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【P-Scribe Lab】 とある医療従事者の論文執筆コンプレックス脱却までの軌跡

-論文執筆ゼミ「P-Scribe Lab」の全容をご紹介します-

「査読付き国際誌に論文を出す」それはずっと遠い目標のような夢でした。私はこれまで学会発表はそれなりに重ねてきたものの、本格的な論文を書いた経験はほとんどなく、いつしか論文執筆に対して大きなコンプレックスを抱えていました。過去に、何度か「論文を書かなくては」と奮起し、興味のあるテーマを定め、関連論文を片っ端から読むところまではできても、いざ研究に取り組もうと計画書を作成して実践しようとすると、あれこれ悩んでいるうちに「今は忙しいから、落ち着いてからやろう」と先延ばしになっていたのが現実でした。これまで専門家から研究計画に協力いただく機会もあったのですが、結局自分の胆力の無さでやり切ることができず、論文執筆は私にとって、自分の力不足を突きつけられる象徴的な作業でもありました。


【著者略歴】

山川 青空海(やまかわ さくみ)
理学療法士・健康経営エキスパートアドバイザー・第一種衛生管理者。県立広島大学卒業後、広島県の回復期病院でリハビリに従事しながら、県立広島大学大学院 総合学術研究科 修士課程終了。現在は福岡県北九州市の産業医科大学若松病院で、スポーツ整形外科のリハビリに従事している。今後は医療保険外領域で、健康経営・産業保健支援の一環として、企業の従業員に対する筋骨格系症状に対する重症化予防・転倒予防・メンタルヘルス支援に携わるために日々活動している。


論文ゼミP-Scribe Labとの出会い

そんな停滞感を抱え続けていたある日、何気なく見ていたXのタイムラインで、あるゼミの募集広告を目にしました。「3ヶ月間の短期サポートで英語論文を作成し、査読付き国際誌へ投稿を目指す」という、まさに夢のような触れ込みでした。説明会の案内ツイートを読んでいるうちに、「もしかしたら、これを逃したらまた何年も先送りになるかもしれない」という一種の焦りのようなものが湧き上がり、「このゼミに賭けてみよう」という衝動に駆られ応募しました。

締め切りを過ぎていたにも関わらずダメ元での参加の意思表明が、秤谷さんとの最初のコンタクトでした。相手方のプロフィールも確認せず、このポストだけ見て連絡をとったのは人生で初めてです

顔合わせとスタート


 プログラムが始まると、まずはオリエンテーションの場で、私を含めた全4名の「同期メンバー」が顔合わせをしました。年齢も職業も異なる4人のメンバーは、それぞれすでに自分の研究テーマを決めており、すでに執筆作業に移っているメンバーもいました。ところが私はといえば、そもそもテーマが何も決まっていない。むしろ「何を書けばいいのだろう」という入口の段階で、自分だけスタートラインにすら立っていないような焦りを感じたことをよく覚えています。

しかし、運営の秤谷さんは「テーマを決めるところから一緒にやりましょう」と笑顔で言ってくださいました。一文だけでも書いたらすぐに共有してほしい、ともアドバイスされ、「失敗を恐れず、まずは手を動かすこと」を強く促されました。この言葉にどれほど救われたか分かりません。とにかく書く。書いて、すぐに確認してもらう。そのプロセスを繰り返していくうちに、「完璧でなくても、まずは下手なりに書き始める」という習慣が少しずつ身についていきました(これは運営の秤谷さんが優しいだけなので他のメンターや研究協力者では通用しない可能性が高いので要注意)。

テーマ決め

 テーマについても、私は医療職のウェルビーイングに興味があるという曖昧な希望だけを伝えていました。実際、私は自分自身が医療従事者の立場で仕事をしており、「医療従事者が抱えるストレスは想像以上に深刻で、特に医師や看護師は燃え尽き症候群が多い」状態を日々目にしたり、耳にしたりしておりました。ただ、その声をどのように研究テーマとしてまとめればいいのかは全く見当がついておりませんでした。

すると、運営の秤谷さんは「それなら、ウェルビーイングの専門家や、実際に臨床の第一線で働く医師の方を共著者として紹介しましょう」と提案してくださり、自分のバックグラウンドだけでは不足しがちな医師の働き方の視点や実践的エビデンスの補強や共著として関わっていただける専門家との協働で補っていただきました。これは本当にありがたい申し出で、私は医師免許を持っているわけでもなければ、ウェルビーイング研究の第一人者というわけでもない。実践と理論を繋げる力が自分には足りないのではないか、と日ごろから感じていただけに、専門家とのコラボレーションによる相乗効果は計り知れませんでした

論文執筆の葛藤


とはいえ、実際に共著者の先生方とディスカッションを進めていくと、背景知識の差や目線の違いに苦しむ場面がたびたび訪れました。私の立場から見えている課題と、医師の先生から見えている課題の優先順位が微妙に異なったり、「この部分はもっと深く論じるべき」「ここはさらっと書いていい」といったディテールで意見がすれ違ったりもしました。

実際には先生方はとても優しく丁寧に教えてくださいましたが、私としては常に「ご迷惑をかけてしまっている」という申し訳なさもありました。同時に、秤谷さんとのやり取りでも何度も助言をいただくことになりました。論文の形式や、Letterとしてどこまで詳細を書くべきなのかの判断、英語特有の論文表現の細かなコツなど、自分が考えていた以上に乗り越えるべきハードルは多くありました。特に「Letter」という形式は制限字数があり、言葉をあれこれ削ってコンパクトにまとめる作業には苦戦した。正直、頭がごちゃごちゃになりかけたときもありましたが、それでも見捨てず、根気強く付き合っていただいたおかげで、徐々に論文らしい形が見えてきました。

査読の壁

 そしていよいよ投稿先を選ぶ段階になり、「産業保健分野のジャーナルに出したい」と希望を出しました。医療職のストレスやメンタルヘルスは、産業保健や労働衛生の観点からも重要なトピックであり、何よりこのテーマに関心を持つ読者が多いのではないかと考えたからです。しかし、実際に投稿を始めてみると、想像以上に苦戦を強いられ、いくつかのリジェクトをもらったときはさすがに落ち込みました。

ここまで頑張って書いたのに通らないのか、と自信を失いかけましたが、その度にメンターや共著の先生方の励ましてくださったおかげで、投稿し続けることができました。結果的には別の査読付き国際誌へ方向転換をして投稿することになりましたが、そのプロセスで私自身の中にあった迷いや、自分の論文の強み・弱みを整理できたのは大きな収穫だったと思います。視点を変えてみれば、このテーマは産業保健というよりも医療従事者のメンタルヘルスを主軸に置いた雑誌の方が受け入れられやすいのではないか、というアイデアも生まれました。最終的に査読付き国際誌の「Letter to the Editor」という形で投稿し、無事にリバイズ(修正)を経てから受理に至ったときには、心底ほっとすると同時に、これまでサポートしてくださったすべての方への感謝の念で胸がいっぱいになりました

迷いから完成へ

 振り返れば、もっと要領よくやれた人もいたかもしれません。実際、一緒に始めた同期の4人は、最初からテーマをきちんと決めているだけあって、私よりはるかにスムーズに原稿を仕上げていたように見えました。しかし、自分なりにたくさん遠回りしながらも、挫折しかけながらも、一つ一つ学びを積み重ねてきました。最終的に、最初は何も決まっておらず、下手をすれば書き出すことさえできなかった私が、「Letterとしての完成形」を手にして国際誌に受理されたという事実は不思議な感覚です。

国際誌として、自分の名前が筆頭者として掲載されているのは今でも夢見心地のような感覚です

Yamakawa, S., Ono, M., Kusu, K. & Hakariya, H. Applying Corporate Well-Being Strategies to Medical Practice: Addressing Physician Burnout and Overwork. Int. J. Heal. Plan. Manag. (2025)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/hpm.3928


 この経験を通じて強く感じたのは、「誰かのサポートを受けることは、決して甘えではない」ということです。一人で抱え込んでいたら、私はきっと今回も途中で投げ出していたと思います。しかし、運営の秤谷さんが「どんなに短い文でもいいから書いてみてください」と言ってくれたからこそ、私は一歩ずつ前に進めました。医師の共著者やウェルビーイングの専門家の皆さんがいなければ、専門知識の欠落による誤解や見落としにすら気づけませんでした。私のように、論文執筆に苦手意識を抱えている人にとって、このような伴走型のサポートはまさに“命綱”ともいえる存在でした。そうして完成した私の初めての国際誌掲載のLetterは、医療職のウェルビーイングに関わる課題を多角的に考察したものに仕上がりました。これは間違いなく共著の先生方と、秤谷さん、そして同期の皆さんとのチームワークの賜物です。「支えてくださる方々の知見やアドバイスが細部にまで詰め込まれている」それを実感すればするほど、ますます感謝の気持ちが募るばかりです。「論文執筆は孤独な作業」というイメージが長らく私の中にありましたが、実際はまったくそんなことはありませんでした。むしろ、「一人では作れないからこそ、他者との連携や助け合いが生きる余地がある」その事実に気づけただけでも、この短期サポートに飛び込んだ価値は大いにあったと断言できます。

今後の論文執筆ゼミ「P-Scribe Lab」に参加をご検討の方々の参考になりましたら幸いです。

IPhaSからのご案内

「アカデミズムを社会にひらく」ことを理念に、超初心者が3ヶ月で論文執筆に取り組むゼミ P-Scribe Lab (通称PSL)を開講しております。

note記事を通して少しでもPSLやIPhaSの活動に興味を持っていただいた方は、連絡先からお気軽にお問合せいただければと思います。個別の面談機会なども随時承っております。

薬と社会健康科学研究所 事務局
info.iphas@gmail.com

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