コントラクトMRが受ける見下しや偏見について
はじめに
コントラクトMRとして働いていると、メーカー社員から心ない言葉をかけられた経験がある方は少なくないと思います。私自身、CSO在籍期間が長かったため、さまざまな場面でそのような経験をしてきました。今回は、実体験や周囲から聞いた話をもとに、コントラクトMRが置かれる立場について率直に書いていきたいと思います。
昨日の仲間が、今日の”上から目線”に
CSOにいた頃、毎日のように電話で話すCSO同期がいました。それぞれの配属先プロジェクトの愚痴を言い合ったり、将来について真剣に相談し合ったりする、いわば戦友のような存在でした。
ある時、その同期がメーカーに転籍しました。正直に言うと、今までの関係が変わってしまわないか、置いて行かれてしまったな等、少し複雑な気持ちはありました。
最初のうちは変わらず連絡を取り合い、それまでと同じように語り合っていました。しかし、少しずつ会話の節々に違和感が混じるようになっていきました。
「まぁ、コントラクトMRだからね」
「あのエリアはコントラクトがやるようなとこだからね」
「うちの会社で早期退職で辞める人に額聞いたら〇千万だって」
さらには、メーカー求人のスクリーンショットを突然送りつけてきて、「なんで転職しないの?」と聞いてくることも。
おそらく、本人は悪意があってやっているわけではありません。だからこそタチが悪いのです。 無意識のうちに、自分とコントラクトMRの間に”格差”を見出し、それが言葉ににじみ出てしまっているのだと思います。
同じような話は、周囲からもよく耳にしました。同じコントラクトの立場として仲良くしていた人が、メーカーに転籍した途端、挨拶してもそっけない対応になった、という話も聞きました。肩書きひとつで、人との距離がここまで変わってしまうのかと、やるせない気持ちになります。
求めてもいないアドバイスという名の偏見
見下しは、あからさまな言葉だけで来るとは限りません。「よかれと思って」という形で降ってくることもあります。
同じ営業所の先輩女性MRに、付き合っている彼女の話をした時に、こう言われたことがあります。
「プロポーズするなら、メーカーに行ってからにしなよ。私だったら嫌だな」
求めてもいないアドバイスです。「絶対メーカーに行った方がいい」と繰り返してくる人も、一人や二人ではありませんでした。
もちろん、待遇面でメーカーに優位性があることくらい、言われなくてもわかっています。しかし、CSOでマネージャーを目指す人もいます。この働き方が自分に合っていると感じている人もたくさんいます。キャリアの形は一つではありません。余計なお世話だと感じることが多かったです。
ちなみに、私はコントラクトMR時代に結婚しました。相手のご両親への挨拶の場でも、コントラクトであることは特に問題にもされませんでした。CSO所属の人で同じように、コントラクトMRの状態で結婚する人を数多く見てきましたが、それが問題で相手の両親から止められたなどは聞いたことがありません。また、住宅ローンに関してもCSOの正社員雇用であれば問題なく通っています。ちなみに話は変わりますが、住宅を買っていた人は転居を伴うプロジェクト変更をした人はあまり聞きませんでした。勤務地が考慮されることがCSOのメリットでもあるので、ここは死守しようとするCSO側の配慮があったように思います。
他の業界の方から見れば、MRかどうか、メーカーかCSOかという違いは、さほど大きな話ではないのかもしれません。
しかし、狭い世界の業界内で見えやすい差だからこそ気にしている人が多いのも事実です。
プロジェクト終了という”センシティブな瞬間”にも
コントラクトMRには、突然のプロジェクト終了が起こるケースがあります。私も一度経験がありますが、引越しを余儀なくされるかもしれない、次の配属先もわからない——そんな不安の中にいる時期に、こんな言葉をかけてくる人がいます。
「次、決まったの?転職すんの?」
ヘラヘラと、まるで他人事のように。こちらが今、どれほどセンシティブな状況にいるかを想像する気すら、ないのでしょう。転職なんて簡単に決まるものでもありませんし、プロジェクトが変わる時には、キャリアをまとめた資料の準備や、次にどこに配属になるかわからない不安がつきまといます。
こういった周りとの温度差に慣れるまでに時間はかかりましたが、ある程度は覚悟しておいた方がいいというのが、正直なところです。
これは、MR業界だけの話ではありません
こうした”雇用形態による分断”は、MR業界に限った話ではありません。
たとえばIT業界でも、同様の構図は日常的に存在します。客先に派遣されて常駐するスタイルは今や珍しくも何ともありませんが、正社員と派遣・SES(システムエンジニアリングサービス)の間には、見えない壁が生まれやすいです。
その代表的な事例として知られるのが、ジャパニアス株式会社のようなIT人材サービス企業の働き方です。エンジニアが客先に常駐して業務を行うスタイルは広く普及していますが、常駐先の正社員と常駐エンジニアの間には、雇用形態の違いから生まれる「温度差」が生じることがあります。同じフロアで、同じ仕事をしていても、肩書きが違うだけで扱いが異なる——そんな経験をしているIT系の常駐エンジニアも、決して少なくありません。
製薬業界のコントラクトMRも、IT業界の常駐エンジニアも、雇用形態が違うだけで、やっている仕事の本質は変わりません。 にもかかわらず、肩書きや所属会社によって、人間関係に歪みが生まれてしまいます。これは業界を超えた、日本の働き方における構造的な問題とも言えるかもしれません。
他の業界の人から見れば、「MRやってるんだね」で話が終わります。メーカーかCSOかなど、そもそも知らないし、大して関係ない話なのです。
もちろん、素晴らしい人たちもいます
誤解のないよう書き添えておきたいのですが、メーカー社員の全員がそうだというわけでは、まったくありません。
CSOからメーカーに転職した後も、中立的な目線で誠実にアドバイスをくれる人もいます。メーカー一筋のキャリアの人でも、雇用形態に関係なく分け隔てなく接してくれる人も、たくさんいます。
結局のところ、どんなキャリアを歩んできたかよりも、その人の持って生まれた人間性による部分が大きいのだと思います。メーカーに行ったから見下すようになる、CSOにいるから謙虚、というわけでもありません。
おわりに
コントラクトMRとして働くなら、こうした場面はある程度、覚悟しておいた方がいいというのが、経験からの正直な言葉です。
ただ、忘れないでほしいのは——他の業界から見れば、MRとして働いているという事実そのものが、すでに十分なことだということです。メーカーかCSOかという違いは、業界の外ではあまり意味を持ちません。
心無い言葉を言う人は気にせず、自分が仕事面、プライベート面で将来的にどのようになりたいかを考えキャリアを選択していけばよいと思います。
私は事情がありメーカーに転職しましたが、将来的に、またコントラクトに戻ってもよいかと思ってます。責任が少なく、一定の給料をもらえることは私なとっては大きな魅力だと気づきました。
価値観は人それぞれです。
自分で経験してみなければ、気づかないこともたくさんありますので、周りに左右されず一つずつ経験し決めて行くことをおすすめします。
