24時間ジム+パーソナルという「箱型ビジネス」に天井を感じた話
自分がやっていることに天井を感じる、というのは少し嫌な感覚です。でも最近、正直にそう思うようになってきたんですよね。
うちは人口3万人の新潟県見附市で、24時間ジムとパーソナルトレーニングを組み合わせた形で運営しています。地方では比較的オーソドックスなモデルです。業界の相場でいうと、24時間ジムの月会費にパーソナルトレーニング月4回をセットにして、月額2万円前後というのが一つの基準になっています。
このモデルを始めた理由は今でも理にかなっていると思っています。インターネットビジネス時代に「毎月ゼロに戻される」恐怖を長く味わったので、積み上がる売上構造が欲しかった。24時間ジムは会員が継続してくれる限り、月額が積み上がっていく。パーソナルは客単価を上げる。そのセットで「持久力のある事業」にしようと考えていました。
間違ってはいなかった。でも、天井が見えてきた。
「月2万円×何人」の先に何があるか
箱型ビジネスの構造はシンプルです。収益は「客単価×会員数」で決まります。月2万円なら、100人で200万円、200人で400万円。人口3万人の見附市でこの規模まで持っていくのに、それなりの時間と労力がかかります。
ただ、この計算式には物理的な上限があります。箱の広さ、スタッフの数、時間帯ごとの密度。これ以上広げようとすれば、別の箱、つまり2店舗目が必要になる。
でも多店舗展開には一種の罠があって、出すのは比較的容易でも、撤退が難しい。固定費が乗り続けるなかで、1店舗目の利益が2店舗目の赤字を補填するフェーズが長く続く。地方の場合、そもそもマーケット規模が限られているので、「どの商圏にいくつ出す」という選択肢自体が東京と全然違います。
上を見れば多店舗展開のリスク、横を見れば同業者の参入。箱型ビジネスは参入障壁が低いんですよね。土地があれば機材を入れて開業できる。うちの近隣の長岡でも新しいジムのオープン予定が出てきています。差別化しにくい構造の中で、価格競争に引きずられていくのは時間の問題です。
スタッフが幸せになりにくい構造
もう一つ、もっと根本的なことが気になっています。労働集約型の問題です。
パーソナルトレーニングというのはトレーナーが時間を売る仕事です。1時間のセッションには1時間の人件費がかかる。売上を上げようとすれば、セッション数を増やすか、単価を上げるか、スタッフを増やすかしかない。
スタッフを増やすと管理コストが上がる。セッション数を増やすとトレーナーの稼働が重くなる。体力的・精神的な限界が早く来る。単価を上げると顧客が離れるリスクが出る。
地方ジムのトレーナーが長続きしにくいのも、この構造から来ている部分があると思っています。頑張れば頑張るほど体が消耗していく仕事で、それが必ずしも収入の増加に比例しない。「頑張っている人が正しく報われる世の中であるべき」というのがうちの根本的な考え方なんですが、今の箱型モデルのままでは、スタッフにとってその状況をつくるのが難しい。
これは単なる経営効率の問題じゃなくて、自分が事業でやりたいことと、モデルの構造が少しずれてきているという感覚です。
なぜ今まで気にならなかったか
正直に言うと、開業当初はここまで考えていませんでした。
「積み上がる仕組みを作る」という最初の問いには、24時間ジムという答えが出た。それで一定の安定感が生まれた時点で、次の問いを立てるのが遅れたんだと思います。
事業が小さい間は「まず売上を立てること」が最優先で、構造の問題は後回しになりやすい。ある程度の水準に来てから初めて、「このまま同じことを続けて、5年後10年後に何が積み上がっているか」という問いが現実味を帯びてくる。
今がそのタイミングです。
答えはまだ出ていない
では箱型ビジネスを辞めるのか、というとそうではありません。今あるものを壊してゼロから始めるのは、自分のリスク感覚に合わない。
ただ、「月2万円×人数」の外側に何かを作れないか、という問いは持ち始めています。トレーナーの価値提供を「体を鍛える時間」から別の何かに再定義できるか。箱の中だけに収益構造を閉じないやり方があるか。
パーソナルトレーニングをフロントエンドにして、その先に別の価値提供をつなげる構造。まだ漠然としているんですが、今のモデルへの問いがなければこの考えも出てこなかったと思っています。
天井を感じることは、次の問いを立てるためのきっかけなんですよね。少なくとも今はそう解釈しています。
