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イエリ流学問のすゝめ|英語力を伸ばすために、まず伸ばすべきもの

「英語は、早く始めたほうがいいのでしょうか。」

保護者の方から、よくいただく質問です。将来、英語が話せるようになってほしい。世界を広げてほしい。そう願う気持ちは、とても自然なものだと思います。

けれども、私はこの問いに、単純に「はい」とは答えません。なぜなら、英語教育を考える前に、もっと大切にしなければならないことがあるからです。

それは、人はどのようにして言葉を身に付けるのかという、言語教育の原点です。

私は、0歳から9歳ごろまでを、言語発達においてとりわけ重要な時期だと考えています。この時期の子どもは、言葉を知識として覚えるのではなく、生活の中で、人との関わりの中で、身体全体を使って獲得していきます。

だからこそ、英語教育もまた、「何歳から始めるか」だけで考えるべきではありません。本当に大切なのは、母国語という土台の上に、第二言語をいつ、どのように育てていくかなのです。

今回は、イエリメソッドの考え方をもとに、なぜ英語は母国語という土台の上に育つのか、そして、第二言語をどのように取り入れていくべきかについて、まとめてお伝えします。



(1)ことばは、「聴く」ことから育ち始める

子どもが言葉を身に付けていく過程には、自然な流れがあります。

聴く→復唱する→見る→読む(音読)→黙音読→黙読

子どもは、この流れの中で、インプットとアウトプットを繰り返しながら、少しずつ言葉を自分のものにしていきます。

はじめにあるのは、いつも「聴くこと」です。十分に聴いた言葉だからこそ、安心して声に出すことができます。声に出してみた言葉だからこそ、見たときに意味のあるものとして受け取れるようになります。そして、見慣れた言葉は、やがて読めるようになり、書けるようになっていきます。

つまり、言葉の学びは、最初から「読む」「書く」で始まるのではありません。まず耳から入り、口を通り、目へとつながっていくのです。

この流れは、母国語だけのものではありません。第二言語もまた、本来はこの自然な道筋に沿って育てていくべきものだと、私は考えています。


(2)母国語は、ことばの「本流」である

私は、母国語を一本の大きな川、つまりことばの本流だと考えています。

子どもは、生まれてからまわりの言葉を聴き、まねをし、話し、見て、読み、書くという経験を重ねながら、この川を少しずつ豊かにしていきます。この母国語の流れが安定してきたとき、はじめて新しい言葉を受け入れる器が育ち始めます。

第二言語は、この母国語という土台の上に築かれるものです。

本流が豊かであれば、新しい流れも無理なく合流できます。けれども、本流が細く不安定なままであれば、第二言語を受け止めることは簡単ではありません。

だから、英語教育で本当に問うべきことは、「何歳から始めるか」ではありません。母国語という土台の上に、第二言語をいつ、どのように自然に流れ込ませるかなのです。

母国語は、思考するための言葉です。感情を表現するための言葉です。人との関係を築くための言葉でもあります。

この土台が豊かになるほど、第二言語もまた、豊かに育っていきます。


(3)第二言語は、「勉強」として教え込まなくていい

では、第二言語はどのように取り入れていけばよいのでしょうか。

私は、英語を最初から「勉強」として教える必要はないと考えています。大切なのは、母国語を身に付けたときと同じように、英語にも自然に触れる環境をつくることです。

たとえば、
・英語の歌を聴く
・英語の絵本を楽しむ
・簡単な言葉を復唱する
・遊びやゲームの中で英語に触れる

こうした活動は、「英語を学ぶ」という意識よりも、「英語に親しむ」という感覚を育てます。

第二言語も、基本は母国語と同じです。まずは十分に聴くこと。次に、安心して声に出すこと。そして、見て、読んで、必要な時期に書くことへ進んでいくこと。

この順序を急がないことが、とても大切です。

英語教育で最も避けたいのは、母国語の発達よりも第二言語を優先してしまうことです。母国語がしっかり育つことで、第二言語もまた大きく伸びていきます。

母国語と第二言語は、競い合うものではありません。母国語が育つことは、第二言語の可能性を広げることでもあるのです。


(4)「書く」は最後でいい。むしろ、急がないほうがいい

言語教育というと、つい「文字を書くこと」を早く始めたくなるかもしれません。けれども、私は「書くこと」は最後に位置付けるべきだと考えています。

書くためには、いくつもの力が必要です。
・形を正しく見る力
・線を意識して見る力
・手を思いどおりに動かす力
・音と文字を結び付ける力

最初の一歩は、文字を書くことではありません。まずは正しい鉛筆の持ち方を身に付け、点描から始め、レ点、直線、斜線、曲線、複合線へと、運筆の基礎を丁寧に積み上げていきます。

この過程で子どもは、「見る力」と「手を動かす力」を育てていきます。「書く」とは単に文字を覚えることではなく、目と手を協応させる学習運動でもあるのです。

英語でも同じです。いきなりアルファベットを書くことから始めるのではなく、まずは十分に聴き、十分に話し、十分に見て、十分に読んだ先に書く。この順序を大切にすることで、書字は無理なく自然に育っていきます。


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