論文紹介:COVID-19ワクチン接種を受けた甲状腺機能障害患者における甲状腺眼症の発症リスク
前回の記事に続いて、甲状腺に対する自己免疫反応と新型コロナウイルスワクチン接種の関連を示唆した論文を紹介しておきたい。
「Risk of developing thyroid eye disease in patients with thyroid dysfunction that received a COVID-19 vaccination」
(Can J Ophthalmol . 2025 Jul 17:S0008-4182(25)00320-5.)
前回の論文は症例報告だが、こちらはより新しいコホート研究である。甲状腺機能障害患者におけるmRNAワクチン接種後の甲状腺眼症(TED)発症リスクを評価するために、後ろ向きコホート研究を実施している。
TEDは、甲状腺関連の抗体が眼球周囲の組織に付着し、炎症を起こす事で発症する。甲状腺関連の抗体に起因した自己免疫反応という事で、バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患に関連したものが広く知られている。今回の研究では、2021年3月以前にTEDの既往がなく、他の眼窩炎症性疾患の既往がない甲状腺機能亢進症患者を対象として、ワクチン接種を受けた患者と受けなかった患者のTED発生率を比較した。この研究ではインフルエンザワクチンと三種混合ワクチンの接種を受けた患者のTED発生率も比較しており、新型コロナウイルスワクチンに特有のリスクもきちんと評価している。
その結果、甲状腺機能亢進症でTEDの徴候のない患者373,909人が同定され、ワクチン接種の有無についてマッチングと評価を行った結果としては、69,378人の患者がCOVID-19ワクチン群とCOVID-19ワクチン非接種群に分けられた。TED発症リスクについての解析では、COVID-19ワクチン未接種群(RR = 1.49、95%CI: 1.39-1.58)、三種混合ワクチン群(RR = 1.80、95%CI: 1.56-2.06)、インフルエンザワクチン群(RR = 1.68、95%CI: 1.49-1.88)と比較して、COVID-19ワクチン接種によりTED発症リスクが増加することがわかった。
結論として甲状腺機能亢進症の患者は、COVID-19ワクチン接種後にTEDを発症するリスクが高い事が示された。また、未接種群のみならず、既存のワクチン製剤よりも高いリスクを示しており、新型コロナウイルスワクチンに特有の免疫学的リスクが存在する事が改めて示されている。これらの所見を確認するためにはさらなる研究が必要であるが、基礎に自己免疫性甲状腺機能障害がある患者は、TEDの徴候と症状に関する教育を受け、COVID-19ワクチン接種後のTED発症についてモニターすべきであると筆者らは述べている。
今まで何回も言ってきた事だが、新型コロナウイルスワクチンに特有の免疫学的リスクは、明確に自己免疫反応の誘導リスクとなり得る。自己免疫疾患自体が稀な疾患であるため、通常の安全性試験では見いだせていないだけで、数年後に後ろ向きコホート研究を実施する事で証明されるリスクだという事は使用開始前から訴え続けてきた。現在、それが実際に現実となってきており、いくつもの自己免疫疾患でコホート研究による免疫学的リスクが証明されてきている。新型コロナウイルスワクチン、RNAワクチンというのは通常のワクチンモダリティとは全く異なる免疫学的リスクを有しているのだという事実を改めて認識する必要がある。
