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5千文字かけて私が名乗りを上げるだけのエッセイ。【何者でもない全ての人へ】

 私は今月まで、何者でもありませんでした。

 20代半ば、会社員。毎日9時から18時まで働いて、残業も給料も少ない。仕事は好きだけれど、傍から見ればつまらないデータ入力。
 起きる。出社。働く。帰る。2時間くらい自由時間、寝る。

 別に、人生にうんざりしていたわけじゃない。
 ただ——

”何者かになりたい”と思っていた。
”何者にもなれない”とも、思っていた。

 現実が見えている、つもりでした。
 夢を叶えるなんて大それたこと、できはしないんだと。それで大人になったつもりでした。

 でも、私は”何者か”になった。
 それは傍から見れば、相も変わらず大したことのないものかもしれない。それでも、私が胸を張って、そうだと名乗れるものに。私はなった。
 私の夢は、小さくても、つまらなくても、叶った。
 私が書いた物語は、確かに、誰かに届いた。

 これはその記録であり——同時に、
「物語を持つ全ての人は、何者かになれる」という宣言です。


第1章:物語との出会い

 1年前のことです。
 起きる。出社。働く。帰る。2時間くらい自由時間、寝る。
 この、2時間くらいの自由時間。これが全ての始まりでした。

 小説を、書いていたんです。
 ライトノベルでした。当時、とある科学の超電磁砲のアニメ4期が制作決定して、はしゃいで、いてもたってもいられなくなって。
 気が付いたら、私は超電磁砲と同じく、超能力で戦うファンタジー小説を、書き始めた。

 この小説には、たくさんの物が詰まりました。

 最初に詰まったのは、私の中にある、”理想の主人公像”でした。
 最強だけれど、よく言われる「異世界チーレム系」のような、強さに無自覚だったり、フラットな存在じゃない。
 むしろ、自分が強いことを自覚して、絶対者として振る舞う、そんなともすると悪役にも見えてしまうようなキャラクター性
 それを、「メスガキ」というポップな属性で読者の口当たりをまろやかにし、むしろ可愛さや新鮮さに変換しました。

 次に詰めたのは、20年いくつかの人生の中で抱えてきた、”恐怖”というテーマでした。
 ずっと怖かったこと。今でも怖いこと。きっと誰にとっても、他人事ではない、恐怖。それは少し言葉を濁せば「運命」です。
 最強のメスガキは、運命を恐れている。
 最強のメスガキでさえ、運命を恐れている。

 彼女が物語という旅路の中で、それを乗り越えるのか、受け入れるのか。それとも、受け入れられないまま飲み込まれてしまうのか。
 いつしか、その物語は、私にとって「人間」そのものを描く壮大な物語へと変化したのです。

 それが完結した時。私はその物語に、”夢”を詰め込みました。
 私の全てが、そこに詰まっていた。物語の旅路の中で、最強のメスガキがたどった結末。そこには確かに、全てが込められていたんです。
 だからそれを、誰かに届けたいと思いました。
 本にしたいと思いました。
 誰かがページをめくって、それを読んで。その先で、その人の心に何かが灯る。そんな未来を夢想しました。
 私は、”作家”になりたいと思いました。

第2章:クラファン×同人

 そんな時です。あるYoutuberが炎上していました。
 クラウドファンディングで資金集めをしたんだけれど、リターン到着予定を大幅に過ぎても用意できていないとのことでした。

 その謝罪動画を見て、たくさんの人がコメント欄で怒っていたんです。
 当然ではあると思いました。お金を払ったのに、商品が来ない。それは悲しいことだなと。

 ——この時、私の中にピンとくるものがあったんです。
 そう。

「私なら、小説は完結しているからリターンは必ず用意できる」
「クラファンなら、支援者分だけ本を用意すれば安価で同人誌を作れる」

 クラファン×同人×受注生産。

 すぐさま私は、印刷所のHPにアクセスして簡易な見積をしてみました。
 約8万円。私の当時の預金残高は約100万円。

 行ける。やりたい。
 私は、前人未到の”クラファン同人作家”になりたい。

第3章:はじめる準備と最初の挫折

 そこからは早かったです。
 すぐにクラファンプラットフォームのCAMPFIREに会員登録をして、会社に副業申請を出して、プロジェクトページを作った。

 クラファン×同人×受注生産。
 これは支援者も創作者も、双方がウィンウィンの関係で安心して支援できる全く新しい販売形式であり、同人界に革命を起こせるものだ。
 そんな触れ込みでさっそく形にしたのです。

 一週間も経たずにプロジェクトページはある程度形になり、盛り上げるための戦略もいくつか考えた。具体的には表紙絵の有償依頼であったり、声優に作品のプロローグを朗読してもらうPVを作ろうとしてみたり。
 依頼も案外あっさりできた。費用も思ったほどではなかった。

 驚くほど順調でしたが、ここで壁にぶつかります。
 そう。マーケティングです。

 当然のことでした。
 もともとSNSをやっていなかった私が急にXをはじめたって上手くいかない。Youtubeも同様。
 フォロー、登録者は一週間たってもゼロ。いいねすらまともにつかない。
 当時は2月の中旬で、クラファン開始まであと1ヶ月半あった。けれども「ゼロ」という数字は私を絶望させるのには充分でした。

 けれども、これは当然のこと。当時の私は初心者らしく、方向性を間違っていたのだと思います。
 そもそも、「クラファン×同人×受注生産」という販売形式を前面に押し出していますが、新しい試みというのは当然よくわからないもの。おまけに商売の話なわけだから、私は怪しかったんだと思います。
 それに、結局売るのは小説なのに、今一つ「どんな話なのか」という点を強調できていなかった。棚に並べたつもりでしたが、実際には何も並べることができていなかったのですね。

 しかしながら、初心者なのでそんなことには気づくはずもありません。
 藁にもすがる思いでnoteにやってきたわけですが——ここで、奇跡が起きます。

第4章:noteの奇跡

 noteにて私は作品の連載と、宣伝活動をはじめました。
 それはもう、必死に。興味のありそうな人は片っ端からフォローしたしスキしたし、フィーリングが合うと思ったら積極的にコメント。
 血眼になりました。

 すると、一週間弱ほどで奇跡が起きました。
 なんと、私の活動に興味を持ってくれた方が紹介記事を書いてくださったのです。

 その出来事は私に「結局人×人なのだ」という当然の教訓を与えてくれ、そこから私は、どうすれば興味を持ってもらえるのかということを真剣に考えるようになりました。

 まず、作品の連載は欠かさず行い、全ての回にAIイラストながらその内容に応じたサムネイルを付けるようにしました。
 そして全ての回にマガジンへのリンクと、次の話へのリンクを載せ、徹底的に読者が物語を楽しめる設計にしたのです。

 次に、私なりの創作論や自作品の魅力を伝える記事、キャラクター紹介記事などを充実させ、私という存在そのものにも興味を持ってくれるよう努力をしました。

 作品だけでも、作者だけでもダメ。
 何者でもない個人がクラファン同人作家になるために必要なのは、面白い物語と、確固たる意志を言語化できる作者自身の魅力なのだ。

 それが、このnoteで学んだことです。

 そして、クラファン開始までの1ヶ月半で。
 私は300人のフォロワーを抱え、全体ビューは25,000にも上るクリエイターにまで成長することができました。

第5章:作品へのこだわり

 さて、noteで稲荷文庫というコミュニティを成長させていた一方で、私は作品のクオリティアップにも余念がありませんでした。

 まず、表紙のイラストにはプロを採用。
 
イラストレーターの方に決して安くはない報酬をお支払いし、もとはAIイラストであった表紙をハイクオリティなものにブラッシュアップ。
 主人公の見た目を超強化いたしました。

 さらに主人公のモノローグである作品のプロローグを、声優の山田じぇみ子様に声を当てていただく朗読PVまでも制作。
【CV 山田じぇみ子様】オリジナル小説「デッドエンド。」プロローグ朗読PV

 妥協なく充実させた本作は、並みの同人誌としてのレベルを大幅に逸脱した素晴らしい作品になっていたのです。

 フォロワー300人という土台と、キッチリ高クオリティな作品。その両方を整えることができた私は、いよいよクラファンの世界に飛び込みます。

第6章:クラファンの世界

 しかしクラファンの世界というのは中々に厳しく。
 達成率は85%。結論から言えば、目標には届かない結果となりました。

 それはもうヘラったものでございますが——では、何も得られなかったのかと言えば、全くそんなことはありませんでした。

 まず、目標金額は約10万円。その85%ということは、8万5千円もの支援を集めることができたということです。
 これは皆様が想像されるような通常の同人誌であれば、余裕で制作費をペイできるどころか大儲けである金額となっています。
 私の同人誌は異常だから赤字ですが。

 そして、支援者様の数は25人にも上ります。
 リアルの友人は支援しなかったどころか軽い気持ちで無茶な要求をしてくる理不尽な人もいた中で、たくさんの方が、しかも大半が知らない方が、私にこれだけの金額を預けてくれたのです。

 これはとんでもなく重い事実であり、
 最初、「クラファン×同人×受注生産」という商売の形を売ろうとしていた私は、プロジェクトが終わったころには認識を改めていました。

「この人たちが喜んでくれる本を作ってみせる」

 クラファン×同人×受注生産。
 これは当時BOOTHでの受注生産販売を知らなかった私が思いついた形式でしたが、クラファン同人の強みはまさに、この意識の中にあったのです。

第7章:読者に喜んでもらうために

 プロジェクトを終えた私は早速印刷所にて見積もりを取り、表紙を作り、入稿まで3日で済ませました。
 製作費は表紙代などトータルすると10万円をゆうに超えますが、クオリティに徹底的にこだわり抜き、読者の皆様に喜んでもらうべく実際に素晴らしいものを作ることができました。

 私と支援者様のお金と思いの結晶、気になることかと思います。
 そしてどこかで——「言うても同人誌だろう」という思いがあるのではないか、とも思います。
 たかがホチキス止めの紙束に10万て。とね。しかもクラファンが成功とはいえない状況で大したものなど作れないと。

 そんな皆様には朗報です。私と支援者様が作ったこの「デッドエンド。」は、皆様の想像を超えます。
 さっそく、こちらをご覧ください。

 当然のように無線綴じのガチ文庫本形式。
 プロに依頼した表紙、クリア加工の巻きカバー。
 ページ数は480ページにもなりずっしりと存在感を放ち、しかし1ページあたりの行数を8行に抑えたことによってスラスラ読める。
 そして読者を迷子にさせない糸しおり。

 いかがでしょう。想像以上だったでしょ?

 この素晴らしい作品を届けるため、私は徹底的に努力しました。
 ひとつひとつを手作業で袋詰めし、ペーパークッションをたっぷり使った箱の中に丁寧に梱包。
 送付状には直筆のお礼メッセージを一言ずつ記載し、お送りしています。

 断言しますが、並みの商業誌じゃこんな体験はできません。
 並の同人誌じゃこんなクオリティになりません。
 全ては、「デッドエンド。」に支援してくださった皆様に、温かく、特別な読書体験を送り届けるため。

 クラファン×同人×受注生産。
 それは、支援してくれる方がいてはじめて、作品が世に出るということ。誰も支援してくれなければ、そもそも生まれることすらない。
 クラファンであるがゆえに、中には期待のお気持ちを上乗せ支援として送ってくださる方もいらっしゃいました。

 この販売形式の強み。
 それは、支援してくれた方ひとりひとりを想って作品を作ることができるってことなんです。
 文字通り、支援者様ひとりひとりのためだけに本が生まれます。
 そのためだけに、その本が存在するんです。
 その人だけに送ります。
 だから、この読書体験は、支援者様個々人だけのものなのです。

 そんな体験、どこにも売っていません。
 そんな体験、作者も早々できません。

 BOOTHでの受注生産を知らなかったがために偶発的に生まれた販売形式ですが、いざ走ってみて思うこと。
 それは、こんな素晴らしい体験他にはないってことなのです。

おわりに

 ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
 何者でもない私は、たった10万そこらで、素晴らしい読書体験を届けることができるようになりました。

 これはもちろん、簡単なことではありません。
 そもそも作品を完成させるという壁。
 フォロワーを獲得し信頼の土台を作る壁。
 販売するための壁。
 手間や費用の壁。
 いろんな壁があって、「誰にでもできる」と簡単に申し上げることは、当然ですができないのです。

 ですが、「無理」でもありません。
 文庫本を作ることはできるし、販売することもできる。
 きっと読者ひとりひとりの胸に何か大きなものを刻みつけるような、特別な読書体験を作ることも、できるんです。

 私は、クラファン×同人×受注生産という世界をもっと広げていきたい。
 この素晴らしい読書体験をもっと広めたい。
 だからご興味があれば相談してください。一緒に考えてみましょう。

 そして、「デッドエンド。」全5巻を完走したい。今回のプロジェクトは1巻ですから、まだ、私の物語は始まったばかりです。
 ご興味があれば2巻以降を買ってみてください。全巻セットもご用意しいたします……!

 私が踏み出したこの一歩は、最初の一歩です。
 次の一歩は、できれば——あなたと踏み出したい。


 ——さて、申し遅れましたね。

 私は「稲荷文庫」。
 世界初の、クラファン同人作家です。

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