ゼロの先にあるもの
「さん、にー、いち、ゼロ」
——その声が耳を打つたび、私は壊される。
意識が虚ろになっていき、彼の声だけが脳を支配する。
「いい子だ」
低く、よく通る声だった。
それが私の耳朶をかすめた瞬間、全身にぞくりとした熱が走る。
膝が震え、足元が頼りなくなる。
彼の指先が、ゆっくりと私の頬を撫でる。
触れているのは皮膚の表面だけのはずなのに、まるで心の奥深くまで浸透していくような感覚。
「Look」
喉の奥に指示が絡みつき、抗う余地を奪っていく。
それなのに、苦しくはなかった。
むしろ、心地よかった。
首を横に振ることはできない。
頷くことすら許されない
——そんな錯覚すら抱く。
「……はい」
かすれた声で応じると、彼は静かに笑った。
「素直でいい子だ」
それだけで、意識が真っ白になる。
全身を満たすのは、甘く痺れるような快楽。体の奥からせり上がる熱が、私を支配する。
私は彼の言葉で、彼の手で、作り変えられていく。
「もっと……言って……」
自分で発した言葉に、自分自身が震えた。
こんなに欲しがる自分を、知らなかった。
「心を開いてくれてうれしいよ」
くすりと笑う彼の声が、喉の奥に絡みつく。
そのたびに、私は彼に縋るように体を震わせた。
褒められるたびに、快楽が全身を支配する。
もう、何もいらない。
ただ、彼の言葉があれば——それでいい。
「そう、もっと俺に見せて」
彼の言葉が降りるたびに、私の身体は敏感に反応した。
まるで、自分の意思が削ぎ落とされ、彼の言葉だけが私を形作っていくようだった。
「Kneel」
喉奥を撫でるような命令に、私は無意識のうちに足元が崩れた。
抵抗しようとする意志は、最初からなかったのかもしれない。
ゆっくりと膝を折り、床に触れる。
その瞬間、目が合うのが怖くなった。
ふっと視線を逸らしてしまった。
——バチン、と音が鳴るわけでもないのに、鋭い静寂が落ちる。
「……ちゃんとこっちを見ろ」
冷ややかな声が降る。
いつもより、少しだけ低い。
「絶対に目を逸らすな」
びくりと肩が震えた。心臓が跳ね上がる。
彼の指先が顎を掬い、強引に顔を上げさせる。
「目をそらした罰は必要ですか?」
怒っているのか、それとも試しているのか。
その声の温度がわからなくて、息を詰めた。
「ごめん……なさい……」
やっとのことで声を絞り出すと、彼はしばらく私を見つめ、それから満足げに口角を上げた。
「言う事聞ける子は可愛いね」
その言葉が落ちた瞬間、快楽の波が全身を駆け巡る。全身が熱に呑まれ、甘く震えた。
「褒められると、どんどん気持ちよくなっちゃうね」
図星だった。
「もっと褒めて……もっと……」
自分からねだるような声が漏れた瞬間、彼が満足そうに微笑むのが見えた。
「素直で可愛いね」
褒め言葉が降るたびに、快楽が全身を支配する。熱に溺れながら、私は彼の腕の中で震えた。
——あと少し、もう少しだけ、彼の言葉に包まれていたい。
そんな欲望が、私の中で止めどなく膨れ上がっていった。
「そんなに褒めてほしいの?」
彼の指先が、そっと頬をなぞる。熱を帯びた肌に触れるだけで、びくりと身体が震えた。
「ん……」
意識が彼の言葉に絡め取られる。
「もっと素直に言ってみな」
「Say」
彼の声が、私の鼓膜を優しく叩く。
「褒めて……ください……」
震える声で言うと、彼は満足げに微笑み、私の髪をゆっくりと撫でた。
「いい子」
また、快楽が全身を駆け巡る。
呼吸が乱れ、胸の奥がじわりと熱を持つ。
「偉いね、ちゃんとお願いできた」
そう言って、彼はさらに深く私を見つめた。
その目に囚われるたび、逃げ場がなくなる。
——逃げるつもりなんて、もうないのに。
「もっと言いたくなるだろう?」
問いかけるように顎を掬われる。
指先が触れるだけで、奥底に眠っていた何かがせり上がってくる。
「……褒めて……もっと……」
自分の声が、甘く濡れているのがわかる。
「よく言えた」
彼の手が頬を撫でるたび、言葉が降るたび、私は溶けていく。
「褒められると、どんどん気持ちよくなっちゃうね」
図星だった。
「もっと……言って……」
その言葉が落ちた瞬間、また熱が全身を支配する。
彼の手が触れるたび、声が響くたび、私は深く深く、彼に堕ちていく——。
「もっと……言って……」
震える声が漏れた瞬間、彼の手が頬から首筋へと滑り、熱を帯びた指先が肌を這う。
ぞくりとした快感が背筋を駆け抜け、膝の奥が震えた。
「もっと気持ちよくなっちゃおっか」
低く、甘い声。
その声だけで、胸の奥が疼く。
「いい子だね」
耳元で囁かれた瞬間、全身が熱に包まれる。
快感が波のように押し寄せ、意識が白く霞んでいく。
「ちゃんと従えて偉いね」
彼の言葉が、私の心を深く支配していく。
「ほら、言葉を聞いていると、もっともっと気持ちよくなっていくよ」
意識の奥に、甘い痺れが広がっていく。
「……あ、っ……!」
身体の奥底で、何かが弾ける音がした。
頭の芯が真っ白になり、ただ彼の言葉だけが脳を支配する。
全身が痺れ、快楽の波が何度も押し寄せてくる。
「気持ちよくなれたね、偉いね」
彼の声が、優しく包み込むように降る。
褒められながら、快楽の余韻に震える。
——もう、抗えない。
彼の言葉に支配されることが、こんなにも幸福だなんて。
「さん、にー、いち、ゼロ」
彼の囁きが最後に響き、私は甘く崩れ落ちた。
