禁欲とフェロモン
「私たちは見えない匂いに導かれて生きている。理性よりも、分子が先に恋をしているのだ。」
フェロモンとは何か、そしてフェロモンがどのように作られ、他者にどうのような影響を与えるのか。さらには禁欲とフェロモンの関係性について生化学的、精神的な観点で共有する。
周りを惹きつけるフェロモンの正体
潜在意識の魅力:2つの主要なフェロモン
1. アンドロステノン (Androstenone)
特性: 男らしさと支配力。
男性の汗、尿、唾液、特に思春期以降の脇の下と性器のアポクリン腺で分泌される。役割: 支配力、積極性、および、交配の好み(Mating Preference)と呼ばれるの生殖信号の伝達を行う。
2. アンドロステノール (Androstenol)
特性: 「アイスブレーカー・フェロモン」と呼ばれている。
アンドロステノンの還元体。新鮮な汗や皮脂に多く、時間が経つと酸化してアンドロステノンに変換される。役割: 男性をより親しみやすく、自信があり、友好的にする。健康さや若々しさのマーカーとして機能し、スピ系の界隈では「自然なカリスマ性」や「オーラ」として解釈されている。
魅力の基盤:アンドロゲン
上2つで紹介したフェロモンとは別に、アンドロゲンという内分泌ホルモンも重要なので紹介する。アンドロゲンはテストステロンなどのホルモンの総称。
アンドロゲンのベースラインレベルが高い男性は、特定のフェロモンをより多く生成する傾向があることが研究で示されており、テストステロンは、フェロモンに対する神経応答性を高め、男性の魅力と社会的行動に関連するフェロモンの生成と有効性に大きく影響を与える。
ホルモンとフェロモンの違い
ホルモン:血液やリンパ液に乗って体内を移動し心臓などに作用する化学物質(例:アドレナリン)。
フェロモン:空気中に放出され、別の個体の鼻にある受容体(鋤鼻器)によって感知される。これにより、感知した個体の行動に無意識レベルで変化を引き起こす。(変化については後ほど)
フェロモンの生成
フェロモンは、ホルモンと同様に、コレステロールの代謝物であるプレグネノロンから作られる。
プレグネノロンは、「CYP17A1」という酵素の働きで、分子の一部が切断され、二重結合が形成される。これにより、フェロモンの「親」となる物質、アンドロスタディエノール (Androstadienol) が生成される。これは脇の下の匂いのムスク様(ジャコウのような)成分である。
次に、このアンドロスタディエノールは別の酵素(3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ)によって、アンドロスタジエノン (Androstadienone) に変換される。この「プレグネノロン → アンドロスタジエノン」という一連の反応は、主に脇の下(腋窩)と性器(精巣・卵巣)の2箇所で起こる。
脇の下と性器での違い
脇の下では、アンドロスタジエノンおよびアンドロスタディエノールで停止し、これらが汗の匂いの一部として体外に放出される。
性器の場合、アンドロスタジエノンはさらに次のステップに進む。
性器(精巣・卵巣)では、アンドロスタジエノンを基にして、性別によって異なる種類のフェロモンが作られる。
男性(精巣)の場合
精巣では、「5α-リダクターゼ」という酵素がアンドロスタジエノンに作用し、より強力な男性フェロモンである 5α-アンドロステノン (5-alpha Androstenone) が生成される。
これは、テストステロンがより強力なジヒドロテストステロン(DHT)になる反応と非常によく似ている。
またこの 5α-アンドロステノンは、一部の香水などにごく微量、成分として使用されることがある。
女性(卵巣)の場合
卵巣では、「アロマターゼ」(エストロゲン合成酵素とも呼ばれる)という酵素がアンドロスタジエノンに作用し、ステロイド骨格の一部が芳香環(ベンゼン環)に変換され、女性フェロモンである エストラテトラエノール (Estratetraenol) が生成される。
フェロモンの影響
女性フェロモン(エストラテトラエノール)は生殖能力の無意識的な開示である。有名な「ストリッパー研究」では、ストリップダンサーの女性たちが、排卵期(最も妊娠しやすい時期)に男性客から得たチップの額が、他のどの時期よりも有意に多いことが示されている。これは、女性が排卵期に放つフェロモンが、男性の行動に無意識的で好意的な影響を与え、経済的な判断にまで作用した可能性を示唆している。
男性フェロモン(アンドロスタジエノン)は女性のネガティブな感情を抑制する。アンドロスタジエノンをごく微量嗅がせた実験では、女性被験者の「神経質、緊張、その他のネガティブな感情状態」が有意に減少する効果が示されている。これは、男性のフェロモンが女性の気分を向上させたり、リラックスさせたりする作用を持つ可能性を示しており、女性は妊娠可能性が最も高い排卵期に、男性フェロモンである5α-アンドロステノンの検知能力が高まることも示されている。本能的に生殖能力の信号を優先して感知している。
フェロモンを増やすには?
禁欲
一番大事だが、詳細は後述。運動
運動による発汗はフェロモンの派生物を含み、テストステロンレベルを向上させる。汗の質が大事で、食事の内容(自然由来の肉、卵、野菜)と水分補給などを意識する必要がある。睡眠
最低7〜8時間の質の高い睡眠を確保することが不可欠。サプリ
亜鉛。寝る前に1錠。ただし空腹時はダメ。
禁欲とフェロモンの関係性
頻繁な射精は、脳に対して生殖に成功したという誤った生物学的メッセージを送る。生殖に成功したと認識した脳はエネルギーを節約するために、フェロモン(アンドロスタジエノンなど)の生成や放出を停止させたり、そのレベルを低下させたりする。そして何よりプロラクチンレベルを上昇させ、テストステロンレベルを低下させる。
プロラクチンについてはまた別の記事で詳しく深堀しようと思う。
禁欲を行うと、プロラクチンの抑制とテストステロンとアンドロゲンの増加をさせることができる。プロラクチンの抑制をすることで、精巣内のライディッヒ細胞の機能を改善し、テストステロン生成を促進する。テストステロンレベルが上昇すると、アンドロステノンなどのアンドロゲン由来フェロモンの生成と効力を高める。
さいごに
フェロモンは目に見えないが、私たちの魅力や人間関係に密かに影響を与えている。
禁欲と生活習慣の改善がその信号を高め、潜在的な魅力を引き出す手助けになる。
理性より先に、分子があなたを語り始めるのだ。
