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短編小説|僕がゾンビキラーになった夜|熱帯夜

#シロクマ文芸部
#熱帯夜

僕がゾンビキラーになった夜
(約2000字)


熱帯夜にぴったりだと思ってさっき参加してきた『肝試しモニターバイト』の話を書こうと思う。

スキマバイトのサイトで『実働一時間で報酬一万円! 呪いの館からの脱出! ゾンビを倒して秘宝を手に入れろ』みたいな文句で募集されていたのを今日の昼間に見つけて、友人と一緒に申し込んだら、早速今夜来てくれと連絡がきた。それで、さっきそのバイトに行ってきて、いま帰ってきたところなんだ。

いやぁ、これが本当に怖かった。一気に体が冷えたね。暑い日にはオススメです。でも、怖いのが苦手な人はやめておいたほうがいいかも。以下、詳しく書いておきます!


・・・・


数時間前、夜の八時に僕らが指定された集合場所へ行ったら、脱出ゲームのスタッフだという男の人が現れた。 「ゲーム中の指示はすべてこの専用スマホ経由で送られます」と言われ、私物の荷物やスマホは一旦すべてスタッフに預けるシステムだった。専用スマホのほかにも、鞄や懐中電灯、工具などのいくつかのアイテムを僕らは手渡された。

案内された会場は、集合場所のすぐ近く、住宅街の中に佇む大きな洋館だった。 その敷地に入るところから、僕と友人のミッションがスタートした。

僕らは、既に鍵が開いていた玄関から暗い館内に入り、渡された「財宝の地図」を頼りに二階の洋室を目指した。大きな階段ホールには絵画や美術品が飾られていて、本物の洋館のような重々しい雰囲気が漂っていた。

二階に上がった時だ。廊下の奥から、誰かが歩くようなミシミシという軋み音が聞こえてきた。 直後、手渡されたスマホが震えて連絡がきた。

『ゾンビ(※人形です)が現れた! 先ほど渡した武器(バール)で、叩き潰してください』

僕と友人は息をのんでバールを構えた。暗がりの中から、だんだんとゾンビらしき影が僕らに近づいてくる。 恐怖と興奮がピークに達した僕らは、影に向かって思いっきり……バールを振り下ろした。

「ガシッ」という、重い手ごたえが腕に伝わってきた。

「うわっ……!?」 友人が短い悲鳴を上げた。

「なんか、感触がリアルすぎないか?」 と友人。

「あぁ、ヤバいな、人形のクオリティがここまで高いとは思わなかったな」と言って、僕もなるべく冷静になろうとしたけど、冷や汗が止まらなくて全身が本当に震えていた。

そしたら、その時、スマホに次のメッセージが届いた。 『よくやった! さぁ財宝の部屋へ急ぐんだ! 時間がない!』と指示されて、僕らはほとんどパニックになりながらも、指示された部屋へ急いだ。

今振り返ってみると、たぶん会場にはカメラか何かが設置されていて、運営側が僕らの行動をリアルタイムでチェックできるようになっていたんだと思う。スマホには、次々とタイミングよく指示が来た。

『さぁその部屋の壁際のタンスの中だ』 『そうだ、そのタンスだ。引き出しを開けて、中の宝石をできるだけたくさん鞄につめるんだ』 『追手がくる。時間がないぞ、あと百八十秒以内に館を出るんだ』

指示されるがままに、僕らは夢中で宝石を鞄に詰め込んだ。 「なぁ、この宝石もなんか本格的すぎないか……?」と友人が引きつった顔で囁いてきた。僕は「本当に……震えるほど凝った演出だ……でもそんなこと言っている暇はないんだった! 早く脱出だ!」と叫んで、怯えている友人を急かした。

部屋を出て急いで廊下を戻ろうとした時、さっき叩き潰して倒れていたゾンビの背中を、僕は思わず踏みつけてしまった。 その瞬間、足元から「うぇっ……」という、低く苦しそうな唸り声が聞こえた。

暗くてよく見えなかったけれど、ゾンビの頭からは赤黒い液体が流れていて、廊下に広がっていたようにも見えた(たぶん、僕もあまりの恐怖で幻覚を見ていたのだろう)。でも、とにかく僕は一刻も早くその場から脱出することを急いだ。スマホの画面はいつのまにか『タイムリミットまであと〇〇秒』というカウントダウンの表示に変わっていた。

闇の中の恐怖とリアルさのせいで、本当に生きた心地がしない肝試しだったけど、僕らはなんとか、宝石の詰まった鞄を抱えて、制限時間内にダッシュで洋館を抜け出すことができた。

敷地の外に出ると、さっきのスタッフの男が待っていた。 「よくやった、ミッション成功だ」 と言って、男は僕らにスマホを返し、宝石の詰まった鞄と交換に、僕らに報酬の一万円札を一枚ずつ手渡した。そしてすぐ、どこかに消えていった。


……と、まぁこんな感じの恐怖体験をして、さっきなんとか家に帰ってきたところ。 あぁ、こんな恐ろしいバイトは二度とごめんだな、というのが今の正直な気持ち。

今夜はもう遅いし、この記事を書き終えたらすぐ寝ようと思う。読んでくれてありがとう。スキ、コメント、チップ等してくれると励みになります!


……と思ったら、今、誰かが僕の家の玄関前に来た気がする。

ひとりじゃなそうだけど、こんな夜遅くに誰だろう?



チャイムが鳴らされ、ドアの向こうの誰かが僕の名前を呼んだ。




あぁ、もしかして、



あれは本物だったのか……?



再び、僕の血の気がひいていく。




まさか……





あのゾンビが仲間を連れて復讐に……?


(了)



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