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愛しさは、ときに毒になる。京都国際マンガミュージアム「ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット展」で味わう至福

【約1,200文字、写真12枚|読了目安:約3分】


京都国際マンガミュージアム|2025年12月13日~2026年4月7日


 「猫に触れたら、自分も猫になる」
 それは、愛猫家にとって究極の浄土なのか、それとも底なしの地獄なのか。そんな途方もない「もしも」を描いた『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』。現在、京都国際マンガミュージアムで開催中の展覧会を、覗いてきました。

 一歩中へ入れば、そこはもう「可愛い」という名の暴力に支配された世界。物語の頁をめくるように、猫という不可思議な生き物との緊張感を、五感すべてで味わっていく。

 そのひとときの迷い路を、ここに書き留めておこうと思います。




1.瞳に宿る「猫の意志」と、机上に残る熱

京都国際マンガミュージアム 入口付近
撮影:IRIE ART LOG

 昭和初期に建てられた、元小学校の校舎。ときおり、古い木造の床がぎい、と鳴ります。その懐かしい軋みさえ、忍び寄る猫の足音のよう。
 かつての学び舎が湛える静けさの向こう側に、いま、抗いようのない“ニャンデミック”の気配が潜んでいます。

会場入口に設置された大型パネル
フォトスポットになっている

 こちらを見据える猫たち。その瞳には、甘えや媚びではない、確かな「意志」が宿っています。
 思わず指を伸ばして、その喉元を掻いてやりたくなりますが、劇中ではそれが運命の分かれ道。そのまま人間でいられるか、それとも猫へと堕ちてしまうのか。
 そんな、初恋にも似た、あるいはもっとたちの悪い、ひりつくような胸騒ぎが始まります。

『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』原作:ホークマン 作画:メカルーツ 
コミックス 第1巻 表紙イラスト 
[デジタルプリント]

 展示されているのは、紙の上に丹念に刻み込まれたアナログの筆致を、その圧倒的な情報量と熱量で写し出した複製原画たち。細かな線の一本一本に、生き物特有の躍動感と、ふてぶてしいまでの表情の豊かさが息づいています。
 そこには確かに、机の上で息を止めてペンを走らせる、作者の気配がパッケージされていました。

展示風景より

 物語をまだ知らない人も、この絵を前にすれば、人類がいとも容易く猫に屈服してしまった理由が、すとんと腑に落ちてしまうはずです。


2.触れたら最後。生真面目さと愛くるしさが交差する、危うい均衡

『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』原作:ホークマン 作画:メカルーツ 
Chapter4「猫の牢獄」(コミックス 第1巻 P173) 
[デジタルプリント]

 この作品の心憎いところは、「これ以上なく大真面目な顔をして、全力で猫から逃げ惑う」という、その滑稽なまでの切実さが、この物語の毒であり、同時に読者を引きずり込む魔力でもあります。
 劇画を思わせる硬質でシリアスな線が、かえって猫たちの、あの「もふもふ」とした容赦のない柔らかさを、残酷なまでに際立たせているのです。

展示風景より

 愛猫家の方へ。
 登場人物たちがどれほどの窮地に立たされようと、ご安心を。彼らは決して、猫を傷つけたりはしません。自らの命の火が消えかかるその時でさえ、彼らが何より恐れているのは、「猫を傷つけてしまうこと」なのですから。

先生への質問パネル

 そんな、どうしようもなく可笑しくて、そして愛おしい世界を創り上げたお二人の先生への問いが、パネルに並んでいました。

 会場を歩きながら、ふと気づきます。この作品が放つ緊張感には、どこか覚えがあるのです。
 それは、私たちが日常の中で、初めて出会った猫に「……触らせてくれるかな?」と、おずおずと指を差し出す、あの瞬間の危うい期待にそっくりです。


3.胃の腑まで作品に染まる

 眼で十分に愉しんだ後は、胃袋もまた、物語の一部にしなければなりません。

コラボメニュー、京都国際マンガミュージアムショップの告知パネル

 併設された「前田珈琲」には、劇中の再現メニューが姿を現します。

上記パネルの拡大
…気になるフレンチトースト

 学芸室の應矢泰紀さんに誘われるように品書きを覗けば、そこには「メゴコロ・ネコメのフレンチトースト」。熱いコーヒーと一緒に味わいたいですね。(店内には本物の猫はいません。どうぞ安心してコーヒーもお楽しみください)


インフォメーション

  • 会期: 2025年12月13日(土)~ 2026年4月7日(火)

  • 会場: 京都国際マンガミュージアム 2階 ギャラリー1・2・3

  • 時間: 午前10時~午後5時(最終入館 16:30)

  • 休館日: 毎週水曜日

  • 料金: 展示観覧は無料(ミュージアム入館料が別途必要です)

  • 写真撮影:一部不可  (※本記事の写真は特別許可に基づき撮影しています)


おまけ:帰り道も、猫の影。

京都国際マンガミュージアムショップ、ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット展のコーナー

 心地よい疲れを連れてショップへ向かうと、そこには約3,000点もの、俗世の欲を刺激する品々が。(オリジナルグッズや企画展・イベントの関連商品など)

劇中再現エプロン

 見つけてしまいました。あの「エプロン」を。物語を愛する人はもちろん、猫という生き物の魔力に平伏している人ならば、素通りすることなど到底叶わないでしょう。

 人類を救うなんて大層なことはできないけれど、せめて、この掌が覚えている「柔らかいもの」への畏敬の念だけは、守り抜きたい。 
 そんな、可笑しくて少し切ない決意を胸に抱く、至福の「もふもふパニック」体験でした。

 皆さんの身の回りで起きた「とんでもニャイ出来事」も、ぜひコメント欄で教えてくださいね。


【次回の予告】

次回は、「車はなぜ曲がる?を指先で理解する ―― 親子で組み立てた“世界の設計図”」を予定しています(毎週水曜更新)。


※この記事は、京都国際マンガミュージアムの許可を得て執筆・掲載しています。
※掲載画像の転載・二次利用はご遠慮ください。
©ホークマン・メカルーツ/マッグガーデン/ニャイリビ製作委員会

取材・文・写真:入江玄(IRIE ART LOG)


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