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【彼との日々】#16:信頼する先輩への「はじめての報告」と、一瞬で通り過ぎた彼の名前。

彼が会社を退職する前、同じチームで大変お世話になっていたN子先輩。
仕事ができるのはもちろん、人としても本当に素敵で、私も心から尊敬している大好きな先輩の一人です。

ある日の仕事終わり、そのN子先輩と二人でご飯を食べに行くことになりました。

お店は、N子先輩のリクエストで会社近くにある行きつけの韓国料理屋さん。
熱々のサムギョプサルやチゲを囲みながら、まずは自然と仕事の話へ。
今後の私のキャリアのことなど、親身になって色々と相談に乗ってもらいました。
「もっと自分の将来について、ちゃんと解像度を上げて考えなきゃな」と、先輩の言葉の一つひとつに背筋が伸びるような、有意義な時間を過ごしていました。

ひと通り仕事の話が落ち着いた頃、マッコリを片手にN子先輩がニヤリと笑いました。

「で、最近のプライベートはどーなの?」

N子先輩とは、これまでもよく恋愛話をオープンにしていました。
当時は先輩も私も独身で、「お互い早く素敵な彼が見つからないかねー」なんて言い合っていた仲。

実はこの時、すでに私は彼とお付き合いを始めていたのですが、社内の誰にもそのことは伝えられていませんでした。

「彼のこと、伝えるべきかな……」

一瞬迷いがよぎりましたが、大好きなN子先輩にはやっぱりきちんと伝えておきたいという気持ちがありました。それに、事前に彼にも「今度N子先輩とご飯に行くんだ」と話した際、彼自身も「N子先輩にはぜひ知っておいてほしいな」と言ってくれていたのです。

よし、と少し緊張しながら、私は「実は、彼氏ができたんです」と切り出しました。

興奮する先輩と、さらりと通り過ぎていく本命

私の報告に、N子先輩は目を丸くして身を乗り出しました。
「えっ、本当に!?おめでとう!……え、もしかしてうちの部の人?」

「元、うちの部の人です」

私がそう答えた瞬間、N子先輩のテンションは最高潮に。
「そうなの!?誰だろう、じゃあ最近うちの部を去っていった人をおさらいしてみよう!!」と、まるでクイズ大会のようなお祭り騒ぎが始まりました(笑)。

「Aちゃんでしょ、Mさんもいたね……え、まさかS太!?」 (ちなみにS太さんは、N子先輩の同期で思いっきり既婚者です。笑)

興奮のあまり、最初から全力で的外れな回答を連発してくるN子先輩が可愛すぎて、私は笑いをこらえるのに必死でした。

でも、本当に面白かったのはここからだったんです。

「えーーー、あと誰いたっけ? だって、その前にいなくなったのはHくんしかいないから、その前の時期だと……」

……お気づきでしょうか。 今、さらっと名前が出て一瞬で消えていった「Hくん」こそが、私の彼なんです。

あまりにも「絶対にあり得ない」と思っていたのか、N子先輩の中で彼はハナから候補にも入っていなかったよう。
びっくりするくらい見事なスピードで彼の名前をスルーして、さらに過去に退職や異動をした人たちの記憶を遡り始めてしまいました。

このままだと一生辿り着かない(笑)と思い、私が「あ、N子さん、もう通り過ぎました」とストップをかけました。

すると、さすがにピンと来たのか、N子先輩の動きがピタッと止まりました。
「え……ええっ!? うちの子!?!? そうなの!? うちの子なの!?」

彼は同じチームの可愛い後輩だったため、N子先輩はいつも彼のことを「うちの子」と呼んで可愛がってくれていたのです。

開いた口が塞がらない驚きと、一番欲しかった言葉

「本当にHくんです」と証拠に二人で撮った写真を見せると、先輩はしばらく開いた口が塞がらない様子で固まっていました。

そこから、付き合うことになった経緯や今の様子を色々とお話ししました。N子先輩は終始「まさかこの二人が……!」と頭の整理が追いつかないほど驚いていましたが、ひと通り話し終えると、ふっと優しい表情になってこう言ってくれたんです。

「でも、好きなんでしょ? 誰かをそこまで大切に思えるって、すごく大事なことだよね。私、全力で応援する!」

そのまっすぐな言葉が、心にじわーっと染み渡って、本当に、本当に嬉しかったのを覚えています。

周りに彼との関係をひけらかしたいとか、そういう気持ちは全くありませんでした。でも、社内恋愛ということもあったし、年下だったし、どこかこれまでは「隠れて付き合っている」という後ろめたさのようなものが、ほんの少しだけ心の中にあったのかもしれません。

だからこそ、一番信頼しているN子先輩にちゃんとお伝えできたこと。
そして何より、私たちの関係を「すごく大事なこと」と温かく肯定してもらえたことが、たまらなく嬉しかったのです。

お腹も心もいっぱいに満たされた、あの夜の帰り道。
夜風に吹かれながら、これからも彼との関係を、そして自分のキャリアを、一歩ずつ大切に育んでいこうと静かに心に誓ったのでした。

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