお、PER 110.3倍という数字は、利益が一時的に落ち込んでいると市場が見ていることを示す。株価が利益の110倍で評価されているということは、投資家が将来の利益回復を織り込んでいるとも読める。
1-5. 従業員3,731人と、年収755万4,189円
・連結従業員:3,731人(臨時415人)——前期3,615人、+116人
・セグメント別:国内事業2,265人(臨時291人)、国際事業1,008人、その他105人(臨時103人)、全社353人(臨時21人)
・提出会社:1,737人(臨時92人)——国内事業1,369人、全社353人、国際事業15人
・平均年令:41.2歳、平均勤続年数:12.8年
・平均年間給与:755万4,189円
・労働組合:薬粧連合(医薬化粧品産業労働組合連合会)に所属、組合員数1,224名(出向社員含む)
利益が大きく落ちた年に、従業員は116人増えている。
提出会社1,737人は連結3,731人の46.6%——半分近くが本体にいる。
有報の注記によれば、平均年間給与は「基準外賃金及び賞与を含んで」おり、第106期より「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定に基づいて算出されている。
平均勤続12.8年、平均年令41.2歳から引くと入社時28.4歳——中途採用が一定数いることを示唆する。
労働組合は薬粧連合(医薬化粧品産業労働組合連合会)に属し、組合員数は1,224名。提出会社1,737人の70.5%にあたる。有報は「労使関係は円満に推移しており、特記すべき事項はありません」と記す。
第2章 日用品業界の収益構造
2-1. なぜ広告費が66%も増えたのか
小林製薬の当期を理解する鍵は、広告宣伝費にある。
・81億40百万円 → 135億3百万円(+65.9%、53億63百万円増)
・売上高に対する比率:4.9% → 8.1%
販管費の増加額70億46百万円のうち76.1%がこれである。
なぜこれほど増やしたのか。理由は、この会社のビジネスモデルにある。
小林製薬が扱うのは、熱さまシート、ブルーレット、サワデー、アンメルツ、ナイシトール——ドラッグストアやスーパーで、消費者が自分で選んで買う商品である。
こうした商品では、「知っているか」「信頼しているか」が売上を左右する。医師が処方する薬とは違い、消費者が棚の前で判断する。
だからこそ、信頼が揺らいだとき、広告で取り戻す必要がある。
そして、その効果は数字に出ている。
・日本の売上:1,199億1百万円 → 1,180億64百万円(△1.5%)
・全体の売上高:+0.1%
売上はほぼ維持された。第106期(1,734億55百万円)と比べても△4.4%にとどまる。
だが、代償は利益だった。
・国内事業の利益率:18.73% → 11.36%(△7.37ポイント)
・営業利益:248億60百万円 → 149億23百万円(△40.0%)
売上を守るために、利益を差し出した——それが当期の構造である。
同じマガジンで解剖した日用品各社(ライオン、ユニ・チャームなど)でも、広告宣伝費は重要な費用項目である。この業界では、広告を止めれば売れなくなる。
小林製薬の場合、それが平時の水準を大きく超えたということである。
2-2. 「あったらいいな」の利益率
小林製薬のもう1つの特徴は、利益率の高さである。
・売上総利益率:51.11%(前期52.90%)
売上の半分以上が粗利である。これは製造業として非常に高い。同じマガジンで解剖した化学メーカー(UBE 22.38%、三菱瓦斯化学)と比べると、2倍以上である。
なぜこうなるのか。理由は3つある。
第1に、独自性のある商品。「熱さまシート」「ブルーレット」のように、それまで市場になかった商品を作る。競合がいなければ、価格は自社で決められる。
第2に、小さく高い商品。原材料費に対して、消費者が払う価格が高い。
第3に、製造の外部委託。小林製薬はファブレス(工場を持たない)に近い体制を取ってきたことで知られる。設備投資の負担が小さく、固定費が軽い。
その代わり、販管費が重い。
・売上総利益率:51.11%
・販管費率:42.1%(697億88百万円 ÷ 1,657億42百万円)
・営業利益率:9.0%
粗利の8割以上を、販管費が使う構造である。
そして販管費の中で最大級の項目が広告宣伝費135億3百万円(売上の8.1%)であり、次いで給料手当及び賞与168億25百万円(10.2%)、研究開発費91億22百万円(5.5%)である。
作るより、知ってもらうことに金がかかる——それがこの業界の構造である。
平時の営業利益率を第106期で計算すると、当時の水準はもっと高かった。当期の9.0%は、広告を大幅に増やした結果である。
2-3. 国際事業1,008人が、利益8億円
第2の特徴は、国内と海外の落差である。
国内事業
・外部売上:1,180億64百万円(71.2%)
・セグメント利益:139億63百万円(利益構成の93.2%)
・利益率:11.36%
・従業員:2,265人(1人あたり616万円)
・セグメント資産:1,177億62百万円
国際事業
・外部売上:469億94百万円(28.4%)
・セグメント利益:8億10百万円(5.4%)
・利益率:1.67%
・従業員:1,008人(1人あたり80万円)
・セグメント資産:857億76百万円
売上では28.4%を占めるのに、利益では5.4%である。
そしてセグメント資産857億76百万円に対し利益8億10百万円——資産利益率0.94%にとどまる。
国内事業は資産1,177億62百万円で139億63百万円(11.86%)を稼いでいるので、12.6倍の差がある。
国際事業の内訳は、米国238億13百万円(+12.1%)、中国96億14百万円(△13.2%)、東南アジア92億99百万円(+8.4%)、その他42億65百万円である。
米国では買収による事業展開を進めてきた経緯があり、のれん償却額13億90百万円が計上されている(すべて国際事業)。
海外に資産を積み上げたが、利益はまだ出ていない——これは日本の消費財メーカーに共通する課題でもある。
同じマガジンで解剖した住友ファーマ(北米が売上の74.5%・利益の77.6%)とは対照的な構図である。
2-4. 同業比較——利益率と財務
同じマガジンで解剖した企業と並べる。
・売上高:ユニ・チャーム9,000億円台 > ライオン4,000億円台 > 小林製薬1,657億42百万円
・売上総利益率:小林製薬51.11%
・自己資本比率:小林製薬76.3%——同じマガジンで解剖した化学各社(積水化学59.61%、三菱瓦斯化学58.08%、UBE 46.2%)を大きく上回る
・ROE:小林製薬1.7%(第106期は10.1%)
・従業員:小林製薬3,731人
・1人あたり売上高:4,442万円
・平均年収:小林製薬755万4,189円
読み取れることは3つある。
第1に、財務は極めて堅い。自己資本比率76.3%、現金646億93百万円(+40.7%)、フリーキャッシュフロー+254億36百万円。
第2に、利益率は本来高い。売上総利益率51.11%は、製造業として突出している。
第3に、当期のROE 1.7%は明らかに異常値である。第104期〜第106期は10%台だった。
財務に問題はなく、利益だけが落ちている——この状態をどう見るかが、この会社を評価する分かれ目である。
第3章 日用品業界の構造的課題
3-1. 利益が戻るのはいつか
最大の論点は、利益の回復時期である。
純利益の推移
・第106期:203億38百万円(ROE 10.1%)
・第107期:100億67百万円(ROE 4.8%)
・第108期:36億56百万円(ROE 1.7%)
2年で82.0%減った。第106期の18.0%である。
売上高は1,734億55百万円 → 1,657億42百万円(△4.4%)しか減っていないにもかかわらず、である。
要因を分解すると、こうなる。
第1に、広告宣伝費。81億40百万円 → 135億3百万円(+65.9%)。この53億63百万円が続く限り、利益は戻らない。
第2に、特別損失。当期は減損損失147億75百万円、製品回収関連損失36億90百万円、合計196億68百万円の特別損失が発生した。ただし、減損は一度計上すれば翌期以降は減価償却費が減るため、繰り返される費用ではない。
第3に、売上総利益率の低下。52.90% → 51.11%(△1.79ポイント)。売上原価が+3.9%増えている。
そして会社の2026年12月期の予想は、経常利益約130億円(△23.5%)——さらに減益の計画である(配当は2円増配)。
28卒が入社する2028年は、この回復過程の途上にあたる。
3-2. 国際事業の資産857億円が、利益8億円しか生んでいない
第2の論点は、海外事業である。
・セグメント資産:857億76百万円(連結総資産の31.2%)
・セグメント利益:8億10百万円
・資産利益率:0.94%
・従業員:1,008人(連結の27.0%)
・1人あたり利益:80万円
・設備投資:64億円(全体の30.9%)
総資産の31.2%、従業員の27.0%を投じて、利益は5.4%である。
地域別では、米国238億13百万円(+12.1%)が伸びる一方、中国は96億14百万円(△13.2%)と縮んだ。
米国では買収により事業を拡大してきた経緯があり、のれん償却額13億90百万円が毎期の費用として発生している。
買収で売上は買えるが、利益はすぐには出ない——これは日本企業の海外展開に共通する課題である。
なお、当期の減損損失147億75百万円が、どのセグメントで発生したかは有報のこの箇所では明示されていない。だが、国際事業のセグメント資産が前期の758億71百万円から857億76百万円へ増えていることから、海外事業への投資は継続していると読める。
この857億76百万円が、いつ利益を生むのか——これが中期の焦点である。
3-3. 研究開発費が据え置かれた意味
第3の論点は、将来への投資である。
・研究開発費:91億9百万円 → 91億22百万円(+0.1%)
・売上高比:5.5%
・一方で広告宣伝費:+65.9%
広告を66%増やす一方、研究開発費はほぼ据え置きである。
小林製薬は「あったらいいなをカタチにする」を掲げ、新製品の開発を強みとしてきた会社である。既存市場になかった商品を作ることで、高い利益率(売上総利益率51.11%)を実現してきた。
その源泉が研究開発である。
目先の売上を守るために広告に投じるのは合理的だが、新製品が出なければ、数年後の売上が細る。
ただし、研究開発費91億22百万円は売上の5.5%であり、水準としては維持されている。削られてはいない。
限られた資源を、今と未来にどう配分するか——この判断が問われている。
なお、設備投資は248億61百万円から207億23百万円(△16.6%)へ減らされている。
3-4. 2026年12月期はさらに減益の計画
会社の2026年12月期予想は、以下のとおりである。
・経常利益:約130億円(△23.5%)
・配当:2円増配
当期(169億95百万円)からさらに23.5%減る計画である。
減益なのに増配——これは、財務の余裕を示している。自己資本比率76.3%、現金646億93百万円(+40.7%)、フリーキャッシュフロー+254億36百万円があるからこそできる判断である。
株主に対して「一時的な減益であり、財務は健全だ」と示す意図とも読める。
なお、当期は減損損失147億75百万円という特別損失があったため、純利益は36億56百万円まで落ちた。2026年12月期にこの規模の減損がなければ、純利益は経常利益の減少幅ほどには落ちない可能性もある。
利益がどこで底を打つか——それが当面の焦点である。
28卒が入社する2028年は、回復の道筋が見えているかどうかが問われる時期にあたる。
――ここまでが無料パートです。売上高は第106期の1,734億55百万円から1,657億42百万円へ△4.4%とほぼ戻った一方、親会社株主帰属当期純利益は203億38百万円から36億56百万円へ2年で△82.0%(第106期の18.0%)まで落ちROEも10.1%→4.8%→1.7%となったこと、当期は売上+0.1%なのに営業利益△40.0%(248億60百万円→149億23百万円)で、その主因が広告宣伝費81億40百万円→135億3百万円(+65.9%・53億63百万円増)——販管費増70億46百万円の76.1%——であり売上高に対する比率も4.9%から8.1%へ上がったこと、特別損失では減損損失が2億52百万円→147億75百万円(58.6倍)に膨らむ一方製品回収関連損失は125億24百万円→36億90百万円(△70.5%)と峠を越え、法人税等合計はわずか83百万円(税負担率2.2%)だったこと、2つのセグメントでは国内事業が利益の93.2%(139億63百万円)を稼ぐが利益率は18.73%から11.36%へ△7.37ポイント低下し、国際事業は1,008人・セグメント資産857億76百万円を抱えながら利益8億10百万円(利益構成5.4%・1人あたり80万円・資産利益率0.94%)にとどまること、地域別では米国+12.1%・東南アジア+8.4%に対し中国は△13.2%だったこと、売上総利益率51.11%と製造業として突出して高い一方販管費率42.1%で営業利益率は9.0%であること、それでも自己資本比率76.3%・営業CF 2.28倍の255億90百万円・現金646億93百万円(+40.7%)・フリーキャッシュフロー+254億36百万円と財務は健全で投資CFはほぼゼロ(△1億54百万円)まで縮んだこと、研究開発費は+0.1%で据え置き・設備投資は△16.6%だったこと、連結3,731人(+116人)・提出会社1,737人の平均年収755万4,189円・薬粧連合の組合員1,224名、そして2026年12月期は経常約130億円(△23.5%)とさらに減益の計画ながら2円増配——小林製薬の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
■有料パートの内容
・第3.5章 面接前に押さえる小林製薬の最新ニュース10本——広告費+65.9%・国際事業1人80万円・減損58.6倍まで
・第4章 内定者の正体——「あったらいいなが好き」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
・第5章 職種別キャリア分析——平均年収755万円の読み方と、3,731人でのキャリア
・第6章 働く環境の現実——勤続12.8年、薬粧連合1,224名、利益が落ちた年に116人増えた意味
・第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
・第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生
本気で小林製薬を受ける28卒向けの内容です。買い切り1,480円で、購入後はいつでも読み返せます。
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