いきものがかりmeets2ディスクレビュー&個人的ランキング
本日リリースになった「いきものがかり meets 2」についてのレビュー。一見辛口にも見えますが、個人的には真剣に評価した結果だと考えておりますので、悪しからず。
【総評】
前作「いきものがかり meets」を『原点にして頂点』にするための2作目、といった印象。それほどまでに1作目がよく出来すぎていた。もとより「トリビュートアルバム」というのは基本的にはアーティスト自らというより、レーベルの意思によって制作されるものである側面があるが、しかしこの「いきものがかり meets」にはかなりの割合でメンバーである吉岡聖恵と水野良樹(※敬称略失礼致します)による監修の部分が大きいと見られるので、その点でこの企画は特異だと言えるだろう。ひょっとしたらこの度の「meets 2」はどちらかといえば水野良樹氏サイドの意見や意思を多分に含むものであるのかもしれない。そんなラインナップだった。
【個人的ランキングにおける注意点】
1.①いきものがかり「超ありがとう」、②NAYON「気まぐれロマンティック」についてはこのアルバムのリリースに先んじて既に発表されているもののため、ランキングを水平に評価したいことから除外してある。
2.玉置浩二✕いきものがかり「帰りたくなったよ」については、筆者が利用したLINE MUSIC内のストリーミングサービス内で配信されていなかったため、こちらも除外。
3.リリース当日中に、LINE MUSIC内のストリーミングサービスを利用し、アルバムを3周した上で制作したランキングになるため、曲に対しての決定的な評価ではない。あくまでも暫定的なもの。これからもきっと聴くことになるだろうが、その時のメンタルの状況や自分の状態、季節などによって聴こえが変わってくることは大いにあり得るので、何か変化があったりした場合は何かしらの媒体で発表することが、あるかも、しれない。
4.前作「いきものがかり meets」においてもトリビュートされていた『SAKURA』、『コイスルオトメ』、『花は桜 君は美し』、『ブルーバード』、『YELL』、『じょいふる』については前作のものとの比較も考慮したものとする。
【個人的ランキングおよび曲の感想について】
第10位 JUJU「SAKURA」
JUJUさん特有の「安定」と「不安定」の狭間を非常にスリリングに反復横跳びするようなボーカルディレクションが魅力的。琴の音色からもはや桜というよりマンサクの花を想起させるような、和風さをより強調したものになっていた。
しかしこれは前作の梅田サイファープロデュースが個人的にあまりに印象深いものだったため、この順位に相対的に落ち着いてしまった。
リスナーとしてかなり欲張りな方ではあると思っているので、トリビュートアルバムにはいつも【強烈で衝撃的かつ刺激的な斬新性】を求めてしまうのだ。
第9位 うるわしきひと/にしな
にしなさんの曲はあまり聴いていなかったのだけれど、やはり一聴して「女声版 尾崎世界観(クリープハイプ)」を感じるような、独特な発声が魅力的だった。爽やかなバンドサウンドに対して、少しクセのある、そしてクセになるボーカルがとても印象的だった。
第8位 コイスルオトメ/モノンクル
別のトリビュートアルバムにはなるが、「RADWIMPS Tribute Dear Jubilee」に収録されているiriの『ふたりごと』のようなサウンドプロデュースに唸った。前作のSUPER BEAVERの爽やかでありながらも胸を締め付けられるバンドサウンドとは対を成す、思いっきりこの恋を楽しんでいると言わんばかりの浮遊感、きっとはじめての恋に浮き足立つ様がボーカルからもトラックからも感じとることができて非常によかった。
第7位 じょいふる/スキマスイッチ
スキマスイッチ節が良くも悪くも全開だった。なぜそう思うかについてはJUJUさんのSAKURAにて説明済みなので割愛。アイナ・ジ・エンドのボーカルと西田修大/君島大空による編曲が100点中250点くらいを叩き出してしまっていたことや、前述のJUJUもスキマスイッチもベテランであることから、ある種新規性を産み出すことはやはり難しいのだろうと思わざるを得ない所ではあるが、やはりこちらの期待を超えて、裏切ってきてほしいという望みがあるからこそ、どうしても厳しくなってしまうものだ。
第6位 キミがいる/なきごと
今回のmeets 2の大きな特徴のひとつにロックバンドの躍進が挙げられる。そのなかのひとりがこのなきごとだった。実はなきごとについてはあまりよく知らなかったので、ほぼ事前情報なしに聴いていた私は「4人組ロックバンドなのかな」と思っていたが、調べてみるといま現在在籍のメンバーはひとりのみらしい。そんな中での「キミがいる」。とても歴史を感じるではないか。
第5位 YELL/紫 今
紫 今は名前だけ聞いたことはあったけど、曲は聞いたことなかったアーティストのひとり。前作のゆずのトリビュートが個人的にはフェイバリットではあるものの、しかしこちらのアレンジも負けていないなと感じた。打ち込みを多用、決して多くはないだろうストリングスの編成によってこの曲の繊細さに磨きをかけている。これからの彼女にも注目したくなるようなアレンジだった。
第4位 ブルーバード/礼賛
いったいこのラランドのサーヤという「芸人」には他に何ができないというのだろうか。本家の方ではファルセットで歌唱していることが今では多くなったサビ前の「飛び〜たつ〜」の部分。そこを朗々かつ軽々とミックスボイスで歌い上げているではないか。元来この礼賛というバンドは実力派集団のバンドだとは心得ていたが、その圧倒的なプレイをモロにくらった。前作のyama✕tofubeatsのもうこれ以上ないだろうと思っていたアレンジ。メンバーの川谷絵音も間違いなくこの存在が念頭にあったことだろう。それを超えてくるのではなく、原曲に限りなく近い、しかしそれでいて自分たちの個性を失うことなく表現しコントロールすることに成功していて、つくづく末恐ろしい人々だなぁと痛感した。
第3位 風が吹いている/原口沙輔
個人的な下馬評では1位になるだろうと予想していたこちら。ではなぜ3位に甘んじているかというと、私の予想とは真逆のアレンジだったからだ。(しかしそれを悪いとは思っておらずむしろ驚きではあった。ただ私として物足りなさを感じていた我儘である。)
「人マニア」等で知られる彼故に、もっとアタックの強い、他楽曲で例えるなら、椎名林檎女史の「さらば純情」のようなシンセサイザーがよく効いた、歪ませたようなビート感があるリアレンジを期待していた。
しかし蓋を空けてみればどうだ。
私はひとつ大切なことを忘れていたことを思い出した。そして恐らくそれは彼がこの楽曲を選んだとしたなら、その理由にあたるものだろう出来事である。
彼は東京パラリンピックでの閉会式でパフォーマンスしているのだ。恐らくその視座があってこそのアレンジなのだろうと。それは何より速やかに腑に落ちた。
場所や時は違えど、同じオリンピックという景色を見た者たちによる「きょうえん」の瞬間、とても美しかった。
第2位 ラブソングはとまらないよ/ねぐせ
恐れていたことが起こってしまった。
私はねぐせというバンドが苦手である。
というより、昨今の「下半身系バンド」が本当に受け付けないのだ。
ねぐせも例に漏れずそのひとつだと心得ていいて、他にも甲子園のタイアップソングで炎上していたりと、とにかく駄目だった。これを聴くまでは。
吉岡聖恵をヒロインとした朝ドラがもし作られるならせめて声だけはりょたちにすべきではなかろうかとさえ思ってしまった、美少女すぎるボーカル。
クラスにいたなら視線をこちらに目配せされてしまった暁にはもう恋に落ちる以外の選択肢を奪われてしまっただろう、そんな人みたいな声。
私はどうかしてしまったのだろうか。いや、ならばとっくにどうかしているだろう。
そこに乗っかるねぐせらしさ(んなことしったこっちゃないってくらいには私はねぐせを聴いてこなかったわけだが、それでもきっとそうなんだろうと「わからせられる」ような、そんな音)がたまらなく心地よい。
恋とは何かを聞かれたら、もちろん本家のものを差し出したって構わないし、むしろそうあるべきなんだろうけれど、もしこれを読んだあなたさえよければ、これを差し出してみてもいいかもしれない。この曲は、この音は、きっと、いや間違いなく、恋だ。
第1位 花は桜 君は美し/友成空
「鬼の宴」をなんかしょっちゅう耳にするなぁとなってから随分時が流れたような気がしているけれど、そんなものとは比にならないほどの悠久の時の流れを感じさせる…いや、これではまどろっこしいだろうか。
『波うららかに、めおと日和』というドラマを本当に最初の方の途中までしか見てない私だが、この曲を聴いた時に真っ先に明確に浮かんだ場面がそれだった。私の思い違いでなければ、さしずめこれは瀧昌さまサイドの恋文にも似た恋唄だろうか。
平安、江戸中期、明治、大正のような、洒脱でモダンな、香しいほどの「和の恋」の切なさを思い起こさせるようなインスト、アレンジ、ボーカル。
似たようなアーティストで、和ぬかやなとりなら出来たかと聞かれたら難しかったかも知れないと答えるだろう。恐らくだがリスペクトの度合いが違う。友成空の圧倒的ないきものがかりの「花は桜 君は美し」への畏敬の念があってこそ成立したトリビュート。
前作の現在活動休止中のAwesome city clubのそれはオープニングを飾るものであって、それを担うにふさわしい、彼ららしさが光るものだったところからの差別化を図るのはかなり難しかっただろうに、それを見事成し遂げた彼の実力に脱帽する。
【おわりに】
近頃の私は禄に仕事もこなせず、落ち込んでばかりの日々で、唯一の趣味だと言えた音楽やドラマや映画でさえまともに楽しめなくなるほど、心が枯れきってきた。砂漠で花を育てているようなものである。答えは明快、まともに育つはずなどないのだ。
そんな心にオアシスを与えてくれたのが、このアルバムだったのだと思う。
壊れかけているのはきっと私の心だけではなくて、世界そのものの均衡も崩れかけているような中で、怒り狂い悲しみ、そんなもので満ち溢れてしまったこんな世界にいる私たちだからこそ、今こそ「いきものがかり」が必要なのではないだろうか。
次回作があれば期待したい。
