📙『鬼滅の刃』に『夜と霧』を重ねる休日
🎬 Hanako Holiday|はなこホリディ
令和7年7月13日 晴れ
※この連載は、アクティブフランチャイジー花子が、自分自身のために深呼吸するリアルな休日の記録です。
日曜日の朝は、ロボット掃除機の音で始まります。
タイマー設定された働き者が、誰よりも早く今日を動かしはじめます。
その小さな機械音に目を覚まし、
「ああ、今日は日曜日なんだな」と二度寝。
誰も急がない。
お弁当は作らなくていいし、
洗濯物はたためなくても罪にはなりません。
そんなふうにゆるやかに流れる時間と空間は、
いつの間にか、家族との会話を運んでくれます。
「鬼滅の刃、新しい映画始まるよ」
息子がそう教えてくれたとき、私は「そうなのね」と微笑んで返しました。
その映画を観に行く相手は、私ではなく、“彼女”だそうです。
何年か前、子どもたちと並んでテレビで観た『無限列車編』のことを思い出しました。
当時、私はさほど期待していませんでしたが、
エンドロールが流れた頃には誰よりも泣いていました。
主題歌「炎」が流れると、今でもあの夜の感情がよみがえります。
私の体が、歌とセットで物語を覚えているようで、涙が流れるのです。
「公開記念でテレビでやってたよ」と夫が録画してくれた「遊郭編」を観ました。
私が注目したのは、“回想”の瞬間です。
炭治郎が窮地に立たされると、
必ず家族の記憶が彼を救い出す場面が挿入されます。
それは炭治郎だけではありません。
鬼滅の刃に登場するすべての主要キャラクターが、「思い出」によって自分を取り戻す瞬間を持っています。
敵である鬼たちですら、最期の瞬間には必ず誰かの愛情や、かつての優しい記憶に還っていくのです。
鬼滅という物語は、壮絶な戦いや力の表現で成り立っているように見えて、
実はその根幹に「記憶」があります。
思い出によって、自分を保ち、世界とつながること──それこそが、この物語の静かな支柱なのかもしれません。
私は大好きな本『夜と霧』をふと思い出しました。
著者の精神科医ヴィクトール・フランクルは、ナチスの強制収容所に囚われながら、「人間とは何か」「希望とはどこから生まれるか」を深く見つめました。
極限状況の中で彼を支えたのは、「妻の記憶と愛」だったそうです。
彼女が生きているかどうかすら知らなかったにもかかわらず、
彼はその“記憶”を胸に、あの極限状態のひとつひとつの瞬間を耐え抜いたのです。
そして、それは彼だけでなく、過酷な環境を耐え抜いた皆が同意見だったというのです。
記憶とは、過去に属するものではなく、
生きている私の現在に作用しつづける、静かな力になるのですね。
私にも、思い出すだけで心が揺れる記憶があります。
小学校二年生のある日のことです。
膝に違和感を覚えて目をやると、そこにはスズメバチがじっととまっていました。
言葉も出せず凍りついた私を見て、姉が急いで母を呼んでくれました。
母は、何のためらいも見せずに、素手でスズメバチを振り払いました。
そして私の手を強く引き、部屋の外へ。
スズメバチだけを閉じ込めて、私は安全な場所に。
そのときの必死な母の表情、手の温かさ、戸の閉まる音──
すべてがスローモーションのように、今も脳裏に刻まれています。
そして、もう一人。
朝6時。静まり返った家の中で、仏壇に向かって手を合わせるひいおばあちゃんの後ろ姿。
経を唱えるその声は、老いた声でありながら、確かなリズムを持ち、
空気に染み込むような深さがありました。
毎朝欠かさず、お花の水を替え、ごはんを供え、20分ほど静かに祈る。
私は宗教に傾倒しているわけではありません。
けれどそんなひいおばあちゃんが言う「毎日お願いしてるから、大丈夫よ」という一言が、子どもの私には、世界を守る呪文のように思えたのです。
そして、父。
愛情表現は、日本人男性としては豊かだった父。何かを買ってきてくれたときには、決まってこう聞くのです。
「愛情感じた?」と、いたずらっぽい笑顔で。
その一言は、冗談のようでいて、どこか本気でもあって、
私は笑いながら「うん」と答えていました。
言葉で照れを包みながら、ちゃんと愛を届ける人でした。
けれど、そんなおちゃめさの奥には、
誰にも見せないような男気がありました。
私が不安に押しつぶされそうになったある日、
父はまっすぐに言いました。
「大丈夫。何があっても俺が守るから。安心しろ。」
心に深く届く言葉でした。
その一言は、何度も何度も、私を支えてくれました。
父はもう、この世にはいません。
けれど、その声だけは、私の中にずっと残っています。
私の中で、何度でも立ち上がる記憶として──
確かに、生きています。
映画館には──行けるかしら。
スケジュールアプリを開きながら、そんなことを考えます。
もし映画館で観たら、エンドロールが流れる頃には、
私はきっと、嗚咽して泣いてしまうかもしれません。
周りに迷惑をかけてしまいそうで、ちょっとこわい。
花子の一句
記憶とは
よみがえるたび
強くなる
💬鬼滅の刃、新作映画が始まるこのタイミングで、改めて感じた「記憶の力」。
あなたにとっての“心に残る場面”や、“支えになった言葉”はありますか?
よかったら、コメントであなたの想いも聞かせてください。
(ひとことでも嬉しいです♪)
📚現場の声を文化に変える──KIBISHIIマガジン編集室より
そよかぜ3丁目教室・花子
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