ヒオカ『ゆるふわ天上人と地底人』感想
ヒオカ 著『ゆるふわ天上人と地底人 住む世界が違うのに出会ってしまったあの子と私』を読みました。
様々な格差について、著者の視点や体験をもとに書かれた本です。
格差というと、「金持ちか貧乏か」という経済格差が思い浮かびますが、他にも出自格差、教育格差、体験格差、体力格差、情報格差など色々なものが挙げられます。
著者が挙げなかった格差のうち、私が最近強く感じるのはAI格差です。
AIを利用して仕事に活かす人
AIをGoogle検索の代わりに使ったり、雑談相手としてのみ使う人
AIを使わない人
では大きな差が生まれつつあります。
話を本書に戻すと、ヒオカさんは大変な貧困家庭出身で、世帯年収は100万以下だったそうです。
幼少期から様々なことを諦めなければならず、特につらかったのは習いごとをさせてもらえなかったことだと言います。
格差というのは、他の格差も連鎖して発生するところがあります。
経済格差があることで習いごとができなかったり、塾に行かせてもらえないなどの体験格差や教育格差が生まれます。
さらに、食生活や住環境、DVなどの劣悪な家庭環境が重なれば、健康格差だけでなく、トラウマからくる心理的・内面的格差も無視できなくなります。
もちろん、何でもかんでも格差のせいにすればいいというわけではありません。
あまり度が過ぎると、巷に溢れる「○○ハラスメント」みたいになってしまいます。
そもそも著者は「格差を完全になくそう」と言っているわけではありません。
残念ながら、現状は努力した人や能力ある人、ニーズの大きい仕事を担っている人がそれに見合った正当な対価を受け取れる公正な世の中ではない。
中抜きされ、搾取されている人たちがいる。
そういう、公正でないがゆえに生まれる格差を、「格差は防ぎようがないから放置してよい」とはならないだろう。
人は格差を作る生き物だけど、格差自体をなくそうとするのと、その枠組みの中で起きる不平等をなくそうとするのは全く違う話だと思う。
私が思うのは、完全に格差をなくすのではなく、不当な不平等は改善するべき、ということだ。
「非常に大きな格差を是正していくことは、弱者のためというだけではなく、社会全体のためになる」と著者は言います。
確かに今のまま格差が広がり続ければ、「無敵の人」が増えるのは明らかですからね。
本書では、情報格差についても言及されています。
「無知は損する」「情弱はカモられる」という事実は、あたかもそれが常識であるかのような顔をしていますが、本当にそれでいいのでしょうか?
日本には様々な制度が存在するものの、申請しなければ受け取ることができません。
当然、制度の存在を知らなければ、自分が損をしているということに気づくことすらできません。
知識がない人、情報を掴む余力やリテラシーがない人など、立場の弱い人が不利益を被る構造になってしまっています。
本書では問題提起はしつつも、じゃあどうすれば「本当に必要としている人たちに情報が届くか」ということまでは触れていませんでした。
少し調べてみたところ、北欧では児童手当、給付金、医療費軽減、税控除、就学支援などが「申請できる人だけ受け取る」ではなく、「条件を満たしたら自動通知・自動給付」という方向に進んでいるそうです。
日本の制度には、困っているなら、自分で調べ、自分で申請し、自分で証明するべきという思想がかなり強く残っています。
しかし実際には、本当に困っている人ほど、その能力や余力がありません。
技術的には、マイナンバーやデジタル化によって昔より実現しやすくなっているはずです。
「申請しないともらえない」を減らし、「自動適用」に切り替えていくことが求められます。
