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【Ep05】伝説の職人が僕たちに託したもの|INNER SHIFT 〜〝らしさ〟に出会える物語〜

この文章は12分程度で読めます。
特に、効率や利益を求めた結果、丁寧で誠実な対応ができないことにストレスを抱えているあなたへ。
評価されないあなたのその感覚が間違っていないと、静かに肯定してくれる物語です。
ぜひ最後まで読んでみてください。

はじめに

こんにちは。
『INNER SHIFT 〜〝らしさ〟に出会える物語〜』キュレーターの「マサ」です。

日々の暮らしの中で、気付かないうちに——
自分の気持ちを置き去りにしてしまうことって、ありませんか?

仕事、家庭、SNS…
誰かの期待や評価ばかりを追いかけて、「本当は自分、どうしたいんだっけ?」と立ち止まる瞬間。

そんなときに、そっと耳を傾けてみてほしい物語があります。

伝統を受け継ぎながらも、自分の「軸」を大事にしながら生きる職人たちの物語。

誰かの価値観に流されずに、自分らしく生きるヒントがそこにあります。

あなたが自分らしく生きるための、小さなきっかけを一緒に探していけたらうれしいです。

もし、心に残った言葉や、感じたことがあれば——ぜひ、コメントやメッセージであなたの声も聞かせてくださいね。



手描き友禅染匠吉田さん

ものづくりの世界って、どこか「特別な人が行く道」に見えるかもしれません。

でもその根っこには、誰にでも通じる「迷い」や「誇り」が息づいていて、それが、じんわりと心に響く瞬間があります。

今日ご紹介するのは、京都で手描き友禅を手がける染匠・吉田隆男さん。
職人の世界に身を置いて50年以上の大ベテランです。

かつて若手職人を束ねる団体を立ち上げたり、異業種と手を組んで体験型のプログラムを仕掛けたり。
さらには、ダイアナ妃来日時のおもてなしを任されたこともあるという、まさに〝伝説の染匠〟

祇園のお茶屋の女将さんに写真を見せた知人が、「この人、簡単に口きける人ちゃうで」と言われた、なんて話もあるほどです。

普段は表に出ることの少ない職人の世界で、ひときわ存在感を放つ方だということが伝わると思います。

でも、僕が吉田さんを紹介したいと思ったのは、その「すごい経歴」ではありません。

実際にお話を伺って、心の底から「この人、かっこいいな」と思った――その一言に尽きます。

自分の信念を、誰にも押しつけずに、でも一歩も譲らずに貫いている——そんな人なんです。

実は、僕が「〝志〟を持った人にもっと話を聞いてみたい」と思い立ったのも、吉田さんとの出会いがきっかけでした。

最初にお会いしたとき、僕は何気なくこう尋ねました。
「後継者問題って、大変ですよね?」

すると吉田さんは、静かに――でも迷いなく、こうおっしゃいました。

「わかってへんな。」

一瞬、時間が止まりました。

でも、その後に続いた言葉が、今でもずっと、心に残っています。


継承とは


「〝後継者を作って技術を伝えること〟だけが継承やないで。」

職人の世界はな、基礎を身につけるのに10年、本当に一人前になるには30年、40年かかるんや。

そんだけ時間がかかるのは、もちろん技術もあるけど、それ以上に「考え方」や「姿勢」まで学なアカンからや

でもな、今の現実を言えば、着物業界そのものが縮小してる。
昔みたいにたくさんの仕事をこなして、経験を積む環境がなくなってきてる。せやから、後継者を取るっていうのは、すごく大きなリスクにもなるんや。

それでも、希望はある。技術を未来に残す方法はちゃんとある。

それは、今の自分の仕事に、全力で向き合うことや

お客さんの期待を超える仕事をすれば、喜んでもらえる。
そうすれば、大事に長く着てもらえるやろ?

そうしたら何十年後かに、昭和や平成のキモノに興味を持った誰かが、自分の作品に出会うかもしれへん。

そうやって想いと技術が伝わっていくことも、立派な継承なんや。

それにな、伝統を守るっていうのは、技術だけやない。
わしらが本当に引き継いできたのは、「なぜその技術が生まれたのか」という考え方や

たとえば、キモノは型紙があれば、ある程度どこでも作れる。
実際、安いものは海外の工場でも作られてるやろ?
でも、日本の職人が手がけたキモノが“すごい”って言われる。

何でやと思う?

キモノはな、観賞用やなくて、日常で使うもんとしてつくられてる。
だから、ええキモノは傷んでも直せるように、ちゃんと作られてるんや。

修理ができるように設計されてるっちゅうことは、長く着てほしいいう想いが最初から込められてるってことや

そういう考え方があるから、何代にも渡って受け継がれていく。

見た目の美しさだけやなくて、「使われるものとしてどうあるべきか」を突き詰めてきた結果が、日本のキモノなんや。

そして、なんで基礎に10年、一人前に30年もかかるんか?

そら技術もあるけど、それ以上に「この仕事に向き合う姿勢」を学なアカンからや

その姿勢や考え方が、〝軸〟になる。
そしてそれが〝志〟になる。

技術だけを受け継いでも、キモノそのものが消えたら終わりやろ?
でも、仕事に対する考え方、志は、どんな業界でも受け継げる

時代が変われば産業は変わるんや。
キモノ業界だけにこだわらんと、もっと大きな視野で考えた方がいい。

たとえば、パソコン使うような今の仕事でも、「どう向き合うか」という部分を継承してくれたら、それはもう立派な後継者なんや。

---

吉田さんの言葉には、長年この道を歩いてきた人にしか持ち得ない視点と、それを未来へ手渡そうとする静かな情熱が詰まっていました。

ここからは、僕・マサが実際にお話を伺って感じたことを、少しだけお話しさせてください。


マサの考察

今の時代、ひとつの道を何十年も続ける人って、そんなに多くないのかもしれません。
僕自身も転職を何度もしていますし、正直それはどこか遠い話に感じていました。

でも吉田さんと話して感じたのは、

「何をやってきたか」の〝実績〟よりも、
「どんな想いでやってきたか」の〝向き合い方〟が、
これほどまでに人の心を打つのか、ということ。

それって、僕たちが今やってる仕事にも、きっと通じる気がしたんです。

▼ジャパンブランドの価値の本質

吉田さんの話の中で、僕の心に、そしてこのプロジェクトの運命に、決定的な光を射した言葉があります。

「わしらが引き継いできたのは、その技術の根底にある考え方なんや」。

この言葉は、僕が職人さんに話を聞き始めた理由そのものです。

〝受け継ぐ〟って聞くと、技術とかノウハウとか、そういう目に見えるものを思い浮かべがちですよね。

でも、吉田さんが大事にしているのは、そういった表面的な部分以上に、
その背景にある「哲学」や「想い」です。

たとえば、「良いキモノは直せるように作られている」という事実。
それは単なる機能ではありません。

そこには、「ものは大切に使い、長く寄り添うべきだ」という、作り手の哲学が息づいています。

大量生産・大量消費が当たり前の時代にあって、これほど“思いやり”に満ちた設計思想が、他にあるでしょうか。

この「考え方」こそが、日本のものづくりの本質的な価値なのだと、僕は感じたんです。

僕たちのまわりには、使い捨てられていくものがたくさんあります。
人間関係も、仕事も、SNSの言葉さえも、あっという間に切り捨てられてしまう時代。

そんな中でーー
「この人のために、時間をかけて、丁寧に向き合おう」

そう思えることって、むしろ今いちばん新しい生き方なのかもしれません。

▼INNER SHIFTが生まれた理由

そしてもうひとつ、僕を打ちのめした言葉があります。

「どんな志を持って仕事と向き合うかという部分を継承してくれたら、それはもう立派な後継者なんや」


吉田さんは、同じ業界にいる必要すらない、と言い切りました。

〝想い〟は、業界や職種を超えて、受け継ぐことができる、と。

この言葉に触れた瞬間、僕の中で、まだ輪郭さえも持たなかった衝動が、確かな形になりました。

このままでは、誰にも知られることなく、時間の中に消えてしまうかもしれない〝志〟。

未来の日本にとって、絶対に失ってはならない『声なき声』
その、目には見えないけれど、確かに存在する『想い』や『姿勢』

それを、現代に響く言葉へと翻訳し、次の世代へと手渡すこと。

僕が本当にやりたかったのは、これだったんだ、と。
そのための「器」となるものを作りたいと思った。

これが、INNER SHIFTが生まれた本当の理由です。

▼継承とは

「技術を残す」「会社を残す」

そういう継承の形だけじゃなくて、志があれば、どんな仕事の中にも、その精神を活かすことができる。

そして僕たち一人ひとりが、自分の今の仕事や日常の中でその“想い”を受け取ることができるのです。

吉田さんの哲学は、決して特別な世界の話ではありません。

それは、このINNER SHIFTが、なぜ生まれ、何のために存在するのか、その理由そのものなのです。

このあまりにも大きな問いを、吉田さんは、ただ静かに、その生き様で僕に手渡してくれました。

僕は、僕にできるやり方で、そのバトンを次の誰かへと繋いでいきたい。
心の底から、そう思っています。


あなたの〝らしさ〟につながる視点

吉田さんの話を聞いていて、ふと思いました。

「伝統って、本当に“特別な人だけ”が継ぐものなんだろうか?」

もしかしたら——

業界とか肩書きではなくて、〝考え方〟や〝姿勢〟を次の人へ手渡していくこと。
それこそが、本当の意味で「伝統を継ぐ」ということなのかもしれません。

そう考えると、今の僕たちの仕事や生活の中にも、小さな〝志のバトン〟を受け取ることはできると思うんです。

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たとえば、あなたが飲食店で働いていたとしましょう。
ただ料理を出すだけでなく、

「この一皿が、お客さんが今日を乗り切ったご褒美になればいいな」
「疲れている様に見えるあの人が、少しでも元気になってくれたら」

そんな風に、ひとつひとつの料理に心を込めて届けていたら——

それは、ただの接客ではなく、吉田さんの言う〝人に寄り添う〟という「想いを持った仕事」になっていきます。

そして、あなたの料理や接客が「ここに来るとホッとする」と感じてもらえたなら、そのお店は、ただ食べに来るだけの場所じゃなくて、誰かにとっての〝特別な場所〟になるかもしれません。

食という手段を通じて、人の心を支える。
それもまた、志が生きる仕事のかたちだと思います。

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もしくは、あなたが美容師なら。
ただ髪を切るだけじゃなくて、

「この人が、明日を気持ちよく迎えられるように」
「この髪型が、その人らしさを引き出せるように」

そんなふうに相手の想いに寄り添って施術をしていれば——

それは、目の前の人のこれからに寄り添うこと。
まさに〝想い〟を込めたものづくりの精神と同じだと思うんです。

もし、その想いが伝われば、「あなたに切ってもらいたい」と言ってもらえる日がくるかもしれません。

そうすれば、たとえ1ヶ月に1回、1時間だけだったとしても、あなたはその人の人生に、ずっと寄り添い続ける存在になれる。

美容師という仕事が、〝誰かの人生に寄り添って、幸せをつくる仕事〟に変わっていく——

そんな可能性だってあるんです。

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教育の現場でも、同じことが言えるかもしれません。
テストの点数を上げるためだけじゃなくて、

「この子が、困難にぶつかったとき、自分で考えて前に進めるように」

そう願って、生徒一人ひとりに真剣に向き合っていたら——

きっと、数年後、ふと思い出したときに「あのときの先生の言葉に救われた」と感じてくれる子が出てくるかもしれません。

教えるという行為のなかに、〝生き方〟を届けていく。

それもまた、技術ではなく〝志〟を伝える仕事なんだと思います。

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そして、もしあなたが営業職だったとしたら。
ただモノを売るだけじゃなくて、

「この提案、本当に相手の役に立つかな?」
「この商品が届いたあと、どんなふうに毎日が変わるんだろう?」

そんなふうに、相手の立場を考えながら提案したら——

それってもう、ただ売るだけの仕事じゃなくて、〝信頼を育てる仕事〟としての価値を持ちはじめます。

ひとつひとつの出会いに、心を込めて向き合う。

そうすれば、「あなたから買いたい」って言ってもらえる日がくるかもしれません。
「あのときの提案があったから、今があるんです」って感謝されることだってあるかもしれない。

営業の仕事が、〝モノを届ける〟から〝誰かの未来をつくる〟ことに変わっていく。

そんな可能性も、きっとあるんじゃないかなと思います。

そしてそれらの姿勢はきっと、吉田さんが「着る人の未来に責任を持つ」という想いで着物を仕立てることと、どこか同じ地平にあるんじゃないでしょうか。

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こうした行動の根っこにあるのは、ただのテクニックではなく、「誰かのために、ていねいに、長く役立つものを届けたい」という〝志〟です。

どんな仕事にも、どんな立場にも、自分なりの想いを宿すことはできるし、それを通じて、誰かの心や人生にそっと寄り添っていくことができるんだと思います。


まとめ

吉田さんは、自分の技術がこの先どうなるか、後継者がいるかいないかにこだわっているようには見えませんでした。

ただ、

「想いを込めて仕事をすること」

その大切さを、ブレることなく語ってくれました。

どれだけ時代が変わっても、人の心に響くものには必ず理由があります。

だからこそ、自分の手から生まれるものに、ちゃんと誇りと責任を持っていたい。
そんなふうに思うんです。

たとえすぐに受け継がれなかったとしても、誰かの心に、何かが届いていたとしたら——それだけで、十分なんじゃないかって。

吉田さんの生き方そのものが、まさに〝志の継承〟なんだと、僕は感じました。

今回の物語、皆さんはどう感じましたか?

今、目の前の仕事に、どんな思いを込めて取り組めるでしょうか?
誰かのために、本気で仕事に向き合えていますか?

どうか、自分の中にある〝想い〟に、そっと耳を傾けてみてください。

---

それではまた次回、新しい物語でお会いしましょう。
次も、きっとあなたの心を揺さぶる「生き方」に出会えるはずです。

この記事から感じたあなたの気づき、実践してみて感じたことなど、ぜひコメントで教えてください。
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次回予告

次回は表具師、松尾高志さんの物語をお届けします。

文化遺産である数々の掛け軸を修繕する表具師、松尾さんが大切にしてきたこと。

未来につなぐ仕事の価値は、コスパやタイパで測れない。
非効率な「一手間」に表れる〝らしさ〟を一緒に感じてください。


新企画

そして、もう一つの物語が、始まりました。

本編では語られることのない、物語の舞台裏。
大々的に公開するのはちょっと違う気がするけど、本当に興味を持ってくれた人には聞いてほしい。

「本当は公開したくないけどあなたには伝えたい話」をお届けします。

表側では語らなかった僕の本音や、紹介した物語にリンクした僕自身の経験の話、時にはちょっと実験的な内容なんかもお届けしたいと考えています。こちらも、あわせてお楽しみいただけたら、嬉しいです。

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マサ|「伝統産業の職人哲学」を組織開発に活かす〝企画師〟/ エスノグラフィック・アーキテクト もっといろんな人を取材して紹介していきたいと思っています。 いただいたチップは取材費に充てて還元します。 ぜひ応援してください。

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