創戯旅団 生存の記録-SM奇譚 第18夜-戯れの骨を組む夜
店というものは、壁と看板でできているのではない。そこに出入りした人間の息づかいと、帰り際に残していった微かな体温、それから、まだ形にもならぬ思いつきが、夜ごと薄暗い天井へ立ちのぼって、ようやくひとつの店になる。私は長いこと、そういうものを見てきた。商売は帳簿の上に成り立つ、と人は言う。たしかにそうだろう。だが、帳簿だけで生き延びた店など、私は知らない。店をぎりぎりのところで浮かせているのは、むしろ数字になりきらないものの方だ。言葉の癖、客の目つき、こちらの思惑、他人の真似、無謀な賭け、悪ふざけすれすれの工夫、そういう不純物のようなものが、沈みかける舟の底板になっている。世の多くの店には、完成された型がある。誰が見てもわかる定番のコース、説明しなくても通じる時間の配分、過不足なく磨かれた名称。ひとつの秩序だ。客にとっても店にとっても、それは親切で、健全で、そしておそらく正しい。大きく当てることはなくとも、大きく外しもしない。その代わり、昨日と今日の境目は曖昧になり、働く者も遊ぶ者も、同じ手触りの夜を何度でもなぞることになる。安定とは、よく躾けられた反復の別名だ。たいていの場所では、それで十分なのだろう。けれど、私のいた場所は、どうもそうではなかった。最初から完成していたのではなく、いつもどこか未完成で、しかもその未完成さを埋めるために、新しい言葉や企画を次々と継ぎ足していくような店だった。出来上がっているのではなく、出来上がり続けている。店の輪郭が固定されず、夜ごと少しずつ表情を変える。そういう場で働いていると、企画というものは単なる販促ではなく、もっと生理に近いものになっていく。呼吸に近い、と言ってもいい。苦しいから吸う。生き延びたいから形を変える。ただそれだけのことなのに、傍から見れば妙に独創的に見えることがある。
私は、企画を考える時間が好きだった。好きだった、というより、あれがなければ息苦しかったのだと思う。店の明かりが落ちきらないうちから、頭のどこかでは次の言葉を探していた。次は何が客の耳に引っかかるのか。どんな名前なら、まだ見たことのない扉が、相手の内側でひとりでに開くのか。
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📖 有料突入 INFO
ここから先では、私が実際に店舗運営で使用してきた
「企画設計」「ネーミング戦略」「イベント構築」
について、成功例だけではなく、
・電話が鳴り止まなかった企画
・全国から挑戦者が集まったイベント
・逆に完全に失敗した企画
・コロナ禍で生き残るための発想
・企画が"文学"へ変わっていった理由
まで、現場で体験した実例を交えながら詳しく綴っています。
単なる販促論ではありません。
「なぜ人は動くのか」
という、人間心理そのものを掘り下げた一篇です。
企画職、経営者、クリエイター、マーケター。
そして、
「言葉で世界を少しだけ動かしたい人」
に読んでいただきたい内容になっています。
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